出願人は、なるべく早く専利権を取得して権利行使するために、通常、早期公開を請求するか、或いは、PPH制度を活用します。国家知識産権局が、2017年8月1日より、第76号局令<専利優先審査管理弁法>を施行した以来、出願人は、この弁法を利用して専利出願の審査を迅速化させるようになります。この弁法には、以下のことが規定されています。
「第十条 国家知識産権局が優先審査を行うことに同意した場合、同意の日から次に掲げる期限までに審査の結果を出さなければならない。
(一) 発明専利出願は、45日以内に第一回の審査意見通知書を発行し、且つ、1年以内に審査の結果を出す。
(二) 実用新案及び意匠の専利出願は、2ヶ月以内に審査の結果を出す。
(三) 専利復審案件は、7ヶ月以内に審査の結果を出す。
(四) 発明及び実用新案の専利権無効宣告案件は、5ヶ月以内に審査の結果を出し、意匠の専利権無効宣告案件は、4ヶ月以内に審査の結果を出す。」
このように、実体審査段階に入った発明専利出願の場合、この「弁法」を利用すると、通常、2-3年の審査周期を1年に短縮させることができます。但し、優先審査を利用する際に、以下のようなデメリットがあります。
1.自発補正ができなくなる可能性
<専利優先審査管理弁法>には、
「第十三条 優先審査を行う専利復審案件又は無効宣告案件に、次に掲げる事由のうちのいずれかがある場合、専利復審委員会は、優先審査の手続きを停止し、通常の手続きにより処理するとともに、即時に優先審査請求人に通知することができる。
…
(三)優先審査請求が同意された後に、専利権者が削除以外の方式で特許請求の範囲を補正した場合。
…」と、規定されました。
発明専利出願の場合、優先審査請求を提出するとともに、案件の「発明専利出願が実体審査段階に入る通知書」及び「実体審査課金レシート」を提出する必要があります。発明専利出願の優先審査請求は、実体審査段階に入った後に提出すべきです。周知のとおり、実体審査に入った3ヶ月以内に、出願人は、専利法実施細則第51条に従って自発的に補正を行うことができます。但し、優先審査を請求すると、2-4週間で、案件の優先審査通知書を受け取る可能性があり、優先審査手続きに入ると、45日以内に、第一回の審査意見通知書が発行されるので、出願人は、優先審査を請求した後に、自発補正を行いたい場合、優先審査が許可されたので、削除以外の方式で特許請求の範囲を補正できなくなるか、或いは、第一回の審査意見通知書が発行されたので、自発補正ができなくなる可能性があります。従って、出願人は、優先審査を請求すると共に、自発補正も希望している場合、自発補正を行った後に、優先審査を請求することを提案します。
2.OA応答の準備時間の短縮
<専利優先審査管理弁法>には、
「第十一条 優先審査を行う専利出願について、出願人は、できるだけ早く意見陳述又は補正を行わなければならない。出願人が発明専利の審査意見通知書を応答する期限は、通知書の発送日から2ヶ月とし、実用新案及び意匠専利の審査意見通知書を応答する期限は、通知書の発送日から15日とする。」と、規定されました。
出願人が、審査意見通知書を応答するときに、専利出願書類を補正したり、十分且つ適切な反論をすることは、専利権を取得するために、もっとも重要なことです。但し、優先審査段階において、審査意見通知書を応答する期間は、大幅に短縮されます。発明専利出願の場合、審査意見通知書が発行された後に、発送日から2ヶ月以内に応答しなければなりません。通常の第一回審査意見通知書の応答(15日+4ヶ月)と比べて、出願人の準備時間は、半分ぐらい、短縮されます。したがって、優先審査の案件について、時間を適切に調整し、応答期限内に、十分な準備を行って、適切に応答することを提案します。
化学出願について、2017年に改正された<専利審査指南>における第3.5節には、実験データの補完に関する規定が追加されました。具体的には、「出願日後に補完する実験データについて、審査官はそれを審査すべきであり、補完された実験データにより証明された技術的効果は、当業者が特許出願に開示されたから得られることでなければならない」と規定しました。従って、化学出願の出願人は、審査意見通知書を応答する際に、審査官に検索された引用文献に対して、比較用の実験データを補完したい場合、実験が複雑であれば、2ヶ月の応答期間は、明らかに十分ではないです。
よって、出願人は、優先審査を請求すると同時に、出願の実際の状況(例えば、技術分野など)を十分に考慮して、合理的な計画を立てるべきです。例えば、化学、バイオテクノロジ分野の出願について、出願人は、必要に応じて、先行技術の調査を事前に行い、その調査結果に基づき、審査意見通知書応答の準備として、比較用の実験データを予め用意してもいいです。
3.早く拒絶される可能性がある
<専利優先審査管理弁法>には、発明専利出願案件は、一年以内に、審理の結果を出さなければならないと、規定されているため、審査官は、複数回の審査意見通知書を発行した後に、依然として、当該出願に専利権を付与する見込みがないと考えている場合、一年以内に審査の結果を出すために、通常、当該出願を直接拒絶します。非優先審査の出願については、審査期間に関する明確な制限がないので、審査官は、複数回の審査意見通知書又は電話連絡などのような方式を利用して、出願における問題点について、出願人と検討する余裕があり、比較的に長い考慮及び補正の時間を出願人に与えます。
よって、通常の出願に対して、優先審査の出願について、出願人は、その応答対策を慎重に考慮すべきです。出願人は、審査意見通知書を応答する際に、十分に反論するか、或いは、適切に補正できない場合、審査官は、一年以内に審査結果を出すために、出願を直接拒絶する可能性があります。従って、出願人は、優先審査の出願を優先的に対応して、審査意見通知書を受け取ったら、審査官に指摘された欠陥を全面的に検討し、応答期限内で、十分に反論して、適切に補正することを提案します。
なお、出願人は、長い権利期間を希望するか、或いは、一つの出願に基づいて、分割出願を提出したい場合、優先審査は、好ましくないです。
上述のように、出願人は、早く専利権を取得するために、優先審査を利用する場合、出願の実際の状況に基づいて、審査期間の短縮だけではなく、全面的に考慮しながら、最適な出願戦略を取るべきです。