実用新案の進歩性判断における類似・関連技術分野の判断
時間: 2024-10-31 アクセス数:

——(2022)最高法知行終41号


【裁判要旨】実用新案の技術分野を判断する際には、特許請求の範囲に限定された技術案を対象に、発明の名称を出発点として、技術案の機能や用途を総合的に考慮する必要がある。技術案の機能や用途に類似する技術分野は、類似技術分野となる。実用新案の最も近い既存技術と区別的する技術的特徴が適用される技術分野は関連技術分野となる。


【キーワード】行政 実用新案権 無効 進歩性 類似技術分野 関連技術分野

【基本経緯】陳氏は、特許番号201620169331.2の「アルミニウムゲートCMOS二層金属配線のレイアウト構造」という実用新案権の権利者である。2020 年 7 月 15 日、H 社は当該実用新案に対する無効請求を提出した。これについて、国家知識産権局は 2021 年 1 月 4 日に無効請求審査決定第 47707 号を下し、当該実用新案が有効であると宣告した。H社はこれを不服として一審法院に訴訟を提起し、決定を取り消し、国家知識産権局に新たな決定を下すよう命じるよう請求した。一審法院は2021年9月22日、H社の提訴を棄却する行政判決を下した。さらに、H社が控訴し、最高人民法院は2022年12月29日に(2022年)最高法知行終41号行政判決を下した。1.一審法院の行政判決を取り消す。2.国家知識産権局の第 47707 号無効請求審査決定を取り消す。3. 国家知識産権局が、H社が提出した特許番号201620169331.2の「アルミニウムゲートCMOS二層金属配線のレイアウト構造」という実用新案に対する無効審判請求に対して、改めて審査決定を下す。


【裁判意見】発効した判決には次のような意見が記載された。技術分野の判断は、特許請求の範囲に限定された内容に基づくべきであり、一般的に発明の名称に基づいて技術案によって実現される技術的機能および用途とを結びつけて判断すべきである。類似技術分野とは、一般的に実用新案製品の機能や具体的な用途に類似する分野を指すが、関連技術分野とは、実用新案の最も近い既存技術と区別的する技術的特徴が適用される機能分野を指す。


本件実用新案の請求項1には、従来技術における単層金属アルミニウムゲートCMOSプロセス設計における製品集積度の低さの問題を解決しようとする、アルミニウムゲートCMOS二層金属配線のレイアウト構造が記載されている。上記問題を解決するために、本件実用新案の請求項1に記載された技術手段は、主に次のとおりである。既存の単層アルミニウムゲートCMOS金属配線構造(入力および出力PAD、電源およびグランドPAD)のボンディングポイントを、第1層金属構造上に第2層金属構造として配置しており、つまり、アルミニウムゲートCMOS構造上に設置し、アルミニウムゲートCMOSの集積度を向上させる。本特許の請求項1のレイアウト構造の進歩性を評価した際、一審判決と被告決定はともに、シリコンゲートとアルミニウムゲートというゲート材料の違いを根拠として、シリコンゲートCMOS集積回路とアルミニウムゲートCMOS集積回路は異なる技術分野に属すると考えていた。したがって、2 つの技術的解決策は実質的に異なり、本件実用新案の請求項 1 は進歩性を有すると判断した。本件実用新案の請求項 1 と証拠 1、2、3、5、6、および 7 を区別する技術的特徴は、証拠 1、2、3、5、6、および 7 はすべてシリコンゲート CMOS 金属配線構造を開示しているが、「アルミフェンス」に関するものなら何でも開示していない。半導体産業の初期には、CMOS のゲート材料として金属アルミニウムが一般的に使用されていたが、それ以来、シリコンがゲート材料として広く使用されている。ゲート材料のアルミニウムからシリコンへの開発は確かに半導体デバイスの進歩であるが、アルミニウムゲートとシリコンゲートの違いは、本件実用新案で採用されている二層金属配線レイアウト構造の技術的解決策には実質的な影響を及ぼさないため、ゲート材料の選択は本件実用新案の技術的貢献とみなされるべきではない。したがって、本件実用新案はシリコンゲートCMOS二層金属配線構造と同様の機能、同様の用途を有しており、またCMOS集積度向上の原理は基本的に同じである。よって、シリコンゲートCMOS二層金属配線構造は、本件実用新案と同一または類似の技術分野とみなすことができる。被告決定及び一審判決は、本件実用新案の進歩性を評価した際に、シリコンゲートCMOS二層金属配線構造を考慮しておらず、法の適用上の誤りがある。


【関連資料】「中華人民共和国特許法」第22条第3項(2009年10月1日から施行)


出所:最高人民法院知的産権法廷

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