企業の商標管理について
時間: 2024-12-19 呉瓊Gloria Wu アクセス数:

商標は企業の重要な無形資産であり、企業の事業発展によって蓄積された貴重な信用を体現し、伝えている。企業の商標の価値は、商業的要因(製品/サービスの品質、広告、市場シェア、知名度、影響力など)、法的要因(有効性、安定性、保護範囲、侵害リスクなど)、文化的および宗教的要因(商標内の単語または図表が特定の国の文化および宗教的背景の中で持つ意味、比喩、または連想など)を含む多くの要因の影響を受けている。企業は、商標管理において上記の関連要因を総合的に考慮し、企業の事業発展計画と組み合わせ、緩やかで孤立した受動的な個別対応ではなく、対象市場が所在する国/地域の商標法制度に従って、体系的、制度的、積極的、科学的な管理を行う必要がある。


一、企業商標管理システム

企業の商標管理に関わる各種事務は、些細で複雑であり、長期的かつ広範囲にわたる。また、異なる部門(法務部門、マーケティング部門、製品/包装部門など)の協力が必要であり、企業内の人材、財務、事務など様々の管理に関わってる。そのため、「商標管理システム」を策定し、関連する分担、承認プロセス、責任と権限、評価と賞罰の仕組み、コスト予算、リスク対応策などを明確にする必要がある。企業の「商標管理システム」には、通常、以下の内容を含める必要がある。

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二、商標管理チーム

企業は、組織構造の中に商標管理チームまたは商標管理担当者のポジションを明確に確立する必要がある。このチームまたは担当者は通常、企業法務部門または知的財産部門に従属し、法務ディレクターまたは知的財産ディレクターに報告し、会社の「商標管理システム」に従って職務を遂行する。


1、職務内容:企業の商標関連業務は、通常、社内の商標管理チーム/担当者と外部の知的財産代理/法律事務所によって行われる。それぞれの業務の割合は、人員配置に基づいて決定する。特定業務の外注は多かれ少なかれメリットとデメリットがあるため、業務の性質、人員の実務経験、コミュニケーション効率、コスト、リスクなどの要素を総合的に考慮する必要がある。詳細について、次のリストに示されている。

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1、評価指標:企業の商標管理業務の目標は、企業のビジネス戦略と一致し、各発展段階のリズムや市場における競争のニーズに合致する必要がある。したがって、単に商標件数を定量的な指標として使用するべきではない。次に評価指標の例を挙げる。


1) 企業のコアブランドがターゲット業務分野(商品・役務区分)とターゲット地域範囲(出願国・地域)において有効に登録商標をカバーしていること。「ターゲット業務分野」には、企業が実際に生産している製品や提供しているサービスの分野だけでなく、周辺関連分野の防衛や今後3~5年の拡大分野も含まれる必要がある。「ターゲット地理的範囲」には、生産加工地、販売市場所在地、輸送中継地を含める必要がある。企業が現段階のターゲット地域だけでなく、将来3~5年に進出しようとする国や地域も積極的に考慮する必要がある。3~5年を期間とする理由は、ほとんどの国や地域で商標出願の審査機関が3~18か月であり、商標の使用が登録後3年または5年以内に行う必要があるからである。


2)商標確認または権利侵害紛争事件の勝訴率と和解率。これは、事件が積極的に提起されるか、受動的に対応されるかに関係なく、そのような紛争事件の3つの結果(勝訴、和解、敗訴)のうち、最初の2つ(勝訴または和解)が企業に有利であり、勝訴には企業に部分的勝訴も含まれる(例えば、商標異議申立事件において、相手方の異議商標は企業が懸念する抵触商品については拒絶されるが、その他の重要でない非抵触商品については登録が承認される)。


3) ある事件で、企業の商標が商標局や裁判所から馳名商標(well-known trademark)または知名度のある商標(trademark with reputation)として認定された場合、企業にとって間違いなく非常に意義のある勝利である。これは個別事件での勝利であるだけでなく、さらに重要なのは、将来の商標権紛争に積極的な影響を与え、立証責任を軽減し、商標保護を強化することもできる。一部の国では、外国の馳名商標も認めるので、この認定結果を引用することができる。したがって、この作業を商標管理評価における大きなプラスポイントとすることを推奨する。


