改正後の『技術輸出入管理条例』に関する理解及び解読
時間: 2019-03-22 アクセス数:

2019年3月18日に、李克強総理の署名した国務院令に基づき、<国務院による一部の行政法規改正の決定>が公布され、中には、<中華人民共和国技術輸出入管理条例>(以下、条例と称す)についても、改正が行われた。主な改正内容は、以下のとおりである。

 

三十八、<中華人民共和国技術輸出入管理条例>第二十四条第三項、第二十七条、第二十九条を削除し、第四十一条を第三十九条にし、その内容を「国務院外経貿主管部門は本条例第三十八条に規定した書類を受領した日より 3 労働日以内に、技術輸出契約について登録をし、技術輸出契約登録証を付与しなければならない。」と改正した。

 

上記改正は中国の技術輸出入に大きな影響を与えるかと考え、下記にて、その改正目的と具体的な条文内容を全面的に解読する。

 

一、改正の目的は、渉外技術譲渡の環境の最適化である。

新華社は、上記内容を発布した時に、「…、三、渉外技術譲渡の環境を最適化させるために、技術輸出入管理条例を改正し、技術輸入契約の有効期間内に、改良した技術は改良した側に帰属するなどの規定を削除した。」と説明し、渉外技術譲渡の環境を最適化させ、政府の職能の転換を速め、政府の市場への影響を減らす目的を表明した。

 

二、具体的な条文の分析

1.条例の第二十四条第三項を削除した

元の第二十四条第三項の内容:技術輸入契約の譲受人が契約に従って譲渡人が提供した技術を使用した結果、他人の合法的権益を侵害する場合、その責任は譲渡人が負う。

 

上記内容を削除すると、以下の結果をもたらすこととなる。(1)契約双方はその責任について契約にて明確な約定がある場合、その約定に従う。(2)契約において、明確な約定がない場合、訴訟が発生すると、人民法院は、案件の具体的な事情に基づき、どちらがその責任を負うこと、及び責任の割合などを判定する。例えば、特許法の基づき、まず、どちらが特許権親権行為を実施したかを判断する。侵害行為を実施したのは、譲受人のみである場合、譲受人が全ての責任を負う。譲受人と譲渡人が共に侵害行為を実施した場合、共同で責任を負うべきである。なお、譲渡人は、権利侵害について幇助・教唆する行為を実施した場合、間接侵害に該当し、連帯責任を負わなければならない。

 

2. 条例の第二十七条を削除した

元の第二十七条の内容:技術輸入契約の有効期間内に、改良した技術は改良した側に帰属する。

 

上記内容を削除すると、改良した技術の帰属は、契約により約定することができるようになった。約定がない場合、例えば、特許法などの法律に規定された技術帰属の関連規定に従い、処理する。

 

3. 条例の第二十九条を削除した

元の第二十九条の内容:技術輸入契約には以下に掲げる制限的条項を含めてはならない。

 

(1)譲受人に技術輸入に必須ではない付帯条件を求めること。必須ではない技術、原材料、製品、設備又はサービスの購入を含む。

(2)譲受人に特許権の有効期間が満了し又は特許権が無効宣告された技術について許 諾使用料の支払い又は関連義務の履行を求めること。

(3)譲受人が譲渡人に提供された技術を改良し、又は改良した技術の使用を制限すること。

(4)譲受人にその他の供給先から譲渡人が提供した技術に゙似し又は競合する技術の取得を制限すること。

(5)譲受人に原材料、部品、製品又は設備の購入ルート又は供給先を不合理に制限すること。

(6)譲受人に製品の生産高、品種又は販売価格を不合理に制限すること。

(7)譲受人に輸入した技術を駆使し、生産した製品の輸出ルートを不合理に制限すること。

 

上記内容を削除すると、制限的条項に該当するため、技術輸入契約に含められない内容を契約に記入することを認めるようになった。但し、ここでの「認める」というのは、形式上、このような条項を契約に含めてもよいが、これらの制限的条項は、必ずしも「合法且つ有効」であるとは言えない。即ち、その他の法律法規に禁止された行為に該当するかによって、「合法且つ有効」であるか否かを判断する。

 

4.条例の第四十一条を改正した

元の第四十一条を第三十九条とし、その内容を「国務院外経貿主管部門は本条例第三十八条に規定した書類を受領した日より 3 労働日以内に、技術輸出契約について登録をし、技術輸出契約登録証を付与しなければならない。」と改正した。

 

上記内容には、ちょっと問題があると思っている。我々の理解では、元の第三十八条、三十九条を削除し、元の第三十八条、三十九条の内容を第三十八条に追加し、元の第四十一条を第三十九条とするほうがもっと厳密である。但し、本条の改正は、登録の手続に係るだけで、実質的な変化はない。

 

三、日本企業への影響及び対応策

全体的にいえば、今回の改正は、日本企業を含む技術権利者に有利な改正だと思っている。

 

1.     第二十四条第三項を削除することは、日本企業を含む技術譲渡人に有利である。即ち、譲渡人が提供した技術を使用した結果、他人の合法的権益を侵害する場合、その責任は必ず譲渡人が負うことではなくなる。ここで、注意すべきであるのは、(1)契約において、できるだけ譲渡人が責任を負うことを約定しないこと。(2)譲渡人は、中国域内において特許技術を実施しない、或いは、特許技術の実施を幇助しないこと。

2.     第二十七条を削除したため、契約にて改良した技術の成果が譲渡人に帰属することを約定することができる。約定がない場合、特許法などの法律における技術帰属の関連規定に従い処理すべきである。

3.     第二十九条を削除することも、技術権利者に有利なことである。前述のように、これらの制限的条項を契約に記入することができるようになったが、その他の法律(例えば、独占禁止法など)の規定により、その合法性を判断する必要がある。

 

総じていえば、今回の改正は、技術の権利者にとって、有利だと思っている。中国の外商投資環境を改善する決心を表し、技術譲渡の自由意志(自愿)原則及び公平原則を強調し、中国企業と外商企業に対して同等待遇を与える。

 

北京康信知識産権代理有限公司

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