『商標法』第四条違反「使用の目的でない悪意商標出願」の拒絶理由に対する対応策
--「商標拒絶査定不服審判の証拠に関するQ&A」の解読 第1弾
2026年1月、商標局より「商標拒絶査定不服審判の証拠に関するQ&A」(以下「Q&A」)が公布されました。本Q&Aは、商標拒絶査定不服審判において、請求人が積極的かつ包括的、そして適切な形式で有効な証拠資料を提出できるよう、証拠の形式、種類、および実質的な要件について解説したものである。
今回は、その中から『商標法』第4条違反である「使用を目的としない悪意のある商標登録出願」という拒絶理由に対する対応策と、関連する証拠のあり方について解説する。
法的根拠
商標法第四条 自然人、法人又はその他の組織が、生産経営活動において、その商品又は役務に ついて商標専用権を取得する必要がある場合には、商標局に商標登録出願をしなければな らない。使用を目的としない悪意のある商標登録出願は、拒絶されなければならない。
「商標登録出願行為の規範化に関する若干の規定」第八条 商標登録部門は、商標登録出願が商標法第四条の規定への違反に該当するか否かを判断するとき、次に掲げる要素を総合的に考慮することができる。
(一)出願人又はそれと関係のある自然人、法人、その他の組織の商標登録出願数、指定 商品の区分、商標の取引状況など
(二)出願人が所属する業界、経営状況など
(三)出願人が発効済みの行政決定又は裁定、司法判決により、過去に悪意のある商標登 録行為、他人の登録商標専用権の侵害行為があると認定されたこと
(四)登録出願する商標が、他人の一定の知名度のある商標と同一又は類似のものである こと
(五)登録出願する商標が、著名人の氏名、企業の商号、企業名称の略称若しくはその他 商業標章などと同一又は類似のものであること
(六)商標登録部門が、考慮すべきと判断するその他の要素
適用対象外
『商標審査審理ガイドライン』によれば、以下の場合には、「商標法」第四条は適用されない。
(1) 出願人が防衛目的で、登録した商標標章と同一又は類似の商標を出願する場合
(2) 現実的に見込まれる将来の業務のために、予め適量の商標登録出願をする場合
背景
外国出願人にとって、第四条違反を理由に拒絶される主なケースは下記のとおりである。
1. 出願件数が過多である場合
例:

上記の商標審査意見通知書の内容によれば、出願人が合計出願件数は594件で、その中に審査中の商標出願は60件があり、指定商品は26の区分をカバーしています。出願人の営業範囲と関連ない区分において多件商標を出願する行為が、「使用を目的としない悪意のある商標出願」に該当する。
2. 出願商標の区分が出願人の業界・事業内容とは関係ない場合
例:

上記商標の出願人はアパレル会社であるにもかかわらず、指定商品が第1類の「化学品」となっています。審査意見通知書の内容によれば、審査官が「化学品」などの商品における出願商標の使用意図の説明と証拠の提出を求めている。
対応策
上記『商標審査審理ガイドライン』に規定されている適用対象外に基づいて、第4条違反を理由に拒絶された場合、出願人が以下の2点を主軸に反論し、関連証拠を提出することが可能である。
一、防衛目的の立証
出願商標が、自社の登録商標を第三者による複製・模倣・冒認から守るための「防衛出願」であることを主張する。
二、使用目的の立証
出願商標が実際に使用される予定であること、または商標を出願する必要性があることを証明するために、下記証拠を提出することができる。
1. 出願人の業種属性
例えば、出願人がゲーム会社である場合、ゲームが所属している第9類(ソフトウェア)、第41類(オンラインゲームの提供)のほか、第16類(文房具)、第18類(バーグ類)、第25類(服装)などの派生商品についても使用可能性が高いである。
当該主張を証明するために、関連業界の研究報告などの証拠を提出することができます。「Q&A」には、伽馬数据(ガンマデータ)が2024年7月に発表した「中国ゲームIP派生商品の成長の現状および展望に関する研究報告」が例示されている。
2. 出願人の規模・経営能力・経営状況
出願人の事業規模がその出願商標の件数と見合うものであることを証明できる証拠を提出します。例えば、出願人の企業の年報、納税状況など。
3. 出願人の使用意図
出願人の使用意図を証明するために、下記のような資料が有効である。
上記証拠について、出願商標が表示されていること、及び使用商品・役務は指定商品・役務と同一或いは類似であることが必要となる。指定商品・役務とは関連がない経営活動や公益活動は、出願商標の指定商品についての使用意図の証明にはならない。
近年、中国商標局は、第四条違反の商標出願に対する取り締まりを強化しており、外国企業にとっても重要な課題となっている。
しかし、本Q&Aで示された通り、適切な証拠を揃えることで「正当な防衛」や「将来の事業展開」を認めさせる道は開かれている。審査意見、あるいは拒絶理由通知への対応時には、単なる主張だけでなく、事業計画や準備状況を裏付ける客観的な証拠をいかに整理して提示できるかが、登録可否を左右する鍵となる。