請求項における技術用語について
時間: 2021-05-06 劉彬彬 アクセス数:

1.はじめに

専利権は、権利者又はその譲受人が、特定の発明について一定期間内に法に依拠して独占的に実施する権利であり、知的財産権の一種である。請求項は、専利権の権利を確定する際に、重要な役割を果たしている。<専利法>の第26条第4項には、「請求項は、明細書に基づいて、専利保護を求めようとする範囲を明確、簡潔に限定しなければならない」と規定されている。請求項が不明確であることは、専利出願の拒絶又は専利権の無効の理由となる。また、<最高人民法院による専利権をめぐる紛争案件の審理における法律適用の若干問題に関する解釈>には、「人民法院は、属する技術分野の技術者が特許請求の範囲、明細書及び図面を閲覧してから解釈する通常の意味により請求項の表現を確定しなければならない。請求項の表現が明細書及び図面において明らかに定義され、又は説明されているときは、それに従って確定する。前項の規定に従っては確定することができないときは、属する技術分野の技術者が通常用いる技術事典、技術マニュアル、参考書、教科書、国家又は業界の技術標準と、当業者の通常の理解等を勘案して確定することができる」、と規定されている。


このように、請求項には、不明確な用語があると、出願が拒絶されるか、専利権が付与された後に、無効にされる可能性があるだけではなく、その後の権利侵害の判定に重大な影響を与える場合もある。


2.請求項における技術用語について

請求項における技術用語は、一般的には、当該用語が属する当該技術分野の通常の意味と解釈する。請求項における技術用語は、出願人の造語である場合、或いは、出願人により明細書又は専利請求の範囲において、通常の意味と異なる意味に定義されたものである場合、通常、当業者が請求項の記載に基づいてその保護範囲を明確に理解できるように、明細書における当該用語の定義に基づいて請求項を補正することを出願人に求める。


例えば、ある請求項には、「希ガスが封入されたバルブ」という記載があるが、明細書には、「希ガスは、ヘリウム、ネオン、窒素又は二酸化炭素である」と定義された。但し、化学分野において、希ガスは、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドンの6元素を総称するものであるというような明確な意味がある。ここで、明細書に定義された「希ガス」の意味は当該技術分野の通常の意味とは、異なっているので、請求項の保護範囲は、不明確となった。出願人は、請求項に記載の「希ガス」を「ヘリウム、ネオン、窒素又は二酸化炭素」に補正すべきである。


また、「柏万清 vs 成都難尋物品マーケティングサービスセンターの実用新案専利権侵害紛争案件」の判決には、請求項において、意味が不明確な用語を使用することによってもたらされる深刻な結果がさらに強調された。つまり、「専利権の保護範囲は、明確でなければならない。実用新案専利権の請求項の記載には、明確な瑕疵がある場合、本件実用新案の明細書、図面、当該技術分野の公知常識及び関連する従来技術に基づいて、請求項における技術用語の具体的な意味を理解できなくなり、専利権の保護範囲が不明確となったので、被疑侵害製品に係わる技術と実質的に対比することができない。よって、被疑侵害製品に係わる技術は、権利侵害が成立しない」。具体的には、本件に係る専利権の請求項には、「高透磁率」が記載されたが、「透磁率」について、「絶対透磁率」、「比透磁率」があって、また、具体的な条件に応じて、初透磁率μi、最大透磁率μmなどの概念もある。異なる概念である場合、その計算方法も異なっている。透磁率は定数ではなく、磁場強度が変化すると透磁率も変化する。本件に係る専利権の請求項及び明細書には、「高透磁率」の具体的な範囲又は透磁率を計算する際の客観的な条件が全く記載されず、専利権者は、当業者にとって、「高透磁率」の意味又は範囲について、統一的な認識があることを証明できる証拠も提供できなかった。このように、請求項に記載の「高透磁率」という用語の具体的な意味又は範囲を確定できないので、当該専利の保護範囲を確実に確定できなくなった。よって、被疑侵害製品に係わる技術と実質的に対比することができない。よって、被疑侵害製品に係わる技術は、権利侵害が成立しない。


3.まとめ

<専利審査指南>の規定によると、専利権の保護範囲は、請求項に基づいて確定すべきであり、請求項は、専利の保護範囲を明確、簡潔に限定しなければならない。請求項が明確であるか否かを判断する際に、請求項における技術用語の意味により、保護範囲が不明確となる可能性があるかを注目すべきである。ある技術用語について、もし、出願の技術分野と当該技術分野の従来の技術状況に基づいて、その意味を確定できない場合、弁理士は、請求項の保護範囲を明確に限定するために、できるだけ、このような用語の使用を避けるか、或いは、明細書に当該用語を明確的に定義するように、出願書類を作成すべきである。

 


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