2019年4月23日に改正された中国商標法は公布されました。今回の商標法改正点について、下記二点はそのポイントであると思います。
一、
第4条 自然人、法人又はその他の組織が、生産経営活動において、その商品又は役務について商標専用権を取得する必要がある場合には、商標局に商標登録を出願しなければならない。使用の目的ではない悪意による商標登録出願であるときは、これを拒絶しなければならない。
第44条 登録された商標が、この法律の第四条、第十条、第十一条、第十二条、第十九条第四項の規定に違反している場合、又は欺瞞的な手段若しくはその他の不正な手段で登録を得た場合は、商標局は当該登録商標の無効宣告を行う。その他の単位又は個人は、商標評審委員会に当該登録商標の無効宣告を請求することができる。
実は、2018年以来、中国商標局は商標法第4条の規定によって、既に16000件以上の悪意出願を拒絶しました。具体的な理由は、一人の名義で千件以上の商標を出願し、それらの商標を全部使用する可能性が非常に低いため、出願人の目的は使用ではなく、販売することだと推断できるとのことです。
但し、この法律の適用について、争議もあります。旧商標法第4条に、商標専用権を取得したい場合、商標出願を提出しなければならないと規定していますが、使用の目的ではない場合、出願できないとの規定がありません。
従いまして、悪意により商標出願を有効的に制限するために、上記のように第4条に「使用の目的ではない悪意による商標登録出願であるときは、これを拒絶しなければならない。」の規定は追加されました。
今後、商標権者は、他人の悪意による出願に対して、改正された第4条を利用して、異議申立て又は無効審判を提出することができます。
二、
第63条 商標専用権侵害の損害賠償額は、権利者が侵害により受けた 実際の損失により確定する。実際の損失を確定することが困難なときは、 侵害者が侵害により得 利益により確定することができる。権利者の損失 又は侵害者が得た利益を確定することが困難なときは、当該商標の使用 許諾料の倍数を参照して合理的に確定する。悪意により商標専用権を侵 害し、情状が重大なときは、上述の方法により確定した金額の1倍以上5倍以下で賠償額を確定することができる。賠償額は、権利者が侵害行 為を抑止するために支払った合理的な支出を含まなければならない。 人民法院は、賠償額を確定するために、既に権利者は挙証に尽力したが、 侵害行為に関連する帳簿、資料を主に侵害者が有している状況において、 侵害者に、侵害行為に関連する帳簿、資料の提供を命じることができる。 侵害者が提供しないとき、又は虚偽の帳簿、資料を提供したときは、人 民法院は、権利者の主張及び提供した証拠を参考に賠償額を判定するこ とができる。 権利者が侵害により受けた実際の損失、侵害者が侵害により得た利益、 登録商標の使用許諾料を確定することが困難なときは、人民法院は、侵 害行為の情状に応じて、500万元以下の賠償支払いを判決する。 人民法院は、商標紛争案件を審理する際に、権利者の要請に応じ、登録商標を盗用した偽造商品について、特別な状況を除き、これを廃却する ことを命じ、主に登録商標を盗用した偽造商品を製造することに用いら れる材料、工具について、これを廃却することを命じ、且つ補償を与え ないこととし、あるいは、特別な場合では、前述の材料、工具が商業ル ートに入ることを禁止するよう命じ、且つ補償を与えないこととする。 登録商標を盗用した偽造商品であるとき、盗用した登録商標の標章を除 去しただけで商業ルートに入っていけない。
商標権侵害賠償額について、
旧商標法の1~3倍から、1~5倍になり、
権利者が侵害により受けた損失、侵害者が侵害により得た利益、及び登録商標の使用許諾料を確定することが困難である場合、最高300万元以下から、500万元以下になりました。
また、偽造商品が商業ルートに入ることを禁止することは、商標権侵害者の違法コストの最大化を実現できます。
第4条の改正、商標権侵害の賠償額の向上などは中国政府が知的財産を保護するよう、商標権侵害行為を打撃する決心を示しました。
最後、今回の商標法改正は、2018年4月の草案意見の募集から2019年4月に決定が下されたまで、僅かの一年間がかかりました。これも中国政府が知的財産権保護を更に重視してきたことを示しています。