中国では、日本のような早期審査制度は設けられていないが、2022年1月14日、中国国家知識産権局は、「『商標登録出願に関する早期審査弁法(試行)』に関する公布の公告」を公表し、一定の要件を満たした場合、出願人は早期審査を請求することができることとなりました。そして、2023年3月31日、中国国家知識産権局は、商標登録後の手続につき早期審査を請求するためのガイドラインを公表し、一定の要件を満たした場合、商標登録後の変更、譲渡、更新などの手続について、申請人が早期審査を請求できることとなりました。
商標登録出願の早期審査の適用状況がかなり絞られており、外国出願人の利用は極めて困難だと思われます。それに対して、商標登録後の手続の早期審査は比較的利用しやすい制度です。
本文は商標登録出願の早期審査及び商標登録後の手続の早期審査の適用状況、必要書類などをご紹介いたします。
一、商標登録出願の早期審査
1、適用状況
商標出願早期審査を請求できる場合は、以下の4つ場合に限られる。このいずれかに該当すれば早期審査を請求することができる。
1) 国家又は省レベルの重要なプロジェクト、大型プロジェクト、重要な科学技術インフラ施設、重要なイベント・競技、重要な展示会等の名称に関するもので、かつ、商標権の保護が緊急性を有する場合
2) 非常に深刻な自然災害、非常に深刻な事故・災害、非常に深刻な公衆衛生事件、 非常に重大な社会安全保障事件等、緊急事態の発生時であって、当該緊急事態への対応に直接的に関連する場合
3) 良質な経済発展及び社会発展に資するため、及び、「知的財産権強国建設綱」の実施を促進するための確かな必要性がある場合
4) その他、国家利益、社会公共利益又は重要な地域開発戦略を順守する上で、重要で実質的な意義が存在する場合
2、申請要件
早期審査を請求する商標登録出願が、適用要件とともに次に掲げる要件を満たさなければならない。
1) 早期審査を請求する商標登録出願が共有商標である場合、出願人全員の同意があること
2) 電子申請方式を採用していること
3) 登録出願に係る商標が文字のみからなるものであること
4) 団体商標又は証明商標に係る登録出願ではないこと
5) 指定商品又は指定役務の項目が、その適用状況と密接な関連性を有し、かつ、規範名称であること
6) 優先権を主張していないこと
3、必要書類
1) 早期審査請求書
2) 適用状況に適合することを証明する関連資料
3) 中央・国家機関の関連部門、省レベルの人民政府又はその弁公庁が発行した早期審査請求に関する推薦意見書、又は省レベルの知識産権主管部門が発行した早期審査の請求理由と関連資料の真実性に関する審査意見書
二、商標登録後の手続の早期審査
1、適用状況
1) 企業が上場申請をする場合
2) 商標権が融資の担保となる場合
3) 商標権を税関登録する場合
4) 商標権侵害事件の調査及び措置を行う場合
5) 行政手続きにおいて商標権確認の審理が行われている場合
6) 司法手続において必要性が発生している場合
7) 行政上の許認可、行政上の届出等の必要性が発生している場合
8) スーパーマーケットや電子商取引プラットフォームへの参入等、主要な商業活動に参入するために必要性が発生している場合
9) その他、早期審査の必要性に合理的な理由がある場合
2、必要書類
1) 早期審査請求書
2) 申請人の身元証明書類
3) 委任状