4) 市場における模倣品や侵害者の減少は、成果志向の指標である。企業の商標管理チーム/担当者がさまざまな側面(商標出願戦略の強化、全面的かつ積極的な監視、商標侵害および不正競争の撲滅、典型事例設定、侵害者に対する高額賠償金の獲得または刑事拘留による他の侵害者または潜在的侵害者の抑止など)で努力することにより、市場に流通する模倣品及び模倣品製造者/販売者が減少し、企業の正規販売とブランド評判にプラスの影響を与える。


2、協力関係: 企業の商標管理チーム/担当者は、業務において、企業内の他の部門や支社、外部のデザイン会社、知的財産代理店、法律事務所などと協力する必要がある。たとえば、次のようなシナリオが考えられる。


1) 商標設計の段階で、デザイナーは複数の設計案を作成し、製品部門またはマーケティング部門はそのうちの 1 つを選択した。しかし、商標管理の担当者は、いくつかのデザインに同一/類似の先行商標があり、登録成功率が低いことを発見した。数回の設計修正を経ても、類似の先行商標はまだありたが、製品の発売時期が迫っていた。このとき、デザイナーに新しい案を再設計するよう依頼するべきでしょうか、それとも既存のデザインから 1 つを選択して最初に登録申請し、後で拒否された場合に問題を解決する方法を見つけるべきでしょうか。このジレンマは誰が決定するのでしょうか。このジレンマは企業において一般的になっている。「商標管理システム」で承認プロセスと意思決定権を明確にし、実際のプロセスで効率的にコミュニケーションを取り、登録リスクを十分に評価し、最終決定に貴重な参考資料を提供する必要がある。


2)グループ企業では、グループ本社の商標管理チーム/担当者は、本社の各機能部門と連携する必要があるだけでなく、グループ傘下の子会社の法務、マーケティング、営業部門とも連携する必要があるが、各子会社の組織構造や管理ルールは統一されず、本社と子会社は同じ問題に対して異なる優先順位を持っている可能性がある。これにより、商標管理もある程度複雑になるため、システムで分業とルールを明確化し、実際の慣らし運転中にプロセスを継続的に最適化し、効率を向上させる必要がある。


3)企業が海外で商標紛争に遭遇した場合、協力可能な関係者には、企業国内本部の商標管理チーム、法務チーム、マーケティング部門、海外支社の責任者、国内知的財産代理・法律事務所、海外知的財産代理・法律事務所、第三者プラットフォーム(越境電子商取引、ソーシャルメディアなど)が含まれる。プロジェクトベースの管理を通じて、臨時チームを編成し、スケジュールと担当内容を決定し、リスクポイントを特定し、プロジェクトリソースを割り当て、コミュニケーション効率を向上させる必要がある。

 

三、商標資産管理

企業資産管理の観点から見ると、商標業務の目的は商標資産の価値を維持し、高めることである。発展の過程で、企業は毎年いくつかの新しい商標を出願し、蓄積された商標資産は益々多くなるため、それらをうまく管理するには、商標資産を分類し、ランク付け基準を決定し、対応する予算リソースを割り当て、ランクに応じて承認プロセスを設定すること勧める。次に、具体的なランク別管理の例を挙げる。 

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各企業の属する業界、ブランド発展段階、及び社内組織構造が異なるため、商標の分類基準や承認プロセスも異なる。上記の例は参考のみとして挙げた。

企業の商標管理チーム/担当者は、商標資産を定期的に点検して更新する必要がある。現在、商標出願プロセス、法的ステータス、承認された商品/サービス、有効期限などの情報を含む商標データを自動的に更新できる管理ソフトウェアがいくつかある。これにより、手動更新に必要な時間と人手を大幅に節約でき、いつでも各ランクの商標資産の最新状況を簡単に確認できるほか、管理作業の意思決定の参考として視覚的なチャートを自動的に生成することもできる。


四、商標案件管理

企業の商標案件(権利確認申請案件、権利確認紛争案件、権利保護案件など)の一部は、企業自身の商標管理チームが直接取り扱う一方、外部の知的財産代理事務所や法律事務所に委任する場合もある。誰が案件を処理するかにかかわらず、基本的な案件情報、プロセス、期限、複数案件の間の関係など、すべての案件の統括について、企業の商標管理チーム/担当者より担当する必要がある。どうせ代理事務所/法律事務所が記録・更新しているから、企業が自ら管理する必要があるのかと考える人もいるかもしれないが、実際には、非常に必要であると思われる。その理由は、次の通りである。


