(2022)最高法知行終255号 「中国で完成した発明」の判断
時間: 2024-09-29 アクセス数:

最近、最高人民法院知的財産法院は、血液ガス生化学分析装置技術の特許無効行政紛争にの控訴審を結審した。当該案件は特許法における「中国で完成した発明」の判断、秘密保持審査義務の条件、審査根拠などが問題に関わった。

 

こ本件において、関連アメリカ会社が「体外医療診断装置及びシステム」という特許の特許権者である。万某公司は、本件特許権に対する無効審判を提起し、「当該特許の技術案が広東省のある科学研究プロジェクトの成果であり、当該アメリカ会社が機密審査を申請しらずに、当該中国で完成した発明を外国へ特許を出願した。また、本件特許は当該アメリカ会社が同様な技術案を中国で出願したものであり、登録されないべきである」と主張した。国家知識産権局は当該無効審判請求に対して、次のように審査決定(以下、訴訟決定という)を下した。本件特許の実質的な内容は、中国での科学研究プロジェクトの開始よりも早い2010年上半期に海外で完了し、当該プロジェクトは関連技術案の産業化プロセスである。当事者が提出した証拠によれば、本件特許に係る発明が中国で完成されたことを確認することができなかったため、本件特許権が有効である。万某公司は、これを不服として北京知識産権法院に行政訴訟を提起したが、一審判決は同社の請求を棄却した。さらに、万某公司は不服として、最高人民法院に控訴した。


最高人民法院は次のように判示した。

 

2008 年に改正された特許法第 20 条第 1 項には、「中国で完成した発明または実用新案について外国で特許を出願する組織または個人は、その旨を国務院特許管理部門に報告しなければならない。秘密保持審査の手続き、期限等は国務院の規定に従って実施する。」と規定されている。また、第4項には、「本条第1項の規定に違反して外国で特許出願した発明または実用新案について、中国で特許出願した場合、特許権は付与されない」と規定している。2010 年に改正された特許法実施細則第 8 条第 1 項には、「特許法第 20 条に規定する中国で完成した発明または実用新案とは、技術案の実質的内容が中国で完成された発明または実用新案を指す。」と規定されている。上記の規定によれば、特許出願人に秘密保持審査を申請する義務があるかどうかは、技術案の実質的な内容が中国で完成しているかどうかによって決まる。

 

既に登録された特許が特許法の秘密保持審査規定の違反により無効とすべきであるかどうかを判断する場合は、中国より先に外国で出願された特許出願の技術案の実質的な内容が中国で完成されたかどうかについて審査すべきである。したがって、外国に出願された特許出願文献に基づいて審査することが原則となる。但し、中国特許出願と外国特許出願の技術案が実質的に同一であることが確認できる場合には、中国特許出願文献に基づいて審査することができる。


技術案の実質的内容の完成地の判断は、案件証拠に基づいて、技術案の形成過程、技術案の実質的内容が完了したときの発明者の所在地などを審査し 、さらに当該分野の技術研究開発ルールに基づき、総合的に判断すべきである。本件では、当該特許の発明者がやり取りした電子メールに記録された技術内容に基づいて、広東省の科学研究プロジェクトに記録されたプロジェクトの背景やプロジェクトの進捗状況と組み合わせ、当該分野の技術研究開発及び産業化ルールにより、本件特許の技術案の実質的な内容は、広東省の科学研究プロジェクトが立てられた時点に既に完成され、当該プロジェクトは、関連技術案の産業化プロセスであるはずである。本件証拠は、本件特許の技術案の実質的な内容が中国で完成されたことを証明するには、不十分である。


よって、本件控訴が棄却され、原審判決は維持された。


本件は、法律に従って中国と外国の主体の技術的成果を平等に保護するという中国法院の裁定哲学を反映しており、出願人の正当な権利と利益を効果的に保護し、中外の科学技術イノベーション協力を促進することは積極的な意義がある。


出所:最高人民法院知的産権法廷


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