最高人民法院は独占禁止と不正競争に係る典型的事例を公表
時間: 2024-09-29 アクセス数:

司法判決の模範的かつ主導的な役割を最大限に発揮するため、2024年の中国公正競争政策宣伝週間中に、最高人民法院は8件の典型的な独占禁止および不正競争事例を公表した。

 

その中、4件の不正競争に係る事例は、不正競争防止法の一般規定の適用、模倣、混同、虚偽宣伝、技術秘密侵害の認定など重要な法的問題に関連しており、下記の特徴を反映している。


第一に、新たな生産力の発展を効果的に支援し貢献するために、司法的保護を強化し続けること。今回公表された「新エネルギー自動車シャシー」技術秘密侵害の事件において、人民法院は、技術秘密の組織的、計画的かつ大規模な侵害を判断する際に、総合的な分析アプローチを採用し、法律に従って懲罰的損害賠償の法的規定を適用して賠償額を決定しただけでなく、企業の革新的な発展を効果的に保護し、新たな生産力を育成し発展させるために、侵害の停止に対する民事責任についても積極的に探索した。

 

第二に、「ただ乗り」等の不正競争行為を厳しく取り締まり、公正な競争による市場秩序を維持すること。近年、模倣行為などに代表される各種不正競争行為が多発しており、事業者の利益や消費者の正当な権利利益を著しく害するものであり、厳正に取り締まる必要があります。今回公表された「シュナイダー」模倣・混同係争事件において、人民法院は誠実な運営を奨励し、有名ブランドの保護を強化し、不正な商業ロゴの貼付やブランドのただ乗り行為を厳しく取り締まる方針を立て、不正取得に係る十分な証拠がある場合には、侵害コストが大幅に増加し、悪意のある各種侵害行為を効果的に阻止している。


第三に、デジタル経済の健全かつ秩序ある発展を促進するために、新しいビジネスモデルの開発ニーズに焦点を当てる。今回公表された企業信用データプラットフォームにおける不正競争紛争事件で、人民法院はビッグデータ競争保護の司法規則を積極的に検討し、データ権利の帰属と使用境界を合理的に分割し、オープンで健全かつ安全なデジタルエコシステムの構築を支援している。

 

以下では、2つの不正競争典型的事例である吉利対WMモーター技術秘密侵害事件と「シュナイダー」模倣混同紛争事件について詳しく紹介する。


「新エネルギー車シャーシ」技術秘密侵害事件:技術秘密侵害の判断と侵害を阻止するための具体的措置

 

【事件番号】最高人民法院(2023)最高法知民終1590号[浙江吉利控股有限公司、浙江吉利汽車研究所有限公司とWM社、WM温州社等との間の技術秘密侵害を巡る紛争]


【基本経緯】浙江吉利控股有限公司の子会社の上級管理者および技術者約40名が離職し、WMおよびその関連会社(以下、WM 4社を総称してWM)に勤務することになった。そのうち 30 名は 2016 年に退職後、すぐにWMに入社した。2018年、浙江吉利控股集団有限公司と浙江吉利汽車研究所有限公司(以下、吉利2社を総称して吉利)は、下記の事実を発見した。


WMは、上記退職者の一部を発明者または共同発明者として、彼らが元の勤務先で触れ、習得してきた新エネルギー車シャーシ応用技術と12組のシャーシ部品図面およびデジタルモデルに含まれる技術情報(以下、本件技術秘密)を利用して12件の特許に出願した。また、WMが発売したWM EXシリーズの電気自動車は、本件技術秘密を侵害した疑いがある。これに基づいて、吉利は第一審裁判所に訴訟を提起し、WMに対し侵害差し止めと経済的損失および合理的支出合計21億元の賠償金を支払うと命じることを請求した。一審法院は、WM温州社が吉利の本件に係る5組のシャーシ部品図面の技術秘密を侵害したと認定し、吉利に対し経済的損失と合理的な権利保護費用計700万元を賠償する判決を下した。吉利とWM温州は何れもこれを不服として、控訴した。


最高人民法院は二審で、本件は、不当な手段による新エネルギー車の技術人材や技術資源の大規模な引き抜きによって引き起こされた、組織的かつ計画的な技術秘密侵害事件であると判断した。総合的な分析と総合的な判断により、WMは、不正な手段により本件全ての技術秘密を入手し、特許出願により本件技術秘密の一部を不法に開示し、本件全ての技術秘密を使用する行為を実施した。WM社が本件技術秘密の開示、使用、他人への実施許諾を直ちに停止すべきであるという総合判断を踏まえ、二審判決では、侵害差し止めの具体的な方法、内容、範囲がさらに精緻化・明確化され、以下を含むがこれらに限定されない。「吉利の同意が得られない限り、WMは、いかなる形であっても、本件技術秘密の開示、使用、または他人への実施を許諾することを停止しなければならない、また、本件12件の特許を実施し、他人に実施を許諾し、移転、質権設定、またはその他の方法で処分してはならない。本件技術秘密を記載する全ての図面、デジタルモデル、及びその他の技術データを破棄するか、吉利に引き渡しなければならない。社内通知などを通じて、判決および侵害停止の命令をWMおよびそのすべての社員、関連会社および関連部品のサプライヤーに周知し、関連者および部門に営業秘密および非侵害などを守るための誓約書に署名するよう要求しなければならない。」また、WMの明らかな侵害意図、深刻な侵害情状、及びその侵害による重大な結果を考慮し、2019年5月から2022年第1四半期までWMの侵害による利益に対して2倍の懲罰的損害賠償を適用し、WMは吉利に対し、経済的損失と合理的支出計6億4,000万元の賠償金を支払わなければならない。金銭以外の支払い義務の履行を確保するために、二審判決はさらに次のことを明確した。「WMが判決で定められた侵害行為の停止など金銭以外の支払義務に違反した場合、1日当たり100万元の履行遅延損害金を支払わなければならない。WMが12件の特許を無断で処分した場合、特許1件当たり100万元を一括で支払わなければならない。等」


