中国特許法の最新改訂状況
時間: 2013-09-25 唐軼 アクセス数:

 概要:中国特許法の第4回改訂については既に公開意見募集の段階を終えているが、意見募集稿から見ると、今回の改訂は細部を修正しただけであり、特許の司法保護を強調すると共に、特許の行政保護をより強化する方向を示している。

 

 キーワード:中国特許法、改訂、行政保護

 

 2012年8月、中国国家知識産権局は「中華人民共和国専利法改訂案(意見募集稿)」を公布し、正式に社会に対して意見募集を行った。今回は中国特許法の第4回目の改訂になるが、中国特許法は1984に発表され、これまでに1992年、2000年、2008年をと前後3回の改訂が行われてきた。

 

 上述の意見募集稿によれば、今回の改訂は7つの条項に及び、これらの条項は中国特許法の「特許権の無効審判」と「特許権の保護」の2章に属している。したがって、改訂した条項から見ると今回の改訂はこれまでの3回の全面的な改訂と異なり、細部の修正に過ぎない。


 1. 改訂の主な目的
 2008年6月、中国政府は「国家知的財産権戦略概説」を公布、実施し、知的財産の関連業務を国家戦略レベルまで引き上げた。社会経済の急速な発展につれ、イノベーションについての要求がますます高くなってきており、さらに厳しい知的財産権の保護状況及び広い範囲からの期待に対して、中国政府は、知的財産権の保護の取り組み力を必ず、更に強化する必要性を感じていた。

 

 中国の特許制度にとって、2008年に特許法が3回目の改訂を終えた後、特許権保護の効果の弱さが一番大きな問題となっていて、これを解決せざるを得なかった。従って、今回の改訂は「特許保護を強化し、法の執行力を強化する」を主な目的にしている。


 2. 改訂の主な内容
 海外の国や地域の特許保護体制と異なり、中国特許保護システムの最大の特徴は、行政保護と司法保護が平行していることである。中国は特許保護、更に知的財産保護の中でも行政保護を非常に重視している。これは中国の独特な国情と関係がある。人口の多さ、境域の広さ、司法資源の有限性などの要素が、行政保護がある程度の優位をもたらし、司法保護の有効な補充部分として一貫として中国政府に重視されてきた。そのため、今回の改訂は特許の司法保護を強調すると共に、特許の行政保護強化に重点を置いている。

 

 先ず、今回の改訂は明確に司法機関と行政執法機関に調査、検証の権利を賦与した。一方で、侵害被疑者が持っている、被疑侵害製品及び帳簿、資料などの証拠に対して、人民法院は権利者の申請により法に従い調査証拠収集し、被疑侵害者が証拠を提供しない、或いは移転、偽造、隠滅した場合、人民法院は法律に従って強制措置或いは刑事責任を追及することができる。一方で、被疑侵害行為に対して、行政の法的執行機関も調査する権利をもち、被調査人の拒絶、妨害行為に対して行政執法機関が警告若しくは法律に従って治安管理の処罰を与える。これから見ると、司法機関の主動調査、収集若しくは行政執法機関の主動調査を通して権利人が権利を守る過程中検証が困難であることと証拠を上げることが困難であることを解決するのに役に立つと思われる。さらに、人民法院若しくは行政執法機関が上記の職権を行使するに当たって拒絶、妨害する行為に対しても関連の罰する措置を明確に規定し、強力な制度保障を提供した。しかし、目前案件数が多く、司法資源が限られている状況の中、裁判官は調査,検証の責務を主導的に負担、履行できるかどうかは実践の中で証明するしかない。

 

 次に、今回の改訂は行政執法機関が侵害賠償額の判定職能を増やした。すなわち、行政執法機関が特許侵害紛争を処理する際、侵害行為が成り立つと認定した際に侵害人が損失を賠償するように命じることができるし、賠償額は特許侵害訴訟の関連規定に従って決めることができる。現行の特許法では、行政執法機関は特許侵害紛争を処理する際、当事者の請求に応じて侵害賠償額に対して調停できたが、このような調停協議には強制執行力が無いため、当事者はしばしば事後に人民法院に起訴し続けることを選択し、行政執法機関が特許紛争を解決する執法機能を弱め、行政執法資源の浪費をもたらした。行政執法機関に侵害紛争の中で、賠償額の判定職能を賦与したことは、権利人の合法的権益を直ちに守り、訴えに疲れることを減らし、公共資源を節約し、各級人民法院が現在遂行している知的財産の民事、行政、刑事「三審合一」のやり方との調和もできる。
 

