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禁反言原則と特許権侵害訴訟におけるクレーム解釈規則の適用
時間: 2021-08-30 厳晟斉 アクセス数:

禁反言原則は民法に記載の信義誠実原則の一種であり、特許権者が侵害訴訟で特許保護範囲を過度的に広めることを防止するために、侵害判定する際の均等論の適用を制限する手段である[1]

 

なお、禁反言原則の法律基礎は最高人民法院が公布した下記二つの法律解釈の条項である。

 

「最高人民法院による特許権侵害をめぐる係争案件の審理における法律適用の若干問題に関する解釈」(略称:司法解釈(一))

 

第6条 特許権の付与、若しくは無効宣告手続において、特許出願人や特許権者が特許請求の範囲や明細書の修正、若しくは意見陳述を通して放棄した技術方案を、 権利者が特許権侵害をめぐる紛争案件で改めて特許権の保護範囲に取り入れた場合には、人民法院はこれを支持しない。


「最高人民法院による特許権侵害をめぐる係争案件の審理における法律適用の若干問題に関する解釈(二)」(略称:司法解釈(二))

 

当所呉貴明氏が執筆した「特許権侵害紛争における特許無効戦略」では、「訴えられた一方が特許無効審判を利用して、原告にその特許の保護範囲を狭くさせ、そして、禁反言の原則を主張して勝訴する」という考え方が紹介された。

 

次に、二つの最高人民法院判例を挙げて、特許権授権、権利確定の手続きにおいて、特許請求の範囲の補正により一部の保護範囲の放棄と看做される状況、及び意見陳述により一部の保護範囲の放棄と看做される状況をそれぞれ紹介する。


第 13 条 特許出願人、特許権者が特許権付与・権利確認の手続きにおいて、特許請求の範囲、明細書及び図面の減縮補正又は陳述が明らかに否定されたことを権利者が証明した場合、人民法院は、当該補正又は陳述が技術案の放棄を導いていないことを認定しなければならない。


当所呉貴明氏が執筆した「特許権侵害訴訟における特許無効戦略の考え方」では、「訴えられた一方が特許無効審判を利用して、原告にその特許の保護範囲を狭くさせ、そして、禁反言の原則を主張して勝訴する」という考え方が紹介された。

 

次に、二つの最高人民法院判例を挙げて、特許権授権、権利確定の手続きにおいて、特許請求の範囲の補正により一部の保護範囲の放棄と看做される状況、及び意見陳述により一部の保護範囲の放棄と看做される状況をそれぞれ紹介する。


(1)特許請求の範囲の補正により一部の保護範囲の放棄と看做される状況

澳諾(中国)製薬有限公司と湖北午時薬行股份有限公司との特許権侵害訴訟[2]において、原告特許の公開特許公報には、「可溶性カルシウムはグルコン酸カルシウム、塩化カルシウム、乳酸カルシウム、炭酸カルシウムまたは活性カルシウムである」ことが明確に記載されている。これにより、グルコン酸カルシウムと活性カルシウムは、可溶性カルシウムであることがわかる。


イ号製品に使用されているのはグルコン酸カルシウムである。特許権者の澳諾(中国)製薬有限公司は、サポート要件違反の問題を解決するために、審査官の意見に基づいて特許請求の範囲を補正した。即ち、独立請求項に記載の「可溶性カルシウム」を「活性カルシウム」に変更した。したがって、「原告が特許出願審査の際に、『グルコン酸カルシウム』を含む技術的特徴を既に放棄したため、イ号製品に使用された『グルコン酸カルシウム』と『活性カルシウム』とが均等な技術的特徴にならない。よって、イ号製品が原告特許の保護範囲外である。」と最高人民法院は認定した。


(2)意見陳述書により一部の保護範囲の放棄と看做される状況

アモイ実正電子科技有限公司と楽金電子(天津)電器有限公司などとの実用新案権無効審判、実用新案権侵害訴訟[3]において、最高人民法院知的財産権法廷は、同一の特許権に関わる行政権利確定案件と権利侵害訴訟を同時に審理することを初めて試した。