【本件意義】本件は、組織的で計画的かつ大規模な技術秘密侵害を効果的に取り締まる典型的な事例である。人民法院は、技術秘密の侵害に関する総合的な判断に基づいて、懲罰的損害賠償に関する法規定を適用して賠償額を決定しただけでなく、侵害行為の停止と民事上の責任の具体的負担、及び金銭以外の支払義務の履行遅延の計算基準などについても積極的かつ有益な検討をした。これは、知的財産権を厳格に保護するという明確な姿勢と不正競争と闘う確固たる決意を十分に示しており、公正な競争、科学技術イノベーションの保護につながる法的環境の構築に貢献する。


「シュナイダー」模倣・混同紛争事件:侵害で巨額の利益を得た悪質な侵害に対する賠償額の決定

 

【事件番号】江蘇省高級人民法院(2021)蘇知終19号[シュナイダーエレクトリック(中国)有限公司と蘇州施耐德エレベーター有限公司の商標権侵害及び不正競争紛争事件]


【基本経緯】シュナイダーエレクトリック欧州社(以下、シュナイダー欧州)は、その第9類のサーキットブレーカー、電気スイッチなどの商品区分に登録した「施耐德」商標を同社が投資したシュナイダーエレクトリック(中国)有限公司(以下、シュナイダー中国)にライセンスした。シュナイダー中国は全国で複数の電気生産会社に投資しており、そのほとんどが社名として「施耐德」を使用している。「施耐德」およびその他の一連の商標は、電気産業および市場において高い認知度を持っている。シュナイダー中国は、蘇州施耐德エレベーター有限公司(以下、蘇州施耐德公司)による「施耐德」および「SCHNEiDER」ロゴの顕著な使用は商標権侵害に当たり、また「施耐德」を含む商号を登録し、「Schneider electric」という商標の中核要素に類似したドメイン名を使用したことは、不正競争に当たると主張し、蘇州施耐德公司に対し、侵害差し止め、社名変更、損失補償、影響除去を命じる命令を求める訴訟が提起された。蘇州施耐德公司は、被告ロゴの使用は海外企業によって許諾されており、当該商標へのただ乗りという主観的な悪意はないと抗弁した。審理の結果、第一審裁判所は、被告の行為は商標権侵害および不正競争に当たると判示し、次のような判決を下した。「蘇州施耐德公司は直ちに社名変更の手続きを行い、原告の損失を4,000万元、合理的支出15万元を支払い、影響を排除する声明を発表しなけらばならない。」江蘇省高等人民法院は二審で、次のように判示した。「蘇州施耐德公司は本件商標と商号の知名度を明らかに知っているものの、本件商標へのただ乗りのために、商標に類似したロゴの使用許諾について海外企業とブランド使用契約を締結した。一審での商標権侵害と不正競争に該当する判決は正確である。」当該商標の知名度や市場価値、蘇州施耐德公司の主観的な悪意、侵害の期間や規模などを考慮すると、一審判決で定められた賠償額4,000万元は適切である。江蘇省高等人民法院の二審判決は控訴を棄却し、原判決を支持した。


【本件意義】この事件は、「ただ乗り」やその他の模倣・混合行為を厳罰化する典型的な事件である。

侵害による利益が法定の賠償限度額を超えていることを証明する十分な証拠がある場合、人民法院は立証責任を合理的に配分し、裁量的賠償方法を正しく適用し、適切な賠償額を決定し、市場の混乱行為に効果的に対抗する。これは他者の善意に固執し、侵害のコストを大幅に増加させ、知的財産権の保護を効果的に強化するという明確な司法の方向性を完全に体現しています。この事件は、「ただ乗り」などの模倣・混同行為を厳罰化する典型的な事例である。侵害による利益が法定の賠償額を超えていることを証明する十分な証拠がある場合、人民法院は立証責任を合理的に配分し、裁量的賠償方法を正しく適用し、適切な賠償額を決定し、他人の名誉への「ただ乗り」行為などの市場混乱行為に効果的に取り締まり、侵害のコストを大幅に増加させ、知的財産権の保護を効果的に強化するという明確な司法方針を完全に示している。


出所:中国法院網


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