商標使用中に避けなければならない「罠」2
--『商標法』第10条使用禁止条項について
前回に話した「罠」まだ覚えている?前回は、『商標法』使用禁止条項中の第10条1款の7にいう「欺瞞性を帯び、公衆に商品の品質等の特徴又は産地について誤認を生じさせやすいもの」を紹介したが、今回は、第二弾として『商標法』第10条1款の8にいう社会主義の道徳、風習を害し、又はその他の不良な影響を及ぼすものを話しましょう。
「社会主義の道徳、風習」とは、わが国の人々の共通の生活および行動の規準、規範およびある時期において社会に流行る良好な風習と習慣のことをいう。「その他の不良な影響」とは、商標の文字、図形又はその他の構成要素がわが国の政治、経済、文化、宗教、民族などの社会公共利益と公共秩序に消極的、マイナスな影響を及ぼすことをいう。例を挙げると、「王八蛋」は馬鹿野郎を意味し、人をののしっていう葉であって、社会主義の道徳、風習を害するため、「 」を商標として登録することは明らかに不可能である。また、「非典」は「重症急性呼吸器症候群」(SARS)の別称で、民族感情を害し、その他の不良な影響を及ぼすため、「 」を商標として登録することも不可能である。なお、今回は、そんなに明らかに分かることができない「罠」を紹介する。
①宗教信仰に係るもの
宗教信仰を害しない原則として、商標出願の際に宗教信仰に係るものを慎重に使わなければならない。筆者の経験により、一番よく使われる宗教信仰に係る一文字は「禅」である。禅は、仏教の一派である禅宗の略、もしくは禅那の略である。日常生活では「禅」はよく使われるが、商標として使用すると、宗教信仰を害すると思われる可能性がある。次の「禅」を含む商標は、宗教信仰を害する理由で商標局に拒絶された。
商標:、 、 、
「禅」を含む商標は全部登録してはならないわけではない。次の状況のいずれかに該当する場合に登録することができる。(1)出願人自身は宗教組織である。(2)出願人名称に「禅」を含み、しかも商標は出願人の商号と一致する。また、商標中に「禅」を含むが、公衆に宗教に悪い印象と関連付けさせないものは登録される可能性もある。
例
商標:
出願人:福興禅寺
商標:
出願人:広東龍山禅泉休闲度假旅游有限公司
②頭文字は「国」であるもの
頭文字は「国」である商標というと、一番有名なのは「国酒茅台」である。茅台はそもそも政府主催の宴会で使われるお酒で、なぜ不良な影響を及ぼすと判定されたのでしょうか。まずは、「国酒」という言葉は「中国の最もよい酒」、「国家レベルの酒」と思われやすい。また、政府主催の宴会で使われるお酒は茅台だけではない。茅台が「国酒」という言葉を独り占めする場合、明らかに不公平だ。「国酒茅台」商標の出願は17年を経て失敗に終わった。
実は、2010年に商標局は頭文字は「国」である商標の審査基準について関連規定を出したことがある。当該規定には、頭文字は「国」である商標については厳しく審査するに言及された。
例
商標:
指定商品:酒
商標評審委員会は、上記文字は商標として指定商品で使用する場合、「国」字の濫用を生じさせやすくて、不良な影響を及ぼすと判定し、上記商標を拒絶した。
従いまして、商標には「国」の文字を慎重に使わなければならない。
③センスがないもの
「センスがない」という言葉は、近年の商標局の拒絶査定、もしくは商標評審委員会の決定によく見られる。ネットの発展とともに、ネット用語も生まれた。ネット用語の中、確かにセンスがない言葉がある。
例
商標:(「思いのままに楽しみを求める」を意味する)
使用しているうちに悪い意味がなくなった言葉もある。このような商標に対して、審査基準を適当に緩やかにすべきだと考えている。
例
商標:(「食いしん坊」を意味する)
「吃货」はもともと人をののしっていう葉であるため、「吃货」商標の出願は基本的に拒絶された。しかしながら、現在、「吃货」は食べ物好きな人、またはグルメの別称として使われていて、「吃货」と自称する人もたくさんいる。その悪い意味は既になくなった。このような商標に対して審査基準を適当に緩やかにして、登録すべきだと考えている。
『商標法』第10条1款の8は「雑則」と言われている。つまり他の条款に適用できない場合は『商標法』第10条1款の8に基づいて拒絶する。なお、ラクティスでは、この条款の使用については、商標局、商標評審委員会、法院いずれも慎重にしている。出願人はそんなに心配する必要はなく、頼りになる代理人に負かせばいい。