製品特徴を表現する必要以上に他人の登録商標を使用することで商標侵害
時間: 2019-09-02

 ——SATA社 VS 浙江省奥利達社の商標侵害案件

 

 SATA社は110年以上の歴史を持つ塗装機器を製造するドイツ企業であり、その高品質の製品及びサービスが、世界範囲で好評されている。会社のメイン商標である「SATA」、「萨塔」をSATA社のスプレーガン製品に用いる際に、実際の使用及び宣伝のニーズに応じて、製品の特徴に基づき、略称、図形設計及び色彩の運用などにより、製品標識体系を創作した。これらの標識とメイン商標の使用は、製品包装及びパンフレットにおいて独特な製品視覚識別体系を形成した。SATA社は知的財産権を保護するために、一部の標識に対して商標登録出願を行い、商標保護体系を構築した。本文では、SATA社が自社商標権に基づき商標侵害者に対して権利行使を行った案件を紹介する。


 浙江省奥利達社(以下、奥利達社と称す)は、2016年に、2016年度の北京国際自動車保護展覧会に最新のスプレーガン製品を出展する予定がある旨の広告宣伝メールを配信し、この製品の外観、包装、機番、性能は、SATA社の製品とかなり類似している。詳しく調べた結果、奥利達社が展覧会にSATA社の類似製品を展示・販売するだけではなく、そのホームページ、タオバオワン、アリババにおいても上記類似製品を宣伝、販売している。SATA社は、2017年に、奥利達社の上記商標侵害行為に対してそれぞれ商標侵害訴訟、不正競争訴訟、特許侵害訴訟を提起した。


 奥利達社の製品包装には、SATA社のメイン商標「SATA」、「萨塔」が使われていないが、その包装の色、設計はSATA社製品を模倣し、SATA社製品と全く同一の標識「图片1.jpg」と「WSB」を使用したものである。SATA社は、「图片2.jpg」と「WSB」の商標権も有しているため、弊所に依頼して北京市東城区人民法院に商標侵害訴訟を提起した。

 

図1製品正面図対比

SATA社製品

奥利達社製品

图片3.jpg

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2:製品背面図対比

SATA社製品

奥利達社製品


图片5.jpg

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 被告奥利達社は、訴訟において、被疑侵害製品における標識がスプレーガン製品分野において固定の意味を有しており、商品の由来を区別する役割を果たしていないため、商標侵害にはならないと述べた。「图片7.jpg」と「图片8.jpg」は、それぞれ、木工用鉋盤及び歯車を示し、「木工」と「工業」を指しているので、スプレーガン製品の適用対象は、木工材料や工業分野であることを意味する。は、「图片9.jpg」英語の「color code system」の略称であり、スプレーガン製品の色彩を記述するようなものである。「WSB」は「water solvent based」の略称であり、当該スプレーガンが水溶性スプレーガンであることを指している。上記解釈について、被告は業界の規範規定などの関連証拠を提供していなかった。

 

 SATA社は、奥利達社の上記不侵害抗弁に対して、以下のように反論した。原告の登録商標は、具体的な意味を有していなく、当該商標自身(例えば、CCS、WSB及び図形商標)に基づいて、その意味、或いはスプレーガンとの関連性を推測できないものである。原告は、宣伝及び使用のニーズに応じ、製品の特性を結合して、その商標に特定の意味を与え、独特な設計及び色彩などにより形成された製品識別標識となっており、長期且つ大量に使用されたことにより、原告製品を識別するための包装の一部となり、製品の由来を認識する役割を果たした。上記標識は業内の通常標識でもなく、これらの標識を使用している第三者もいない。被告は、製品の特徴などを記述する必要性がない状況下で、原告商標と完全に同一の図形及びアルファベットの組合せを使用したため、商標侵害に該当する。

 

 一審法院は、審理を経て、以下のような判断を下した。被疑侵害の標識である「图片10.jpg」と「图片11.jpg」は、抽象的に設計された図形であり、直接且つ具体的にスプレーガンの用途及びその適用対象などの特徴を記述するものではない。「图片12.jpg」は図形とアルファベット「CCS」との組合せであり、標識全体が強い顕著性を有している。被告が提出した証拠により、「CCS」は「color code system」の略称であり、「WSB」は「water solvent based」の略称であることを証明できず、業内で通用の技術用語又は標識として関連公衆によく知られていることも証明できない。したがって、被告の不侵害抗弁意見は、根拠を欠いているため、それを認められない。被告の上記四つの標識は、原告の登録商標に比べ、図形の模様、設計、アルファベットの字形、読み方、全部同一であり、また、同様なスプレーガン製品に用いられたため、原告の登録商標専用権を侵害したものである。一審法院は、直ちに商標侵害行為を停止し、原告の経済損失50万元及び合理的な支出14万元を賠償する判決を下した。

 

 奥利達社は、上記判決に対して不服があり、上訴を提起した。本件は、今、二審手続中である。

 

 本件の一審判決から分かるように、企業は、メイン商標以外に、その他の標識を製品包装又は宣伝に用いることがあるので、メイン商標とそれらの標識は、製品全体の識別体系を形成した。このような標識は、メイン商標に比べ、顕著性が比較的に弱いであるが、法律により保護される可能性もある。但し、確実に自分の権利を保護するために、このような標識についても、積極的に商標登録出願を行うことは、他人の商標侵害行為を防止する重要な手段である。


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