「レッドソール」商標の判例からみる中国における位置商標の保護
時間: 2019-01-04 劉璐璐 アクセス数:

2018年12月24日、北京市高級人民法院は「レッドソール」商標拒絶査定不服審判の件に関する第二審の判決を下した。本件に係る商標「红鞋底商标.png」は、フランス出身のハイヒールデザイナークリスチャン・ルブタン氏(CHRISTIAN LOUBOUTIN)の制作による、1992年設立の女性向けの靴のブランドで、外国ではファッションブランドとしてよく知られている。

 

2010年4月15日にクリスチャン・ルブタン(以下「請求人」という)は国際登録第1031242号「红鞋底商标.png」(以下「請求商標」という)の中国を指定する領域指定出願を提出、指定商品は第25類の「女性用ハイヒール」である。商標局は顕著な特徴に欠けると指摘し当該商標を拒絶した。クリスチャン・ルブタン氏は不服があり、不服審判を請求した。不服審判決定において、商標評審委員会は「請求商標は常用のハイヒール図案と靴底の単一色彩からなり、指定商品「女性用ハイヒール」で使用すると、関連公衆はそれを商品の出所を識別するための標識として認識し難くて、商標として有すべき顕著な特徴を有していない。請求人より提出された証拠が、請求商標は真実かつ有効の商業的な使用により顕著な特徴を有していたことを証明できない」と判断し、『商標法』第11条第1款第(3)項に基づいて請求商標の中国を指定する領域指定出願を拒絶した。

 

第一審では、北京知財法院は商標評審委員会の拒絶査定不服審判決定を取り消した。第一審の判決において、商標評審委員会の請求商標は図形商標に属するとの事実認定は誤りがあると指摘された。請求商標は立体商標に属すべき、商標サンプルの破線部分はハイヒール商品自体の形状を表示し、局部に赤色を塗りつけた。

 

請求人と商標評審委員会はいずれも第一審の判決に承服できず、北京市高級人民法院へ上訴した。第二審の判決において、請求商標はクリスチャン・ルブタンが中国を指定する領域指定出願をした国際登録商標で、『商標法実施条例』第44条の規定により、その審査の対象は世界知的所有権機関が発行した商標国際登録の公告より確定されるべきである。請求人より提出された「世界知的所有権機関- ROMARIN-商標国際登録の詳細情報」により、請求商標は「靴底に用いれる赤色(PANTONE:18.1663TP)より構成される」(ハイヒールの形状は商標の一部でなく、商標の位置を表示するだけ)。即ち、請求商標は位置を特定される赤色より構成され、位置を特定される単色商標に属する。そのため、第二審の判決において、商標評審委員会及び第一審法院は請求商標標識及びその構成要素についての事実認定が誤ったと認定し、第一審法院の商標評審委員会の決定を取消すとの判決を維持した。

 

第二審の判決において、位置を特定される単色商標の登録可能性についての次の論述は特に注意されるべきである。「本件では、請求商標は位置を特定される単色商標である。商標評審委員会は『商標法』第11条第1款第(3)項のみを引用し請求商標は顕著な特徴に欠けるとの理由で不服審判決定を下したが、顕著な特徴を判断するロジック上の前提は、請求商標の標章は商標としての登録可能性を有し、『商標法』意味上の商標として登録できる標章に属することである。『商標法』第8条の規定により、自然人、法人又はその他の組織の商品を他人の商品と区別することができる標章は、全て商標として登録出願することができる。本件請求商標の標章は『商標法』第8条に挙げられている標章に属しないが、商標として登録出願できないものとして排除される標章でもないし、商標評審委員会も本件請求商標は商標として登録出願することができる標章に属しないと認定していなかった。よって、商標評審委員会は再審査のときに、クリスチャン・ルブタンが商標評審及び第一審、第二審で提出した関連証拠に基づいて請求商標は顕著な特徴を有するかどうかについて改めて認定しなければならない」。

 

「レッドソール」商標の判例はわが国『商標法』に明確に規定していない位置商標に触れている。位置商標(Position Mark)とは、一般的に指定商品等に付す位置が特定され、立体的形状、図形若しくは色彩若しくはこれらの結合からなる標章とされている。「レッドソール」商標の第二審の判決から、司法機関は『商標法』第8条「…文字、図形、アルファベット、数字、立体的形状、色彩の組合せ及び音声等、並びにこれらの要素の組合せを含む標章は、すべて商標として登録出願することができる」との規定に対して開放型の観点を持っていることが分かった。即ち、『商標法』には商標として登録出願することができる標章の全てを挙げていないので、中国では商標として登録出願することができる標章は挙げられているものに限るべきではない。つきまして、当該判例に係る位置商標について、請求人は「红鞋底商标.png」が使用により顕著な特徴を有し、商品の出所を区別する役割に立つものとなったことを証明するための大量の使用証拠を提出できれば、中国では登録の見込みがある


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