中日商標制度における併存制度の比較
時間: 2018-03-07 李麗芳 アクセス数:

商標の審査において出願商標が先行登録商標に類似していると判断された場合であっても、当該先行商標の登録権者の同意(コンセント)を得ていれば出願商標の登録を認める。通常、このような方法は「コンセント」制度という。


日本と中国の商標法において、コンセント制度はいずれも規定されていないだが、同意書はまったく利用できないでしょうか。ここで日本と中国における同意書の利用について以下のように紹介する。


日本

日本にはコンセント制度がなく、同意書は一切認められない。但し、日本において、「アサインバック」という制度を設けている。「アサインバック」は「アサインメントバック(Assignment back)」と呼ばれることもあり、簡単に言うと、先行商標を克服するために、先行商標権者との交渉をして商標併存の意向を達成した後、先行商標権者の名義で商標権を取得してもらい、登録後に商標権を譲渡してもらうことで商標権を取得する方法である。この方法は実際に出願商標と先行商標の併存を実現した。


実務上アサインバックで拒絶理由を解消したケースが数多くあるが、この方法で問題が生じる可能性がある。


まず、アサインバック制度は2度手間になる上、混同を生じる恐れのある類似関係商標の重複登録を禁じた日本『商標法』第4条1項11号の趣旨にも反する。その次、アサインバック制度は日本の特有なものであり、外国出願人にとって理解し難い。また、アサインバックを利用できない状況もある。


従って、日本ではコンセント制度の導入はずっと検討されている。


中国

中国において、商標の審査において出願商標が先行登録商標に類似していると判断され拒絶査定になった場合、不服審判の際に、出願人は当該先行商標の登録権者の同意(コンセント)を得た旨の同意書の求めることができる。


商標の類似性についての判断は主観的なもので、商標局審査官より類似と判定された商標は、先行商標の登録権者或は消費者が類似しない、または、市場での併存が混同誤認を生じさせないと認識する可能性がある。この認識に基づいて、先行商標の登録権者が合理的な費用で後願商標出願人のために同意書を発行することはよくある。


先行商標の登録権者より発行された同意書を取得した後、拒絶査定不服審判の際に商標評審委員会へ提出することはできるが、商標評審委員会がこの同意書を当然に認めるのではない。商標評審委員会は先行商標の登録権者の意見だけでなく、混同可能性及び消費者の利益に対する損害可能性も考量する。商標評審委員会は2007年11月に発表された法務通信に解答した同意書が認められる条件を下記のように簡単に纏めた。


1、    双方商標はある程度に区別があること

2、    双方商品は差異があること

3、    消費者の混同を生じさせる可能性から、双方商標の知名度を考量すること

4、    事例:グーグル社の「nexus」商標拒絶査定不服審判案



出願商標

引用商標

商標

商标图片1.jpg

商标图片2.jpg

出願/登録番号

11709162

1465863

出願/登録人

グーグル社

株式会社島野(「島野」という)

指定商品

携帯型コンピュータ

自転車用コンピュータ


双方商標のアルファベット構成と称呼はまったく同じで、出願商標の指定商品「携帯型コンピュータ」と引用商標の登録商品「自転車用コンピュータ」は類似商品に該当するため、商標評審委員会と一審・二審の裁判所いずれも出願商標の登録を拒絶した。グーグル社は最高裁判所へ再審を請求した。再審に最高裁判所はグーグル社の主張を認め、出願商標の登録を許可した。


判決において、最高裁判所は双方商標の使用商品の差異と双方の知名度を考量し、グーグル社と島野の間の「商標併存契約」を認めた。グーグル社の商標は携帯型コンピュータに使用され、島野の商標は自転車専用のものであり、双方商品の消費者は異なっている。また、島野の商品は自転車専用のものであるため、その機能、主な用途は一般的なコンピュータとは異なっている。しかも、グーグル社と島野はそれぞれ自分の領域で高知名度を持っていて、消費者が双方の知名度より両商標を区分することが可能である。


従って、中国では、正式なコンセント制度はないが、拒絶査定不服審判において同意書または商標併存契約を提出したことにより拒絶理由を解消した事例が少数ではない。

最後に、中日両国の商標併存制度上の共通点と相違点を下記のように纏めた。

共通点:両国とも法的な規定がない。


相違点:


日本

中国

先行商標の登録権者の認めのみは必要

先行商標の登録権者の認めだけでなく、審査官の認めも必要

双方商標の差異についての要求がない、同じ商標でもアサインバック制度を利用して併存できる。

双方商標と指定商品は差異があることは必要


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