商標使用中に避けなければならない「罠」
時間: 2018-09-18 劉璐璐 アクセス数:

--『商標法』第10条使用禁止条項について

 

近頃、商標局は『商標法』の使用禁止条項違反の未登録商標に打撃を与えるための「浄化」特別行動を展開している。当該行動の対象は、『商標法』第10条違反で拒絶され現在でも実際に使用されている商標である。

 

『商標法』第10条 次に掲げる標章は、商標として使用してはならない。

 

第1款:

(一)中華人民共和国の国名、国旗、国章、国歌、軍旗、軍章、軍歌、勲章等と同一又は類似するもの及び中央国家機関の名称、標識、所在地の特定地名又は標章性を有する建築物の名称若しくは図形と同一のもの。

(二)外国の国名、国旗、国章、軍旗等と同一又は類似するもの。ただし、当該国政府の許諾を得ている場合は、この限りでない。

(三)各国政府よりなる国際組織の名称、旗、徽章等と同一又は類似するもの。ただし、同組織の許諾を得ている場合、又は公衆に誤認を生じさせない場合は、この限りでない。

(四)実施管理し保証することを表す政府の標章又は検査印と同一又は類似するもの。ただし、その権利の授権を得ている場合は、この限りでない。

(五)「赤十字」、「赤新月」の名称、標章と同一又は類似するもの。

(六)民族差別扱いの性質を帯びたもの。

(七)欺瞞性を帯び、公衆に商品の品質等の特徴又は産地について誤認を生じさせやすいもの。

(八)社会主義の道徳、風習を害し、又はその他の悪影響を及ぼすもの。

 

第2款:

県級以上の行政区画の地名又は公衆に知られている外国地名は、商標とすることができない。ただし、その地名が別の意味を持つ場合、又は団体商標、証明商標の一部である場合は、この限りでない。地名を使用して既に登録された商標は、引き続き有効とする。

 

簡単に言うと、第10条第1款にどのような標章は商標として使用してはならないことが規定されていて、第2款に地名が商標としての使用を禁止することが規定されている。

 

市場の反応の速さで、商標がまだ登録されていない状況であっても、使用せざるを得ない。しかしながら、商標は『商標法』第10条第1款にいう使用禁止の情状に該当する場合、登録することができない上に使用することもできない。勝手に使用したときは、『商標法』第52条の規定により、地方の工商行政管理部門は使用を差止め、期間を定めて是正するよう命じるものとし、かつ公表することができる。違法経営額が5万元以上のときは、違法経営額の50%以下の罰金を科すことができ、違法経営額がない、又は違法経営額が5万元未満の場合、1万元以下の罰金を科すことができる。冒頭に言及した特別活動は、この規定に基づいて行っているものである。

 

第10条第1款の第(1)、(2)、(3)、(4)、(5)号及び第2款のいうものが明らかなので、くどくどと述べない。ここで例を挙げて第(7)号及び第(8)号を説明する。

 

第10条第1款第(7)号に欺瞞性を帯び、公衆に商品の品質等の特徴又は産地について誤認を生じさせやすいものは商標として使用してはならないと規定されているが、どのような商標は欺瞞性を帯び、公衆に商品の特徴について誤認を生じさせやすいものと判断されるでしょうか?下記の判例でいちいち説明する。

 

公衆に商品またはサービスの品質について誤認を生じさせやすいもの


商標:点心王.jpg                                              

指定役務:レストラン


商標:农家菜老大.jpg农家菜老大.jpg

指定役務:レストラン

 

上記商標中の「王」と「老大」(「老大」はかしらの意味をする)はそれぞれ業界第一の位置を表明していて、消費者にサービスの品質について誤認を生じさせやすい。よって、商標を考案する際に、このような誇大な表示を避けなければならない。

 

公衆に商品の原材料について誤認を生じさせやすいもの


商標:菌养田.jpg菌养田.jpg

指定商品:肥料

 

「菌养田」を「菌類で農作物を育てる」に解釈することができる。この商標を菌類に関係がある商品で使用すれば、指定商品の効能を直接表示し、商標の顕著な特徴に欠けるが、菌類に関係がない商品で使用すれば、かえって欺瞞性を帯び、消費者に商品の原材料または効能などの特徴について誤認を生じさせやすい。


商標:邓支林白鹅.jpg

指定商品:魚、食肉、家禽   

 

この商標中の「白鹅」(白いガチョウ)は「菌养田」に似ていて、指定商品の原材料として、「ガチョウ」に関係がある商品で使用すれば識別力に欠けるが、魚や食肉などの指定商品で使用すれば、消費者に商品の原材料について誤認を生じさせやすい。

指定商品「ガチョウ」についてこの商標を使用したい場合は、商標又は指定商品を下記のように変更することで簡単に解決できる。

 

方法1 商標中の「白鹅」を外して「邓支林」のみを出願する。こうすれば、誤認を生じさせやすいとの拒絶理由は解消できる。

 