1) 異なる事務所の内部管理レベルには大きな差がある。企業が完全に外部管理に依存すると、事務所のプロセス担当者がミスを犯し、正式な期限に間に合わなかった場合、企業は商標権を失い、取り返しのつかない損失を受ける可能性もある。


2) 企業は、異なる時期に異なる外部事務所に委託したり、複数の代理事務所にそれぞれ異なる案件の処理を同時に委託したりすることがある。そのため、案件情報は分散している。企業が一元管理していない場合、古い案件の履歴プロセスを確認することは困難であり、当時の担当代理人に連絡を取られなくなる恐れがある。


3) 商標案件管理は、企業の商標管理におけるすべての業務の基礎である。単なる受動的な記録ではなく、商標案件に対する包括的、詳細かつ正確な動態的理解に基づいて、企業の現在の商標配置、侵害リスクなどの問題についてより正確な判断を下し、企業のビジネスニーズを満たす商標アクション戦略を策定し、さらにさまざまな統計、分析、評価、リスクの特定、問題の発見、解決策の発見を行いる。


近年の知的財産ソフトウェア技術の発展に伴い、プロセスの自動化やデータの自動更新などの機能がるる成熟してきた。企業はこのようなソフトウェアツールを使用して、従来の Excel テーブルを置き換え、API データ インターフェイスを通じてより効率的かつインテリジェントにケース管理を実現することができる。

 

五、商標使用管理

企業は事業活動において、屋外の看板から名刺のロゴまで、さまざまな場面で商標を使用している。商標は、有名人をイメージキャラクターとする衣服やオンライン ゲームの起動画面に表示されるものもある。商標の使用は、企業に富と名声をもたらすものもあり、税関に商品を押収されたり、多額の賠償金を請求されたりするものもある。


企業が商標を使用する際に注意する必要がある主な問題は次のとおりである。

1)登録商標の使用。市場競争で優位に立ち、新製品や新ブランドを迅速に発売するために、企業は登録される前に商標の使用を開始した場合がある。これにはいくつかのリスクがある。第一に、商標は出願審査で拒絶される可能性があり、公告期間中に他の人が異議を唱え、最終的に商標の登録が承認されず、企業がブランドを変更せざるを得なくなる可能性がある。第二に、以前の同一または類似の商標の所有者が企業の行為が商標権侵害であると主張し、企業に対して行政、民事、さらには刑事措置をとる可能性がある。したがって、企業は前向きに商標出願戦略を実行し、予め商標登録を完了し、登録済みの有効な商標を可能な限り使用する必要がある。


2) 商標パターンの標準化された使用。企業ブランドは発展とともに継続的に更新され、デザインスタイル、フォント、色などが変更される可能性がある。その場合、更新されたブランドに対して速やかに商標を登録する必要がある。登録商標が標準的な印刷フォントと白黒であれば、適用の柔軟性が比較的高くなる。企業は全社員に商標の標準化された使用を教育し、商標を使用する際にいかなる部門または外部協力組織が恣意的に変更することを厳しく制限する必要がある。商標の使用が標準化されていない場合、商標使用資料は有効な証拠として使用できない可能性があり、他人の先行商標権を侵害することになる可能性もある。


3)使用前に商標調査を行う。登録商標を使用する予定であっても、使用前に再度調査を行い、侵害リスクを判断する必要がある。例えば、他人の馳名商標の区分を越えた保護、併存する先行類似商標は、実際には自社の商標登録出願を妨げないが、使用し始めたときに相手に侵害を主張される可能性がある。そのため、調査中にこのような潜在的な障害が見つかった場合は、登録後長期間使用されていない他人の先行類似商標の取消を申請したり、先行権利者と併存協定について協議したり、両当事者が各商標の使用形式と範囲について合意したりするなど、使用リスクを軽減するための措置を適時に講じたほうが良い。これにより、混乱を避けることができる。


