技術的偏見を克服するための書き方及び反論方式について
時間: 2023-09-25 于安東 アクセス数:

 もし発明者が技術的偏見を克服し、当該技術的偏見によって放棄された技術的手段を採用して技術課題を解決したとすれば、この発明は突出した実質的特徴と顕著な進歩を有し、進歩性を具備している。しかし、特許出願及び審査の実践において、技術的偏見に対する判断には難点がある。本文は、このような出願に対して、書き方及び反論方式のアドバイスを提供する。

 

適用条文

 『特許審査指南』第二部第二章2.1.2 偏見を克服した発明又は実用新案に対しては、明細書において、当該発明又は実用新案が偏見を如何に克服したかについて解説すると同時に、新しい技術方案と偏見との差異及び偏見を克服するための技術方案についても解説する。

 

 『特許審査指南』第二部第四章5.2 技術的偏見とは、ある期間内、又はある技術分野に於いて技術者が、ある技術課題に対して普遍的に存在する先入観により応用が不可能と思い込み、研究開発の阻害となった考えをいう。もし発明者がこのような技術的偏見を克服し、当該技術的偏見によって放棄された技術的手段を採用して技術課題を解決したとすれば、この発明は突出した実質的特徴と顕著な進歩を有し、進歩性を具備している。

 

 『特許審査指南』第二部第四章6.4 発明が進歩性を具備しているか否かは、保護をもとめようとする発明に対していうことである。従って、発明の進歩性に関する判断は、請求項で特定された技術方案に対して行わなければならない。従来技術に貢献した発明の技術的特徴、例えば、発明に予想できない技術効果をもたらした技術的特徴、或いは技術的偏見を克服したことを示す技術的特徴を請求項に記載しなければならない。そうでなければ、明細書に記載されていても、発明の進歩性を評価する場合には考慮しないのである。また、進歩性の判断は、請求項に特定された技術方案の全体に対して評価しなければならず、即ち、技術方案が進歩性を具備しているか否かを評価することであり、ある技術的特徴が進歩性を具備しているか否かを評価することではない。

 

 『特許審査指南』における上記した規定によれば、「技術的偏見を克服」することは、発明の進歩性を判断する際に考慮すべきその他の要素の一つである。出願は、「技術的偏見を克服」することに該当する場合、審査官に考慮されるべきであり、発明が進歩性を具備しないという結論を簡単に出すべきではない。

 

 具体的には、このような出願を準備する場合、下記の点に留意する必要がある。

 

 (1)背景技術において、先行技術における解決しようとされる課題及び既存の技術構想などの客観的事実を詳しく記載し、偏見が生じる要因、特に先行技術において本発明が考慮されない要因を説明する。

 

 (2)本発明の技術案を具体的に開示して、技術的偏見を克服するために採用される具体的な手段を記載する。

 

 (3)必要な証拠を提供する。例えば、『特許審査指南』第二部第四章5.2に例について、「[例]電動機の方向切換器と電気ブラシとの間の境界面が、通常、滑らかであれば、であるほど接触が良く、電流の消耗も少ないと考えられていたが、方向切換器の表面に一定の粗さの細紋を作った結果、電流の消耗がより少なく、効果的となった場合、当該発明は技術的偏見を克服したため、進歩性を具備している。」と記載されている。

 

 (4)特許請求の範囲において、技術的偏見を克服していることを表現する技術的特徴を特定する。

 

 しかしながら、実際に、上記した対処だけで審査官に認められにくい技術的偏見がある。

 

 例えば、筆者が最近に対応している1件の出願は、ヒト用経口医薬の用途のためのA化合物に係わる。出願人は、従来にA化合物が経口投与に適しないと思われていることを提示するとともに、ウサギに対する経口投与の実験でA化合物の効果が良くなかった証拠を提供している。

 

 しかしながら、審査官は、このような一般式の化合物及び同じタイプの化合物Bが経口医薬に用いられる先行技術を検索できたため、これらの先行技術から十分な教示が提示され、ウサギに対する実験がごくまれな現象として、当業者が他の実験モデルでA化合物の試みをすることに障害しないと認定している。

 

 この場合、以下のような応答対策が出願人の参考になると考えている。

 

 (1)本分野における関連する研究者の研究上の進展及び観点をまとめて、先行技術において、A化合物がヒト用の経口医薬の用途に用いられることが開示されていないことを示す。

 

 (2)本分野の技術の発展におけるウサギに対する実験の証拠の重要な影響を立証する。例えば、本分野における他の研究者が当該証拠的文献に対する引用及び観点をまとめて提示し、当該証拠的文献の作者が本分野における有名な学者であることと、当該証拠的文献を収録する刊行物が本分野の重要なものであることと、などを証明する。

 

 (3)ウサギに対する実験でA化合物の効果が良くなかった原因を分析して、当該原因が前に気付かれなかったことを示す。

 

 (4)本発明の成果が業界で評判になった証拠を提供する。このような証拠は、当該発明のあとのものであるが、本分野に対する貢献を示すことができる。

 

 「技術的偏見を克服する」ことは、審査官に考慮されるべきであるが、技術的偏見に対する挙証責任が出願人により多く提供される場合がある。このような発明に対して、関連する技術の発展の情報が整理されたい。開示に適する内容を明細書に詳しく記載してもよい。また、審査官の参考のために、反論において、研究者または学者による「宣誓書」を提示してもよい。

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