最新判例:中国におけるOEM生産は商標権侵害となる
OEM生産とは、中国にある加工業者が海外の商標権者の委託を受け、その要求に従って製品を製造し、その提供する商標を付けして、加工した製品の全てを海外の委託者に交付し、海外にある委託者が中国企業に対して加工費を支払いし、生産した製品は中国国内で販売を行わない国際貿易の商行為である。
OEM生産は商標権侵害になるかならないかについては、統一した基準はないが、近年、OEM製品が全て外国に輸出され、中国国内市場に流通しないのであれば、中国での商標の使用に当たらず、他社の先行商標が存在しても商標権侵害にはならないという見解が、主流となっていた。特に2017年の最高人民法院の「東風」事件判決後、商標権侵害は成立しないとの実務が定着していた。
しかしながら、最新の「HONDAKIT」事件の判決((2019)最高法民再138号)において、最高人民法院は本事件のOEM生産は商標権侵害に該当するとの判決を下した。「HONDAKIT」事件において、最高人民法院は次の見解を示した。
1、商標の使用行為は一種の客観的行為であり、物理的貼付や市場流通など、数多くの段階を含む。生産製造または加工された商品に貼り付ける方法またはその他の方法で商標を使用した場合、商品の出所を識別する可能性を有してさえいれば、商標法上の「商標的使用」に該当すると認定すべきである。
2、本事件の関連公衆は、被訴侵害商品の消費者のほか、被訴侵害商品の営業販売と密接な関係者を有する経営者も含むべきである。例えば、被訴侵害商品の輸送などの段階の経営者が接触する可能性がある。
3、電子商取引及びインターネットの発展に伴い、被訴侵害商品が海外に輸出されたとしても、中国国内に逆輸入される可能性がある。また、中国経済の絶え間なく成長に伴って、海外旅行や買い物をする中国消費者も多くて、OEM商品に接触し混同する可能性もある。
4、商標権は地域性を有するものである。中国で登録をしていない商標は、外国で登録済みであっても中国においては登録商標専用権を有しない。従って、中国国内の民事主体が取得した「商標使用許諾」も中国の商標法で保護される商標の合法的権利に属しないため、商標権侵害でないとの抗弁理由とすることができない。
5、経済発展に伴い、渉外OEMから生じる商標権侵害問題の認識や紛争解決も絶えず変化し、深化している。司法を通じて紛争を解決する場合、法律適用において法律制度の同一性を保つ必要があり、ある特定の貿易方式を簡単に商標権侵害の除外状況として固定化することはできない。固定化すれば、商標法上の商標権侵害判定の基本原則を反することになる。
「HONDAKIT」事件の判決から、中国での商品流通は行わないにもかかわらず、リスクを無くすために、中国で商標登録を行ったほうがよいと思われる。