復審手続きにおける職権による審査について
時間: 2024-03-01 弁理士 于安東 アクセス数:

関連法律条項

 「専利審査指南」第四部分第2章第1節の規定:復審手続きは、出願人が拒絶査定に不服がある場合の救済手続きであり、特許承認手続きの継続でもある。したがって、一方で、専利復審委員会は、一般的に拒絶査定の根拠となった理由や証拠のみについて審査し、特許出願を全面的に審査する義務は負っていない。一方で、特許授権の品質を向上させ、審査期間の不当な延長を回避するために、専利復審委員会は、拒絶査定に記載されていない明らかな実質的欠陥を職権により審査することができる。


 「専利審査指南」第四部分第2章第4.1節の規定:復審において、専利復審委員会は、一般的に拒絶査定の根拠となった理由や証拠のみについて審査する。拒絶決定の根拠となった理由および証拠に加えて、合議体が書類に以下のいずれかの欠陥があることを発見した場合、関連する理由および証拠を審査することができ、審査・認定の後、当該理由及び証拠に基づいて拒絶査定維持の審査決定を下すものとする。(1) 拒絶決定を下す前に既に出願人に通知した他の理由および証拠による拒絶査定が十分できる欠陥。(2) 拒絶査定で指摘されていない明らかな実質的欠陥、または拒絶査定で指摘された欠陥と同じ性質の欠陥。……合議審査の際、合議体は、当技術分野における常識を引用したり、関連する専門辞典、技術マニュアル、教科書など、当技術分野における常識証拠を補足したりすることができる。


 上記「専利審査指南」第四部分第2章の規定によると、復審において、合議体は、審査期間の不当な延長を回避するために、職権により規定に該当する欠陥を審査することができる。ここでいう「審査期間の不当な延長の回避」は、実体審査手続きにおける経済的手続きの原則に相当するものではなく、復審手続きにおいては「救済」と「手続きの継続」の両方を考慮する必要があるため、「職権による審査」の権限が与えられている。


 復審請求人は、復審請求における補正内容と意見陳述を作成する際には、拒絶査定の根拠となった理由及び証拠に加えて、上記の規定及び実際の運用において起こり得る拡大解釈も考慮する必要がある。


(1)拒絶査定の根拠となった証拠の変更

 拒絶決定の根拠となった証拠について、合議体は復審においてその中の最も近い先行技術を変更することができる。例えば、引用文献 1 と引用文献 2 は、拒絶査定における進歩性に関するコメントに使用されており、引用文献 1 が最も近い先行技術とされている。実務上、合議体は、引用文献2を最も近い先行技術として、引用文献1と組合せて使用することができる。


 拒絶査定における請求項の進歩性に関するコメントに引用文献 1 ~ 3 などの複数の引用文献が使用されている場合、実務上、合議体は、引用する文献の数を減らすことができる。例えば、引用文献 1 と引用文献3のみを使用し、引用文献2を省略することができる。


 さらに、証拠で引用する関連段落は、拒絶査定で指摘された段落に限定されず、合議体は通常、証拠内の同じ技術案の他の段落に拡大することができる。ただし、特定の相違が存在する他の技術案 (特定の相違が存在する並行技術案など) は、通常は引用されることが許されない。


 したがって、復審請求人は、無駄な抗弁を避けるために、復審手続きにおけるこれらの証拠の調整又は使用についての様々な可能性を検討する必要がある。


(2)新たな公知技術証拠の引用

 上記規定により、合議体は新たな公知技術証拠を引用することができる。例えば、拒絶査定における評価されていない又は誤って評価された技術的特徴について、合議体は新たな公知技術証拠を引用し、拒絶査定の根拠となった証拠と組み合わせて使用することができる。なお、これらの新たな公知技術証拠は、教科書や辞書などから得られたものであるという要件を満たす必要がある。


 したがって、拒絶査定に評価されていない又は誤って評価された技術的特徴が存在する場合には、復審請求人は、拒絶査定の根拠となった証拠以外に、新たな公知技術証拠が引用される可能性があるか否かについても考慮する必要がある。


 実務上、合議体による公知技術証拠の審査は依然として厳格である。但し、復審通知書に明らかに要件を満たさない公知技術証拠があった場合、復審請求人は抗弁を提起することができる。


(3) 拒絶査定前に既に出願人に通知されたその他の理由と証拠の引用

 この規定の趣旨は、復審後の継続審査において不合理な事態を避けるためであると理解すべきである。例えば、拒絶査定が取り消された後、出願は復審後の継続審査に入り、審査官は、前回の実体審査で既に出願人に通知された他の証拠および理由を使用して、当該出願を再度拒絶する。


 実務上、上記のような状況が生じない限り、合議体は通常、実体審査の審査意見通知書でその証拠が使用されたとしても、それを引用することはない。


 その他の理由について、因果関係のある欠陥に特に注意する必要がある。例えば、拒絶査定の理由は新規事項の追加になることであるが、その新規事項は、出願人が実体審査でサポート要件違反の欠陥を克服するために追加したものである。このような場合、合議体が新規事項の追加の欠陥を審査すると同時に、サポート要件違反の欠陥も一緒に検討する可能性がある。


 したがって、拒絶査定の前に既に出願人に通知された他の理由および証拠について、復審請求人は、対応する欠陥を補正または陳述によって克服したかどうかを確認する必要がある。


(4) 拒絶査定で指摘されていない明らかな実質的欠陥、または拒絶査定で指摘された欠陥と同じ性質の欠陥の指摘

 明らかな実質的欠陥について、「専利審査指南」には、永久機関が実用性に合わない例が示されている。たとえ拒絶査定の前に実用性の問題が指摘されなかったとしても、復審でそれが永久機関に該当すると判断すれば、明らかな実質的欠陥として復審通知で指摘することができる。さらに、明らかな開示不十分や実体審査における新規事項の追加などの欠陥も、明らかな実質的欠陥に属する。


 また、同じ性質の欠陥についても、審査期間の不当な延長を回避するための規定である。

これらの欠陥は、実体審査において審査官の誤解によって引き起こされる可能性もあり、復審請求人の陳述により事実が変更されたことによって引き起こされる可能性もある。


 総じて言えば、復審請求人は、復審における職権による審査の関連規定を理解し、関連する課題を客観的に考える必要がある。筆者の見解として、次の4点がある。


 ①進歩性の抗弁について、審査官が指摘した引用部分や組み合わせに限定されるものではなく、特許関連法律に基づいて拒絶査定の根拠となった証拠を客観的に考慮する。

 ②因果関係のある欠陥については、拒絶理由となった欠陥を克服すると同時に、因果関係のある欠陥にも対処する。

 ③検査官が見逃した欠陥と同じ性質の欠陥がないかチェックする。例えば、指摘されていない類似する技術案の従属請求項にも、進歩性欠如、サポート要件違反、不明瞭などの欠陥もある可能性はある。

 ④明らかな実質的欠陥があるかどうかをチェックする。実体審査における新規事項の追加など、事前に確認して克服し得る欠陥については、復審請求において事前に補正する。


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