OEMに関する最新判例:OEM商品が再び中国に戻ってくる可能性がなければ商標権侵害とならない
背景
(1) 当事者
上訴人(一審原告):福州亜玛機電有限公司
被上訴人(一審被告):重慶神馳進出口貿易有限公司
(2) 登録商標の内容
福州亜玛機電有限公司(原告)は、登録第10886272号「PREDATOR」商標を所有している。指定商品は第 7類の発電機セット、非常用発電機である。
(3) 訴訟の経緯
重慶神馳進出口貿易有限公司は、中国で製造した「predator」商標が付いたガソリン発電機セットの試作機1台を米国に輸出している。原告は被告の行為は商標権侵害に該当するとして上海市浦東新区人民法院に提訴した。 第 1 審では商標権侵害は成立しないと判決したが、原告は2 審判決を不服として上海知識産権法院に控訴した。
上海知識産権法院は、試作機自体が再び中国に戻ってくる可能性は極めて低いため、上訴人の商標権に損害を与えることはないことから、商標権侵害に該当しないとして一審判決を維持した。
二審判決書の概要
判決書では、上海知識産権法院が以下の見解を示した。
1. 訴えられた行為が商標的使用に該当するかどうかは、商標権侵害の判断においては用件の一つにすぎない。訴えられた行為が商標権侵害の他の要件を満たさないことを証明する証拠があれば、その行為が商標権侵害に該当しないと認定することができ、商標的使用に該当するかどうかを判断する必要はない。商標権に損害を与えることが商標権侵害の要件である。
2.OEM行為と一般の委託加工行為との重要な違いは、受託者が製造された商品がすべて海外に販売されることである。OEM行為が商標権に損害を与えるかどうかは、商標法の属地主義に基づいて判断する必要がある。OEM製造においては、製造された商品がすべて海外に販売されるため、該当商品に付けられた商標は中国の関連公衆に混同を生じさせることはなく、また、我が国の商標法が保護する商標の識別機能を損なうこともない。OEM商品がすべて海外に販売される場合、まだ実際に使用されていない登録商標が将来使用される際に識別機能を十分に発揮できないようにすることはなく、OEM行為は原則として中国で登録された商標の商標権に損害を与えることはない。
3. 貿易のグローバル化に伴い、理論的にはすべての輸出品が再び中国に戻ってくる可能性がある。OEM事件において、「商品の戻ってくる」問題が侵害の認定に影響するかどうかは、中国の商標権者の合法的権利を効果的に保護することと、国際貿易の発展を促進することとの間で利益のバランスを取る必要があり、異なるタイプの「商品の戻ってくる」に対してケースバイケースで判断を行うべきである。実務上、輸出商品が中国に戻ってくるには主に3つの場合がある。1つ目は、商品がすべて中国に戻ってくるか、主に中国に戻ってくる場合。このような場合は事実上「輸出向け商品の国内販売」であり、商品が最終的に主に中国で販売されるため、この行為は本質的に一般的な国内委託加工行為の商標権侵害と同様であり、侵害事件において商標権の属地主義を特に考慮する必要はない。2つ目は、輸出商品が通常の商業方法で中国に戻ってくる場合。このような場合、商標権侵害に該当するかどうかは、具体的な事実に基づいて、その行為が中国での登録商標の商標権に実質的な損害を与えるかどうかを判断する必要がある。3つ目は、輸出商品が通常の状況下では中国に戻ってこない場合。実務上、輸出商品が通常の状況で国内に戻ってこない理由はさまざまある。例えば、商品が中国の法律に適合していない、中国での使用場面がないなど。本件では、訴えられた商品が1台の試作機であり、神馳公司が中国でその商品を販売した証拠がなく、また、試作機自体が再び中国に戻ってくる可能性は極めて低いため、その行為は上訴人の商標権に損害を与えることはない。したがって、この行為は商標権侵害に該当しない。逆に、訴えられた行為が商標権侵害に該当すると認定されれば、当事者間の利益のバランスが崩れ、正常な加工産業の発展を妨げることになる。