2022~2023年度商標代理の典型的案例 第38050473号図形商標無効審判請求事件
時間: 2025-04-01 アクセス数:

2024年末、中華商標協会は「2022~2023年度商標代理典型的案例」を発表し、当所が代理した第38050473号図形商標無効審判事件が選定されました。本事件の概要をご紹介いたします。

 

【事件の基本情報】

係争商標:第38050473号「典型案例1.jpg」商標
先行商標権:登録第21553865号、第31549629号「典型案例2.jpg」商標
先行著作権:美術作品「典型案例3.jpg
請求人:ブルガリ社
被請求人:劉氏

 

【事件の経緯】

劉氏(本件被請求人)は、2019年5月8日に国家知識産権局へ第38050473号「典型案例4.jpg」商標「以下、係争商標という」を出願し、2022年5月13日に登録された。

これに対して、ブルガリ社(本件請求人)は当所を委託し、2022年6月28日、係争商標がその先願の第21553865号商標(以下、引用商標1という)および第31549629号商標(以下、引用商標2という)と類似商品における類似商標に該当すること、及びその先に著作権を有する蛇頭デザインの著作権を侵害していることを理由に、無効審判を請求した。

 

劉氏は、係争商標には識別力を有し『商標法』の規定に合致していること、引用商標と同一または類似商品における類似商標に該当しないこと、さらに一定期間の使用を通じて一定の「商誉」を蓄積されていることを反論し、係争商標の登録維持を求めた。

 

【審決結果】

 

国家知識産権局は2023年12月12日、係争商標を無効宣告とする審決を下した。審決において認定された事実は以下のとおりである。

 

1、係争商標は引用商標1と構図要素や全体外観などにおいて類似しており、類似商標になっている。両商標が市場に共存する場合、消費者の混同・誤認を招く恐れがあり、『商標法』第30条にいう同一または類似商品における類似商標に該当する。

2、請求人の蛇頭デザインは、創作性及び一定の表現形式を有する知的成果物であり、『中華人民共和国著作権法』が保護する美術作品に該当する。請求人が提出した証拠により、係争商標の出願日の前に、請求人がすでに『L'Officiel』『紅秀』『マリクレール・チャイナ』『ELLE中国版』『VOGUE中国版』『Harper's BAZAAR中国版』などのファッション雑誌で当該作品を表示した商品の宣伝を行っていたことが証明されている。これらの宣伝活動の証拠及び係争商標の出願日の前に請求人が当該蛇頭デザイン作品を使用した商品の販売記録に基づき、反証がない限り、請求人が係争商標の出願日の前に当該蛇頭デザイン作品の著作権を有していたか、または当該作品の利害関係者であったと認められる。さらに、請求人が提出した証拠は、請求人が係争商標の出願日の前に当該蛇頭デザイン作品を鞄等の商品で宣伝・使用していた事実を証明しており、被請求人の陳述によれば、被請求人は過去に鞄商品の経営を行っていたことが確認される。双方の営業範囲には重複していることから、被請求人が当該蛇頭デザイン作品に接触する可能性があったと推認される。係争商標と当該蛇頭デザイン作品はいずれも蛇頭をモチーフとした図形であり、その全体的な輪郭、基本構成、視覚効果等の表現方式が類似しており、実質的な類似になっている。したがって、係争商標の登録は、『商標法』第32条に規定される「先に存在する他人の権利(著作権)への侵害」に該当するものと認められる。

 

【典型案例としての意義】

 

本件は、先行商標権と先行著作権の二重保護を実現した事例である。図形デザインを含む商標については、請求人は商標権に基づく保護のみならず、著作権に基づく保護も追求し得ることが示された。本事件では、ブルガリ社の有する先行商標権及び先行著作権が保護されるとともに、消費者が誤認購入する可能性が防止されたことから、消費者の利益保護も図られたと言える。


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