審査意見における公知常識に関する応答
時間: 2015-11-13 アクセス数:

作者:北京康信国際特許事務所 弁理士 房嶺梅

現在、審査における特許出願の進歩性の判断では、審査員が「引用文献と公知常識を結合して考慮し、本出願のクレームに記載されている保護の求める技術案を想到できる」という判断方式で特許出願の進歩性を否定することが多いが、現行の特許法及び関連審査指南では、公知常識が明確に定義されていないため、出願人、代理人及び審査員は、「引用文献と公知常識を結合して考慮すれば、本出願のクレームに記載されている保護の求める技術案を容易に想到できるかどうか」に対して、争いがある。

以下は、公知常識に関わる審査意見に応答する方法について検討する。

(一)先ず公知常識が何かを定義する
公知常識は、中国特許審査指南(以下、「審査指南」という)第二部分第四章創造性の第3.2.1節の創造性を判断する三つの手順の(3)「保護を請求する発明がその分野の技術者にとって自明的であるかどうかを判断する」に言及されている。即ち、「以下に挙げられる状況は通常、先行技術に前述の技術的示唆が存在すると考えられる。(i)前述の区別される特徴は公知常識である。例えば、当該分野において、当該改めて確定された技術的問題を解決する通常の手段、或は教科書や参考書などで開示されたその改めて確定された技術的問題を解決すための技術的手段など。」

また、審査指南第四部分復審及び無効請求審査の第八章無効宣告手続きにおける証拠問題についての規定の第4.3節証拠の認定に、下記の通り言及されている。

「拒絶査定と前置審査意見に主張された公知常識に対して、関連技術用語辞書、技術マニュアル、教科書など当該技術分野における公知常識証拠を追加する」

審査指南の記載によると、公知常識は、当該分野における慣用手段、教科書、技術用語辞書又は技術マニュアルなどに披露された技術問題の技術手段などであることが分かる。また、公知常識は、長期の研究、生産、使用或いは生活経験で積み重ねてきたものであり、広範囲で認可されており、関連分野の全ての技術者が知った或いは知り得るものである。従って、ある技術的特徴が公知常識と認定されると、それによる技術効果も公知的なものと当然に見なされ、また当該技術的特徴を区別される特徴とする技術案も自明的であると考えられる。

(二)次に、公知常識に対応する区別される技術的特徴に対して関連陳述をする
まず、審査意見に提示された先行技術、即ち、検索報告におけるA類書類、X類書類及びY類書類により、分析・陳述をする。検索報告におけるこれらの引用文献と先行技術は、現在の当該分野における先端的或いは典型的な技術(現在、広範囲で使用或いは認可された技術案も含む)を代表する。これらの引用文献を読み、関連分析をして、出願書類にとって有利的な結論を得る。

その有利的な結論を得るために、以下の分析を行う必要がある。

第一、検索報告における上記書類には、審査意見に記載した区別される技術的特徴が開示或は暗示されているかどうかを分析する。一般的に、審査員の検索した書類に記載があれば、審査意見にも提示されるので、通常、これらの書類には区別される技術的特徴に関する記載がないと考える。

第二、これらの先行技術に記載の技術思想がほぼ同一であるかどうかを分析して判断する。同一である場合、当該先行技術に記載の技術的特徴は、当該技術分野の慣用技術手段である可能性が高く、それが当該分野の公知常識であることも認められる。なお、、「その中、限られた先行技術の技術思想が同一であっても、当該技術思想が公知常識であることを十分に証明できないと考える。公知常識というのは、広範囲で認可された技術案であり、また関連分野の全ての技術者が知った或いは知り得るものであるので、限られた公開特許文献だけで、それが当該分野の公知常識であることを証明することができない。従って、記載された上記技術的特徴が当該分野の公知常識であるかどうかを明確にするために、上記の先行技術文献に記載されている同一技術的特徴に対して、更に検索を行い、上記の先行技術文献に記載されている技術的特徴が当該分野の慣用技術手段であるかどうかを最終的に確定する必要がある。上記技術的特徴が公知常識であることを確定できれば、本出願の区別される技術的特徴が上記の分析・論証で得た当該分野の公知常識ではないことを直接に論述することができる。逆に、先行技術文献に記載されている技術的特徴が当該分野の公知常識であることを確定できない場合、引き続き以下の分析を行う。

第三、これらの先行技術文献に記載されている技術案或いは更に検索した先行技術文献が全て異なっている或いはその大部分が異なっている場合、即ち、当該分野の公知常識を確定できない場合、当該分野における関連技術問題の技術案が複数あり、また当該分野の公知常識であると認定された区別される技術的特徴も上記の関連技術問題を解決する一つの方案であることを論証できる。よって、審査意見で公知常識であると認定された区別される技術的特徴は、関連技術問題を解決する一つの技術案であるため、当該分野の公知常識ではないことを証明することができる。

次に、区別される技術的特徴が解決しようとする技術問題に対して詳しく分析し、また審査意見に提示された引用文献に関連技術問題の対応する解決方法の記載又は開示があるかどうかを判断をする。引用文献と本出願の解決しようとする技術問題が異なる場合、当該分野の技術者が対応する技術案を得る動機がない、即ち、当該技術案が当該分野の技術者にとって自明的ではないと考えられる。

また、引用文献と本出願の解決しようとする技術問題が同一である場合、引用文献と本出願の技術案を更に分析する必要がある。また、この二つ技術案が同一である場合、引用文献及び本出願における技術案に記載されている技術効果を更に分析する必要がある。一般的に、出願人は、出願書類を作成する際、各発明点の対応する技術効果を明細書に明確に記載しているため、引用文献及び本出願における技術案に記載されている技術効果を対照すれば、引用文献に関連の区別される技術的特徴に開示された技術的示唆に関する記載があるかどうかを明確に判断できる。一方、この二つの技術案が異なる場合、当該分野の技術者が、引用文献から関連技術的示唆が得て、当該区別される技術的特徴と結合することにより、本出願の技術案を得ることができないと当然に思われる。

要するに、上記の論述において、「審査意見における区別される技術的特徴が公知常識ではない、また、引用文献に基づいても、当該分野の技術者が関連動機/示唆を得て、引用文献を改善して保護を請求する技術案を得ることはできない」と明確に主張すべきである。

また、審査指南の規定により、審査員が審査意見通知書で引用した当該分野の公知常識が確実なものでなければならないため、出願人が審査員の引用した公知常識に対して異議を提起した場合、審査員は理由の説明或いは証拠の提供をすべきである。従って、審査意見に応答する際、審査員に公知常識への挙証を要求することもできる。

出所:中国知的財産雑誌 

 

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