販売の申出行為は特許法における医薬品と医療機器行政審査の例外範囲に該当しない
——(2021)最高法知行終451号
(2021)最高法知行終702号
最近、最高人民法院知的財産権法廷は、2件の審決取消行政訴訟の審理を終了し、これらの事件で、最高法は販売の申出行為が特許法における医薬品と医療機器の行政審査の侵害例外(Bolar免責)に該当しないことを明確にした。また、当該例外を適用する際に、抗弁の主体及びその具体的な行為などの面から審査・認定を行い、侵害例外の適用について厳しく解釈すべきであると強調した。
これら2件の事件は、名称が「置換オキサゾリジノンとその血液凝固分野での使用」で、特許権者がバイエルである特許に係わった。
被告の恒生公司、生命能公司は、そのHP及び「第18回世界製薬原料薬中国展示会」で、箱や包ボトルで包装された恒生公司の登録商標付きの「リバロキサバン錠」「リバロキサバン原料薬」を展示した。
一審法院は下記のように認定した。恒生公司、生命能公司が展示したイ号製品はバイエルの特許権保護範囲内になり、また、特許法における医薬品と医療機器行政審査の例外条項に規定の例外の場合に該当しないため、販売の申出による権利侵害に該当する。原審判決において、恒生公司、生命能公司が販売の申出による権利侵害に該当すると認定し、その販売の申出行為を停止せよと命じることは不適切ではない。よって、恒生公司、生命能公司の訴訟請求を却下する。
なお、恒生公司、生命能公司は不服として、最高人民法院に上訴し、下記の理由を述べた。自社のイ号製品を展示した行為が、リバロキサバンのジェネリック医薬品を開発しようとする企業のみに向かう展示であり、イ号製品に価格と供給量が付けられておらず、販売できる状態になっていない。また、イ号製品を宣伝する目的は販売ではなく、販売の意思表示がないため、販売の申出行為に該当しない。また、たとえ販売の申出行為に該当するとしても、自社の上記行為が特許法における医薬品と医療機器行政審査の例外条項に規定の例外の場合に該当するので、特許権侵害にならない。
恒生公司は、本件訴訟により、特許法における医薬品と医療機器行政審査の例外に関わる明確な司法裁判の指導を取得したい。
最高人民法院は二審において、下記のように意見を述べた。販売の申出の対象が特定でも非特定でも良い、特定な対象に対して製品の販売意思を示す行為も販売の申出行為に該当する。また、販売の申出行為は申し出ても申出を招待しても良い。製品の販売意思表示が明確で具体的であれば、価格、供給量及び製品のシリアルナンバーなどの契約成立に関わる条項が欠如としても、販売の申出行為が存在すると見なすことができる。
本件において、恒生公司、生命能公司が特許権者のバイエル社の許可を得ずに、ウェイブサイト、展示会で非特定の対象にイ号製品の販売意思を開示したため、その行為は販売の申出行為による権利侵害に該当する。
販売の申出が医薬品と医療機器行政審査の例外に該当するかについて、最高人民法院は二審において、下記のように意見を述べた。先ず、医薬品と医療機器行政審査の例外条項の抗弁主体とその条件について、医薬品と医療機器行政審査の例外条項に2種類の主体が含まれている。一つは、ジェネリック医薬品と医療機器行政審査に必要な情報を取得するために、特許を実施した者。もう一つは、前記の者が行政審査・承認を得られるよう、特許を実施した者。前者は自分のために行政審査を申請するが、後者は前者に行政審査の申請を幇助する。よって、後者が医薬品と医療機器行政審査の例外に該当する理由で抗弁する際、前提条件として、前者が存在しなければならない。
そして、医薬品と医療機器行政審査の例外に該当する行為の範囲について、特許法の規定により、医薬品と医療機器行政審査の例外条項に規定の行為は次の行為を含む。行政審査に必要な情報を提供し、自分のために行政審査を申請するために「製造、使用、輸入」を実施した行為、及び前記主体の行政審査の申請のために、「製造、輸入」を実施した行為。何れも販売の申出行為を含まない。
本件において、恒生公司、生命能公司は、リバロキサバン薬品を生産する行政審査申請人が存在する証拠を提出しなかったため、抗弁主体の要件を満たしていない。また、その実施した行為は、非特定の対象にイ号製品の販売を申し出ることであり、規定された行為の範囲を超えたため、医薬品と医療機器行政審査の例外規定を適用することができない。
恒生公司、生命能公司が、本件の宣伝行為を行わないと、リバロキサバンのジェネリック医薬品を開発する企画がある企業を把握できないと弁解したことは、法律の明確な規定に合わなく、特許権者の特許保護期間内の合法的な利益も不法的に縮小した。医薬品特許権の存続期間中、許可を得ずに、医薬品と医療機器行政審査の例外に該当しない販売の申出行為を実施することは、非特定の対象が特許権者からの特許製品の購入を遅延する結果をもたらす可能性がある。即ち、実質的に、特許権者の合法的権益の保護が弱められるようになる。上記を踏まえ、最高人民法院は、上訴を却下し、原審判決を維持した。
最高人民法院は、上記2件の事件において、下記の意見を明確に述べた。特許法における医薬品と医療機器行政審査の例外規定を適用する際に、特許権者とジェネリック医薬品メーカとの利益のバランスを取るべきである。即ち、公衆が特許権存続期間満了後、適時に安価な薬品と医療機器を取得できることを確保するとともに、特許権者の合法的権益の保護を弱めることも避けるべきである。また、特許法が合法的な権利に対する保護は原則であり、法定の非侵害の規定は例外である。その例外について、厳しく解釈すべきである。と強調した。これら2件の判決は、医薬分野の研究開発を奨励し、医薬品市場の革新的な発展を維持することに積極的な指導作用がある。
出所:最高人民法院知的財産権法廷