方法2 商標をそのままで指定商品「白いガチョウ」のみを指定する。

 

ただし、方法2より方法1のほうがいいと思う。なぜかというと、方法2で登録すれば、登録人は鳥や鴨なども飼育しようとした場合は、改めて商標を出願する必要がある。方法1で登録すれば、将来事業内容を拡大しても商標をそのまま使用できる。

 

公衆に商品の機能について誤認を生じさせやすいもの


商標:月子方.jpg

指定商品:果実飲料

 

中国では、産後のひと月は「月子」という、この一か月間に特別な養生をする。商標「月子方」は消費者に産後一か月間の養生をするために特製した飲料であると認識させやすくて、それによって商品の機能または用途について誤認を生じさせやすい。

 

公衆に商品またはサービスの出所について誤認を生じさせやすいもの


商標:通赢集团.jpg

出願人:通赢全球技術服務有限公司

 

上記の判例と違って、この商標の指定商品/役務はどのようなものにしても、登録又は使用することができない。理由は商標中に企業の組織形態を表示する「集団」の2文字を含むからである。出願人は「○○集団有限公司」でなく、「通赢全球技術服務有限公司」であるから、消費者または関連公衆がこの商標を見たときは、商品または役務の提供者は「通赢集団」という企業であって、それによって商品または役務の出所について誤認を生じさせやすい。

 

従い、商標を考案したとき、企業の組織形態を表示する言葉を使用しないほうがいい。例えば集団、有限責任会社、股份公司、co., ltd.、株式会社など。当然ながら、商標と出願人の名義は一致している場合は登録することができる。上記「通赢集団」を例として、出願人の名義は「通赢集団有限公司」であれば、「通赢集団」の登録及び使用は『商標法』第10条1款(7)号に違反しない。ただし、このような商標は隠れている問題がある。出願人企業の組織形態は変更されまたは商標権が移転された場合に、登録商標の名義変更手続き又は譲渡手続きを行うべきだが、組織形態又は名義が違うから、このような商標を変更または譲渡することができない。それによって更新手続きを行うこともできず結局無効商標になってしまう恐れがある。

 

公衆に商品の産地について誤認を生じさせやすいもの


商標:泽源高丽.jpg泽源高丽.jpg

指定商品:薬品

出願人:○○(自然人)

 

上記商標中に「高丽」を含めている。「高丽」は朝鮮半島にあった古代の王朝で、現在はもう存在していないが、「高丽」を言うと、朝鮮地方を容易に連想できる。ちょうせんにんじん(中国語: 高丽人参)はとても有名な人参であるから、消費者は「薬品」について使用されている「泽源高丽」商標を見たとき、薬品の原材料や産地を誤認しやすいので、上記商標は『商標法』第10条1款(7)号に違反し、使用してはならない。

 

例外の状況もある。商標はある商品の名称や原材料であるにもかかわらず、商標の指定商品は当該商品自身とは直接に関係がなかったら、一般的には登録することができる。例えば、苹果(りんご)、小米(粟)を商標として指定商品「スマホ」について使用しても、消費者はスマホの原材料はりんごまたは粟であると絶対思わないから、消費者に誤認を生じさせることがなく、登録することができる。また、下記の判例を挙げる。


商標:Mink.jpgMink.jpg

指定商品:かつら

 

上記商標「Mink」はミンクの皮を意味するから、商標局は『商標法』第10条1款(7)号違反との理由でこの商標を拒絶した。出願人が、「Mink」はミンクの皮を意味するが、ミンクの皮はかつらの原材料でないから、この商標を「かつら」などの商品について使用しても消費者に商品の原材料についての誤認を生じさせる恐れがないと反論した。結果として、商標評審委員会は請求人を審判理由を認め、この商標の予備的査定を許可した。

 

また、原材料を表示する商標を商品について使用することは消費者に誤認を生じさせるが、サービス商標としては登録することができることもある。例えば、上記判例中の「邓支林白鹅」を家禽類商品で使用する場合、消費者に商品の原材料についての誤認を生じさせやすいが、レストランなどの指定役務で使用すればこのようなおそれがない。なぜかというと、飲食業界では特色がある食材を商標として使用する慣例があり、しかもこのような使い方は一般的に消費者に誤認を生じさせる恐れがないから、このような商標をレストランサービスで使用することは、『商標法』第10条1款(7)号に違反しない。

 

『商標法』第10条1款(7)号を纏めると、商標中に商品の品質、重量、数量、原材料、産地、功能、用途、消費対象などの特徴を表示する言葉を含み、しかも公衆に商品の特徴についての誤認を生じさせやすいもの、及び商標中に企業の名称を含み、しかもこの名称は出願人の名義とは実質な差異があるものは、商標として使用してはならない。商標を考案した際に、このような罠を避けなければならない。

 

『商標法』第10条第1款第(8)号を次回に紹介する。

 

備考:上記判例は商標評審委員会より公布した審決書から選ぶものである。


返回顶部图标