 

その中、一つの争点として「前記サーマルエレメントはプリント基板上の一つの過熱保護ポイントに固定されており、前記過熱保護ポイントは前記ブリッジスタックラジエーターと前記プリント基板の接合点の反対側にある。」ことである。

 

イ号製品のサーマルエレメントは前記ブリッジスタックラジエーターと前記プリント基板の接合点の反対側ではなく、その反対側から13mmほど離れた位置に設けられている。無効審判において、特許権者の実正電子科技有限公司は「配合処は連接処である」と陳述した。


最高人民法院が開いた法廷審理前の会議において、特許権者は、イ号製品を自社特許権の保護範囲内にするために、「配合処はプリント基板におけるブリッジスタックラジエーター全体の投影領域である」と言い直した。しかし、最高人民法院は、イ号製品のサーマルエレメントの位置と原告特許のサーマルエレメントの位置とが均等になるか否かを判断する際に、特許権者が上記法廷審理前の会議で言い直した解釈を認めず、無効審判時の陳述に基づいて保護範囲を判定した。

 

最終的に、イ号製品のサーマルエレメントの位置と原告特許のサーマルエレメントの位置とが均等な技術的特徴にならなく、イ号製品が原告特許の保護範囲外であると認定した。


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禁反言原則は、均等侵害の認定に対する請求項解釈の影響の具体的な現れである。

 

請求項の解釈について、司法解釈(二)第6条第1項には、「人民法院は、本案に係る特許と分割出願の関係があるその他の特許及びその特許審査書類、発効した特許権付与・権利確認の裁判文書を活用し、本案に係る特許の請求項を解釈することができる。」と規定されている。

 

即ち、原告特許と分割出願の関係があるその他の特許及びその特許出願審査書類を原告特許の請求項の解釈に用いることができる。上記判例から見ると、最高人民法院は請求項の解釈に用いる「内部証拠」の範囲を広めて解釈している。

 

また、最高人民法院の「内部証拠」の境界に対する柔軟な態度を反映する判例はまだまだ複数ある。


ダイソン社と蘇州索発電機有限公司との特許権侵害訴訟[4]の一審において、索発電機有限公司は、原告特許と同一の優先権を享有するそのたの特許の審査包袋を提出した。

 

本件二審において、最高人民法院は、「当該ファミリー特許は分割出願ではないので、司法解釈(二)第6条の規定を適用できない。但し、当該ファミリー特許と原告特許とは緊密に関連しているので、このファミリー特許の実体審査における陳述を原告の請求項の解釈に用いることができる。」と認定した。


邱則有専利戦略企画有限公司と北京当方京寧建材科技有限公司等との特許権侵害訴訟[5]において、最高人民法院は、司法解釈(二)第6条第1項により、特許権者の同時期に出願したその他の関連特許の明細書を結び付て、原告特許の請求項を解釈することができる。

 

無錫海斯凱爾医学技術有限公司と弾性測量体系弾性推動公司との特許権侵害訴訟[6]において、最高人民法院は、特許権者の関連会社の後願特許の明細書に記載の内容を用いて原告特許における「同時観察」の技術的特徴を解釈した。


前記の判例において、最高人民法院は、それぞれ原告特許と同一の優先権を有するその他の特許の審査包袋、特許権者の同時期に出願したその他の関連特許の明細書、特許権者の関連会社の後願特許の明細書を使用して原告特許の請求項を解釈した。

 

訴訟で訴えられた一方は、上記の請求項の解釈に用いられる証拠を了解しておき、請求項の解釈により原告特許の保護範囲を狭くすることで、禁反言原則と同じ効果に達することが考えられる。


参考文献

[1]北京高級人民法院知的財産権法廷 「特許権侵害判定指南(2017)」の理解と適用

[2](2009)民提字第20号民事判決書

[3](2019)最高法知民終366号民事判決書

[4](2017)最高法民申1461号民事裁決書

[5](2018)最高法民5191号民事裁決書

[6](2019)最高法知民終21号民事判決書

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