 また、今回の改訂は無効審判請求に対する審決の発効時間及び関連プロセスを明確にした。即ち、特許権を無効にすべきであるとする審決或いは特許権を維持すべきであるとする審決が出された後、国務院の専利行政部門は直ちに登録と公告をすべきであるとした。その審決は公告日から有効になり、特許管理部門と人民法院は審決に従って直ちに特許権侵害紛争を審理、処理すべきである。現行の特許法は無効審判請求に対する審決の発効時間に対して明確な規定がなく、実践においては、しばしば司法審査結果の発効日を無効審判請求の審決の発効時間にしていた。したがって、特許権が有効であるかどうかは比較的長い期間内不確定の状態になっていて、特許権侵害訴訟は常に、特許行政訴訟の最終結果が出てから進行するしかなく、これにより、多くの侵害紛争の処理期間が長期化した。特許権無効審判は大変強い技術性を持っている為、専利復審委員会は特許無効案件を審理するに当たって先天的な優位性を持ち、実際的に司法審査が専利復審委員会の審決に影響できることが少ない。それで、該当規定はTRIPO協議を違反しなく、特許無効案件が司法審査を受けていると共に、出きるだけ早い段階で特許権の登録状態が確定できるし、直ちに紛争を定め、訴訟期間を短縮することに有利である。

 

 更に、今回の改訂は意図的な侵害に対する懲罰性賠償制度を増設した。即ち、意図的な特許権侵害行為に対して、行政執法機関或いは人民法院は侵害行為の経緯、規模、損害結果等の要素によって、賠償額を最大で三倍まで引き上げることができる。現行特許法の中、特許侵害賠償額は「補償性原則」を採用していて、権利人が受け取る賠償は主に権利人の実際損失を補うところに使われ、その計算方法は権利人が侵害行為から受けた実際の損失は侵害人が侵害行為から得た利益、特許ライセンス費の合理倍数及び1万元から100万元の法的賠償額である。実践から見ると「補償性原則」は権利人が侵害されることから受けた全部の損失を十分に補償することもできなく、侵害行為を十分に抑制することもできない。それで、今回の改訂はアメリカなどの国のやり方を参考に、懲罰性の賠償制度を受け入れ、目的は特許権侵害に対する抑止と打撃力を強化し、特許権利人が法律に従って自分の権利を履行することを励ましている。ただし、意図的な侵害をどう認定するか、懲罰性賠償は法定賠償額度に適用するかどうかなどの問題は更に明確にする必要がある。
 

 最後に、今回の改訂は特許管理部門に取り締まり、悪性侵害行為の制止職能を賦与した。即ち、市場秩序を乱す容疑のある特許侵害行為に対して、行政執法機関は法律に従って取り締まる権利を持ち、違法行為から得た金額の4倍以下或いは20万元以下の罰金を与える。当改訂は「商標法」などの関連法律の規定を参考し、行政執法機関の行政職権を拡大し、行政執法機関が市場秩序を維持する職能を突出することによって意図的な、頻発的な侵害と組織的な侵害等の悪意のある侵害行為を打撃することに役に立ち、より健康的な、秩序のある市場環境を作るのにも役に立ち、全社会的に良性のイノベーション雰囲気を作り出すこともできる。


 3. エピローグ
 現在、上記の改訂草案は意見募集の段階が終わり、国務院に上げられた。草案の中で、「行政執法機関が侵害賠償額の判定職能」に対して放棄或いは改訂をし、意匠権の保護期限を15年まで延ばす可能性があると言う。該当草案はまだ公開されていないため、今回の特許法の最終改訂結果を待つしかない。今回の改訂内容の多くは原則性の規定であり、順調に通過したとしても関連の実施細則或いは操作規程で細かくしたうえで、上記の規定を実践でき、その働きを本当に発揮できる。
 

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