「英字」と「数字」を組み合わせた商標の識別力判断について
時間: 2024-07-10 劉璐璐 アクセス数:

「英字」と「数字」を組み合わせた商標は中国で識別力を有するかどうかについて、中国の商標審査審理ガイドラインには明確な判断基準がありません。通常、識別力欠如と判断されるのは、以下の2つの場合があります。

 

1、指定商品又は役務の汎用型番にすぎないものである場合

商標法第十一条 次に掲げる標章は、商標として登録してはならない。

(一)その商品の一般名称、図形、型番にすぎないもの。

アルファベットと数字の組合せにより構成される標識が、商品の型番として車両・電子機器・機械分野等で広く用いられています。このような標識はこれらの商品における使用は、商標法第十一条第一項第(一)号の規定違反との理由で拒絶される可能性が高いです。

 

2、その他の顕著な特徴に欠けるものである場合

商標法第十一条 次に掲げる標章は、商標として登録してはならない。

(三)その他の顕著な特徴に欠けるもの

実は中国商標法及び商標審査審理ガイドラインには、商品の一般型番ではなく、自社商品と他社商品との識別を目的として使用される型番についての規定がありません。

商標審査審理ガイドラインによると、普通書体のアルファベット一文字又は二文字のみから構成される標識や、普通書体の数字のみから構成される標識は、識別力なしとして商標登録は認められません。普通書体のアルファベット一文字又は二文字と普通書体の数字の組み合わせは、どうでしょうか。識別力があると判断されますでしょうか。今回は、近年の審決例からその傾向を見ていきたいと思います。

 

審決例1

 

商標:SU6

出願番号:70220974

指定商品役務:12類の鉄道車両、自転車など

審決日:2023/12/20

 

【審決抜粋】

請求商標「SU6」は普通書体の数字と英字で構成されており、鉄道車両、自転車などの指定商品について使用される場合、消費者がそれを商品の型番などの特徴を表す文字として識別しやすく、またはそれを当該類の商品の型番と関連付けられやすくて、商品の出所を区別するための役割に果たすのは難しくて、商標が持つべき顕著な特徴が欠けており、商標法第11条第1項第(3)号にいう情状に該当します。

 

上記事案では、「SU6」は12類の商品の一般型番ではありませんが、アルファベット一文字又は二文字と数字を組み合わせたものは、通常、12類の商品で型番として使用する慣例がありますので、「SU6」は指定商品について使用するときに識別力がないと判断されました。従って、アルファベット一文字又は二文字と数字の組み合わせは、指定商品の一般型番でなくても、型番であると認識されやすい場合、識別力がないと判断される可能性が高いです。

 

審決例2

 

商標:CR7

出願番号:68163498

指定商品役務:30類のコーヒー、キャンディーなど

審決日:2023/10/19

 

【審決抜粋】

請求商標は簡単な英字「CR」と数字「7」の組み合わせで構成されており、このような組み合わせは通常商品の型番を示すために使用され、関連公衆がそれを商標として識別することが難しくて、商標が持つべき顕著な特徴が欠けているため、商標法第11条第1項第(3)号にいう情状に該当します。

 

審決例3

 

商標:RS18

出願番号:69084261

指定商品役務:3類の洗顔料、化粧品など

審決日:2023/10/27

 

【審決抜粋】

請求商標は「RS18」のみで構成されており、指定商品について使用される場合、消費者がそれを商品の型番として認識しやすく、商標として識別することが難しいため、商標が持つべき顕著な特徴が欠けており、商標法第11条第1項第(3)号にいう情状に該当します。

 

上記2つの事例では、アルファベット一文字又は二文字と数字の組み合わせは、食料品、化粧品分野において商品の型番などとして使用する慣例がないとしても、それが通常商品の型番を表示するものとして使用され、取引者、需要者に対し、商品の出所識別標識として認識しやすいものとはいえないため、識別力がないと判断されました。

 

では、役務の場合はどうでしょうか。次の審決例を見てみましょう。

 

審決例4

 

商標:SW-V1

出願番号:67524804

指定商品役務:42類のコンピュータプログラムの設計や開発など

審決日:2023/11/8

 

【審決抜粋】

請求商標「SW-V1」は、コンピュータプログラムの設計や開発などのサービスについて使用される場合、サービスの出所を区別するための標識として認識されるのは難しくて、商標が持つべき顕著な特徴が欠けており、商標法第11条第1項第(3)号にいう情状に該当します。

 

上記の事案から分かるように、アルファベットと数字の組み合わせは、商品商標だけでなく、役務商標に於ける使用する場合も、取引者、需要者に対し、役務の出所識別標識として認識しにくい場合、識別力欠如と判断される可能性は高いです。

 

結論から申しますと、中国の審査の動向を踏まえて、普通書体のアルファベット一文字又は二文字と数字から構成される商標は、アルファベットと数字の組合せを型番として使用する慣例のある商品を指定商品とした場合、識別力を欠くものとして登録は認められない場合が多くて、指定商品を取り扱う分野において商品の型番等に使用されている慣例がなくても、識別力を欠くものとして登録は認められない傾向にあります。また、商標の構成要素にハイフンがある場合も型番と捉えられやすいため、識別力がないと判断される場合があります。アルファベットと数字を組み合わせた商標を出願したい場合はまず代理人に相談することをお推奨いたします。

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