4)商標使用の対象商品/サービスが保護範囲を超えないよう注意する。企業は事業展開の過程で事業分野を拡大し続ける可能性があり、それに応じて商標の使用範囲も拡大する。たとえば、ビールからノンアルコール飲料へ、衣類からアクセサリー/サングラスへ、紙の出版物から電子出版物へ、ホテルから美容、フィットネス、エンターテイメントへ。これらの一見非常に自然で合理的な事業拡張は、商標の使用が元の登録保護範囲を超えており、適時に登録を補充する必要があることを意味している可能性がある。会社名のロゴをメイン商標として使用し、さまざまなシーンで使用してロゴ商標の登録範囲を超えている人もいるが、自分の会社の名前を使用しても問題ないと誤解している。しかし、実際には、会社名のロゴは会社名と同じではない。多くの場合、ロゴに含まれる文字は会社の略称であるが、その他、グラフィック部分も含まれる。したがって。未登録の商品・サービスの分野で使用する場合、グラフィックなしで会社のフルネームをフルに使用しない限り、侵害のリスクは依然として存在する。


5)商標の使用場所が地理的範囲を超えないよう注意する。企業は海外で国際展示会に参加する際には特に注意する必要がある。展示会の宣伝資料、製品、パッケージなどに使用する商標が展示会開催国/地域で出願済みかどうか、商標のステータスはどうなっているか、その他の潜在的な先行権利障害がないかどうかを事前に確認する必要がある。


6)使用後の証拠の保存。商標使用の証拠は、さまざまな商標確認および保護案件で重要な役割を果たす。一部は不使用取消を克服するために使用され、一部は会社の先行使用と知名度を証明するために使用され、一部は商標の識別性(使用を通じて獲得)を証明するために使用される。会社の商標管理チーム/担当者は、通常、商標使用の最初の現場にいなかったため、他のチーム(マーケティング部門、営業部門、海外支社、協力ディーラーなど)により、タイムリーに使用証拠を収集し、商標管理チーム/担当者に保存のために提供する必要がある。有効な証拠の基準と完全な証拠チェーンを形成するための要件を明確にするために、関係者に対して、教育する必要がある。


六、商標書類管理

企業内の商標書類は複雑かつ膨大であり、しかも増え続けている。書類の出所は多様で、書類を探して使用するシナリオも多様である。したがって、商標書類の管理では、以下の点に注意する必要がある。


1、商標書類の分類は明確かつ完全である。参考として、次の分類ディレクトリを挙げる。

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2、商標書類に検索可能なタグを追加する。多数の商標を持つ企業の場合、前述のフォルダ分類を使用しても、書類の数が多いため、特定の商標を特定の種類の製品に使用した販売手形など、必要な書類をすばやく探すのは、干し草の山から針を探すようなものである。そのため、書類に「商標」、「製品」、「年」などのタグを設定する必要があり、タグはクエリとフィルタリングをサポートする必要がある。


3、商標書類 + 商標事例 + 商標資産は関連付ける必要がある。商標業務をよりインテリジェントに管理するためには、商標書類 + 商標事例 + 商標資産間のクロス検索およびデータ浸透機能を確立し、いつでもそれらのいずれかを介して他の関連プロジェクトに簡単にリンクできるようにする必要がある。


七、商標リスク管理

企業が大きくなればなるほど、リスク管理が必要になる。商標にも多くのリスクが伴う。以下のリスクポイントのリストは、日常的な点検、トレーニング、改善に活用できる。

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八、商標管理ツール

科学技術の発展、IT自動化、ビッグデータ、人工知能などの急速な進歩に伴い、法律分野ではさまざまな機能を備えたソフトウェアツールが登場し、企業の法務担当者に利便性を提供し、効率と成果を向上させている。次のようなツールは、主に企業の商標管理に役立つ。


1、商標検索ソフトウェア:商標データベースに基づいて、文字/図形商標の類似検索、出願人検索、出願番号および/または他の条件の組み合わせ検索、商標公告監視、出願人監視を実現できる。


2、侵害監視ソフトウェア: 電子商取引プラットフォーム、ソーシャル メディア、ドメイン名の侵害監視およびオンライン摘発。


3、商標管理ソフトウェア: 商標資産管理、案件管理、期限管理、書類管理、統計分析などが含まれる。


企業の商標管理チーム/担当者は、これらのツールを積極的に利用して商標ビッグデータと人工知能技術を最大限に活用することにより、企業の商標管理の効率を高めることができる。さらに、先進的な企業の商標管理方法をソフトウェアシステムに統合し、ITツールを利用してシステムとプロセスを実施することで、商標業務のより体系的の管理、リスク制御、コスト削減、企業のブランド資産の科学的管理、及びブランド価値の維持・向上を実現することもできる。


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