進歩性に関する異なる審査意見へのそれぞれの応答方法
時間: 2020-06-30 田喜慶 アクセス数:

通常、“三ステップ法”で進歩性を評価した審査意見に応答する際に、同様に「3ステップ法」により審査意見を分析して答弁のポイントを考えることができる。但し、実践において、「3ステップ法」に準していない進歩性に係わる審査意見を受けることもある。下記、事例を持ちながら、このような審査意見への応答方法を紹介する。


事例1 区別的技術的特徴が「引用文献+容易に想到できる」に公開されている。

本発明の技術案は、三相電源内部の2つの離間した導体間の電流を測定することによって短絡があるかどうかを判断することを含む。最も近い従来技術である引用文献1には、三相電源の各二相間の抵抗の変化を測定することによって短絡があるかどうかを判断することが開示されている。引用文献2には、直流電源と接地の間に電流があるかどうかを測定することによって短絡があるかどうかを判断することが開示されている。審査官は、「引用文献2に開示されている内容により、2つの導体間の電流を測定することで短絡の有無を判断することが容易に想到できるため、引用文献1に基づき、引用文献2と公知常識との組合せで、請求項1の技術案を得ることができる」と言う審査意見を出した。


よって、上記の進歩性評価において、引用文献2と公知常識を引用文献1に組み合わせることではなく、公知常識を引用文献2に組み合わせてから、引用文献1に組み合わせた。こういうような評価方法は、従来技術の公開範囲を広げる恐れがある。


このような審査意見について、次の四点から応答することを提案する。

1)    引用文献2自体に区別的特徴が開示されていない。

2)    引用文献2には、当業者に「2つの導体間の電流を測定することで短絡の有無を判断する」ことを容易に想到させる技術示唆が開示されていない。

3)    当該区別的特徴が公知常識でもない。

4)    引用文献2と引用文献1とを組み合わせることができない、或は組み合わせたとしても本件発明の技術案を得ることができない。


事例2 三つ以上の引用文献の組合せ

本件発明の技術案:導体の電流を測定し(特性A)、温度と導体抵抗の比較表を調べ、補償された抵抗値を取得し(特性B)、補償された抵抗値と電流を使用してA / D変換を制御する(機能C)。審査官は、「引用文献1には、導体に抵抗器を並列し、当該抵抗器の電圧を測定することによって導体電流の補償を得られることが開示されているため、特徴Aが開示された。引用文献2には、温度と導体抵抗の比較表で補償された抵抗値を得ることが開示されているため、特徴Bが開示された。引用文献3では、抵抗値と基準電流に基づいてA / Dコンバータを制御するため、特徴Cが開示された。したがって、引用文献1に基づいて引用文2と3を組み合わせることによって本件発明の技術案を得ることができる。」と言う審査意見を出した。


上記審査意見は、技術的特徴の間の関連性を切り分けた。したがって、このような審査意見について、次のポイントにより応答することを提案する。従来技術には、異なる引用文献に公開された特徴を組合せて本件発明の技術案を得ることを当業者に示す技術示唆、即ち、複数の引用文献を組合わせる技術示唆があるかどうかを分析する。また、組み合わせの難度も結び付て説明する。


事例3 発明のポイントが公知常識であると認定された

本発明では、隣接するパイプラインを接続する接続フランジ間にギャップを作り、フランジクッションの交換を容易にするためにスプレッダーが提供される。引用文献1では、隣接するパイプラインを接続する接続フランジの間にフランジクッションを設けているが、本発明ではスプレッダーを設けている点が異なっている。審査官は、スプレッダーの構造は従来技術で知られているので、この区別的特徴は常識であり、本発明は進歩性を有していないという審査意見を出した。


このような審査意見について、先ず、スプレッダーの構造が従来技術で公知されている構造であるか否かを分析する必要がある。構造が既知の場合、現行スプレッダーが解決しようとする技術課題または果たしている役割は本発明と同じであるかどうかを確認する。つまり、スプレッダーの構造が既知であっても、従来技術には本発明でスプレッダーを使用してフランジクッションの便利な交換という技術課題を解決する示唆が開示されているわけではない。


総じて言えば、上記で挙げた事例及びその他の進歩性に関する審査意見について、従来技術に示唆との組合せが開示されているか否か、開示されたがその組合せができるか否か、またその組合わせにより本発明の技術案を得られるか否かと言う点から応答することができる。


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