塩基配列に関与する請求項の新規性/進歩性OA応答について
時間: 2022-11-07 紀秀鳳 アクセス数:

 塩基配列に関与する請求項は、RNA(リボ核酸)配列(例えば二本鎖干渉RNA)に関与し、標的遺伝子にハイブリダイズすることによって標的遺伝子の発現を干渉する請求項でもよいし、DNA(デオキシリボ核酸)配列又はアミノ酸配列(例えば蛋白質、ペプチド)に関与し、新しい遺伝子を導入することによって生体に新しい性状(例えば耐熱性)を引き込める、又は従来の遺伝子の基礎の上に一つ又は複数の突然変異サイトを導入することによって生体活性蛋白(例えば抗体、酵素など)の功能を最適化する請求項でもよいである。このような請求項では、配列の組成と構造、及びそれらに対応する効能が進歩性評価のポイントである。


 通常、塩基配列に関与する特許出願は、専門性が比較的高く、新規性/進歩性OAの応答が比較的難しいと思われる。以下、筆者は、実務で代理した事件を結合してOA応答の考えの道筋を整理してみる。


【事件の経緯】

本願

請求項1に、「養殖エビ類の卵黄形成抑制ホルモン(VIH)遺伝子のmRNAを標的とする二本鎖RNA(dsRNA)を用いて、RNA干渉法により、エビ類の卵黄形成抑制ホルモン遺伝子の発現を抑制し、養殖エビ類の卵成熟抑制を解除する方法。」が記載されている。


1st OA

 審査官は、二つの引用文献を引用し、請求項1が引用文献1に対して新規性を有せず、残りの全ての請求項が新規性又は進歩性を有しないことを指摘した。


 詳細について、審査官は下記のように認定した。引用文献1に、RNA干渉技術を用いてバナメイエビ生殖腺阻害ホルモン(GIH)の転写物を抑制する方法が開示されており、卵巣卵黄蛋白源発現の予期増加が、37日目に観察されたことが開示されており、その結果、このような手段でエビの成熟を促進する可能性があることが明らかにし、また、従来技術では、VIHをGIHの代替名称としてよく使われている。このように、請求項1の全ての特徴が引用文献1に開示されているため、請求項1は新規性を有しない。


1st OAの応答

 代理人が本願の明細書を読む込んだところ、本願に記載の二本鎖RNA(dsRNA)が、卵黄形成抑制ホルモン(VIH)遺伝子の中の幾つかの特定類型の遺伝子におけるある一つのセグメントにハイブリダイズするように設計されたものであることに気付いた。請求項1には、上記特定のセグメントの配列が記載されておらず、請求項6に上記特定のセグメントの配列が記載されている。具体的には、配列の組成及び構造を記述したSEQ ID NO:28などの五つのものである。


 1st OAにおいて、審査官は、SGP-A、SGP-B、SGP-C、SGP-F、SGP-Gのそれぞれの鎖全体の配列が知られていることを指摘したが、鎖における該セグメントの位置付けをしなかった。しかし、審査官は、請求項6に対して、既存のアミノ酸配列に基づいて該ペプチドをコードする遺伝子に対するdsRNA配列を設計することが、当業者にとって、慣用手段であることを認定した。


 代理人は、請求項1に対する審査官の意見が妥当であるが、請求項6に対する審査官の意見は妥当ではないことを考えた。従って、1st OA応答の時に、請求項6の特徴を請求項1に追加するとともに、下記のように反論した。即ち、「成熟ペプチドのアミノ酸配列に基づいて該ペプチドをコードする遺伝子に対するdsRNA配列を設計する」ことが本分野の周知技術であるとしても、「活性のあるdsRNA配列を設計し、例えば成熟ペプチドのどのセグメントを選出して活性のあるdsRNA配列を設計する」かは、本分野の周知技術ではない。


1st OA後

本件は、1stOA応答後に登録された。


【まとめ】

 本件から見ると、塩基配列に関与する請求項の新規性/進歩性のOAを応答する対策として、下記の幾つかの点がある。


 1、  審査意見に論理的に適切ではないところがあるかと確認する。最も多く本願の特徴が開示されたと審査官が認定した配列を突破口として分析を行う。例えば、本件において、最も多く本願の特徴が開示されたと審査官が認定した配列は、引用文献2に記載のpre20であり、本願の成熟ペプチドと同一なアミノ酸配列を有する。


 2、  引用文献には、審査官に指摘された記載又は示唆があるかどうかを確認する。主に、引用文献には、本願に記載の塩基配列の効能に繋がる機能ドメイン及び該機能ドメインにおける少なくとも一つの遺伝子セグメントが記載されたかを確認する。例えば、本件において、引用文献2には、一種類のペプチドとしてpre20が記載されているが、その構造と機能の関係について記載がない。従って、引用文献2には、効能に繋がる機能ドメイン及び該機能ドメインにおける少なくとも一つの遺伝子セグメントが記載されていない。


 3、  本願に記載の塩基配列及びその効能と引用文献に開示の内容とをよく比較し、塩基配列の組成、突然変異を引き込めた場合の突然変異サイト、及び遺伝子の効能と引用文献に開示の内容とが相同であるかを判断する。また本願に記載の塩基配列が非常によい効果を実現したかを判断する。


 4、  比較によって獲得された相違点に基づいて請求項に対して反論及び/又は補正を行う。例えば、本件において、本願に記載の特定のセグメントは、引用文献2に記載のpre20における一部に対応するが、引用文献2には、pre20の機能ドメインがどの部分であるかが記載されておらず、従って、先行技術には、本願に記載の特定のセグメントが開示されていない。また、上記特定のセグメントは、本願において非常によい、養殖エビ類の卵成熟抑制を解消する効果を実現した。よって、これらに基づいて、請求項に対して補正及び反論を行うことができると判断した。


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