特許権侵害案件における販売の申し出及び販売行為の認定と賠償責任の確認
時間: 2023-04-27 アクセス数:

―――(2021)最高法知民終60号


最高人民法院はこのほど、実用新案権侵害に関わる訴訟の最終判決を下さった。この訴訟において、原審判決における侵害停止の判決点を維持するとともに、被疑侵害技術案が対象実用新案権の従属請求項の保護範囲外であり、販売行為にならないという原審判決における不適切な点を修正した。また、上記不適切な判決点による明らかに低すぎる賠償額についても、改めて判決を下し、権利者の上訴請求を全額で支持した。


華裕電器集団有限公司(以下、華裕公司) は、名称が「開閉可能な上部カバーを備えたサンドイッチパンオーブン」である201520062993.5号実用新案権の権利者である。華裕公司は、飛航控股集団有限公司(以下、飛航公司)が広交会(中国輸出入商品取引会)で、第三者出展の方式により、その製造した被疑侵害製品を販売、及び販売の申し出を行ったことを発見したので、公証保全によりネットにおける販売の申し出に係る証拠を固定し、また飛航公司の営業場所に実物の完成品、半製品及び特許技術に係るコア部品に対する証拠保全を一審法院に請求した。一審法院は審理後、「被疑侵害技術案が対象実用新案権の請求項1の保護範囲内であるが、請求項2~5の保護範囲外である。飛航公司が主張した先行技術抗弁が成り立てないため、飛航公司の権利者の許可を得ず、無断で被疑侵害技術案を実施した行為が権利侵害になる。華裕公司が提出した証拠は、飛航公司が製造、販売の申し出行為を実施したことを証明できるが、実際の販売行為が存在することを証明できない。よって、飛航公司が被疑侵害製品の製造、販売の申し出行為を停止し、華裕公司の経済的損失及び侵害を抑制するための合理的な支出10万元を支払う。」という判決を下した。


華裕公司と飛航公司は何れも一審判決を不服として、最高人民法院に上訴した。そのうち、華裕公司が、飛航公司が自社の経済的損失及び合理的な支出合計50万元を賠償することを判決するようと請求し、また上訴理由で一審判決における飛航公司の販売行為に対する認定が不適切であると述べた。最高人民法院は審理したところ、「被疑侵害技術案が請求項2の保護範囲内であり、一審判決における被疑侵害技術案の係る技術的特徴と対象実用新案の請求項2の付加的技術的特徴とが同等ではないという認定は、不適切である。」と認定した。


販売の申出行為に認定について、華裕公司が提出した証拠により、広交会における販売の申出行為が第三者より行ったとは言え、その配布されたパンフレットや名刺などは全て飛航公司及び被疑侵害製品に密接に関連しており、飛航公司の被疑侵害製品を含むパンフレットを外部に配布した行為が対外に被疑侵害製品を販売する意図を示したため、当該行為自体は販売の申し出行為になる。また、本件事実により、飛航公司が第三者に展示会で販売の申し出を行うことを依頼した可能性が高いと推定できる。たとえ、第三者が飛航公司の依頼により展示会で販売の申し出を行うことを推定できないとしても、第三者が権利者の許可を得ず展示会で販売の申出行為を行った。しかも、その行為が被疑侵害製品の製造者である飛航公司の意図から生じたため、利益の一部が最終的に飛航公司に属する。販売の申出行為が発生すると、商品価格の下落、ビジネス機会の減少または遅延など、特許権者に合理的に推測できる損害を与えることになるため、権利侵害の源である飛航公司は、当該展示会における販売の申し出行為による結果に対して賠償責任を負うべきである。


販売行為の認定について、販売ルートが商品の出口である場合、権利者が購買により被疑侵害製品の販売証拠を入手することが難しいため、実際の販売証拠を提出しなかった理由だけにより販売行為の存在を否定すべきではない。華裕公司は、飛航公司が製造および販売の申出行為を実施した証拠を既に持っており、しかも飛航公司の現場における保全状況により飛航公司が一定量の製品を製造したことを証明できる。さらに、飛航公司がネットの販売ルートで供給能力、裁定発注数量、現在の在庫切れ状況を明確に記載したため、これらの事実は、飛航公司に疑侵害製品を販売した行為が存在する可能性が非常に高いと証明できる。


賠償額について、まず、一審法院は、飛航公司が製造、販売、販売の申し出行為を同時に実施したことを考慮しておらず、飛航公司が製造者として販売の申出行為を実施したことによる損害も十分に考慮しなかった。そして、一審法院による証拠保全の状況が、飛航公司の営業場所に大量の被疑侵害技術案に関連する部品「小さな赤帽子」及び異形サポート部品が存在することを証明できる。一方、飛航公司がこれらのコア部品をその他の非侵害製品に用いる明確な証拠を提出しなかった。さらに、飛航公司がネット販売ルートでその供給能力、最低発注数量及び製品の価格を明確に記載している。最後に、華裕公司が権利行使に合理的な費用を支払った。華裕公司の主張と本件事実により、一審法院による賠償額が飛航公司の侵害行為の性質、情状、もたらした損害などと明らかに相応しくない。よって、最高人民法院は華裕公司が上訴で主張した50万元の賠償を全額で支持した。


現実において、展示会で代理出展、共同出展、委託出展などが多く存在する。また、展示会現場での執法が様々な客観的要因に左右されるため、関連する証拠を全て収集することが困難である。輸出を主な販売ルートとする販売行為について、特許権者が証拠を収集することが非常に困難である。そこで、本件では、権利者による挙証の難度を考慮し、各当事者の証拠を総合的に勘案してから、販売及び販売の申出行為の存在を合理的に判断し、適時に挙証責任を移転することにより侵害者の製造・販売規模を認定した。本件で人民法院が被疑侵害者の侵害行為の性質、情状、損害結果などの要素を総合的に考慮し特許権者が主張した賠償額を全額で支持したことは、知的財産権保護を強化し、損害賠償を上げている司法方針を明示した。


出所:最高人民法院知的財産権法廷


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