模倣品差止め ECサイトの掲載内容と製造行為の認定
時間: 2024-09-29 アクセス数:

【裁判要旨】人民法院は、被告がECサイトに掲載した製品販売リンク内の製品モデル、原産地、数量、「メーカー直販」などの記述を総合的に考慮し、侵害製品は同社によって製造されたと合理的に推定することができる。

 

【基本経緯】イタリアのある機械株式会社は、特許番号 02829511.0、発明の名称「石の粉砕およびふるい分け用バケット」という発明特許の権利者である。同社は、山東省のある工程機械公司が「愛采購」「搜了網」「材料網」で公開した製品写真の内容が、自社の特許製品と同一であり、その公開内容には数量、販売価格などの情報に加え、当該山東省の公司の商標も掲載されており、また原産地(山東省済寧市)及び製品の動作原理も掲載されている。ということが発見した。比較したところ、イタリアの会社は、上記のECサイトで販売申し出されている当該山東省の公司の製品の動作原理が、本件特許の請求項1と同じであり、その写真に示されている製品の一部には当該イタリア会社の商標も付いていることが判明した。したがって、当該山東省の公司に対して訴訟を提起、被疑侵害製品の製造、販売及び販売の申出の停止と、経済的損失と相応の権利保護費用の賠償を法院に請求した。当該山東省の公司は次のように述べた。ECサイト上の写真がインターネットで取得した本件特許製品の写真である。また、その動作原理は、2台の本件特許製品を購入したときに取得した製品マニュアルの内容に基づいており、当該山東省の公司の製品の商標、原産地、数量などのECサイトにおける情報はすべて同社が製品を販売するために捏造したものであり、同社が実際に展示されている商品を製造・販売する行為は行っていない。


一審法院は、EC上で公開した情報だけでは、当該山東省の公司が製造・販売活動を行っていたと判断するには不十分だと判示した。理由としては、同社が販売の申出行為を行っていたが、2台の本件特許製品を購入したことがあるため、ECサイトに公開されている製品の動作原理は必ずしも被疑侵害製品の動作原理ではなく、本件特許製品の動作原理である可能性がある。したがって、同社がECサイトで販売の申し出をしている製品の技術案が、本件特許の保護の範囲内であるとは判断することはできない。上記判断に基づいて、2022 年 4 月 28 日に判決を下し、当該イタリア会社の訴訟請求をすべて棄却した。イタリア会社はこれを不服として控訴した。最高人民法院は、「当該山東省の公司が製造・販売する破砕バケットの技術案は、本件特許の請求項1の保護範囲内であり、同社の製造および販売の申し出行為は本件特許権の侵害に当たる。本件特許権の保護期間は満了しているため、同社が侵害停止の民事責任を負う必要はないが、イタリア会社の要請に応じて経済的損失と権利保護のための合理的な支出を補償する必要がある。」と判示した。よって、2023年8月31日に、下記の(2022)最高法知民終2021号民事判決を下した。1.一審の民事判決を取り消す。2.当該山東省の公司は、この判決の発効日から 10 日以内に、当該イタリア会社に対して 90 万人民元の経済的損失を支払う。3.当該山東省の公司は、本判決の発効日から 10 日以内に、イタリア会社に対し、合理的な権利保護費用として 2,000 元を支払う。4.イタリア会社のその他の訴訟請求を棄却する。


【裁判意見】山東省の公司がECサイトで販売の申し出をしている粉砕バケツのうち、5つの製品はそれぞれ、「愛采購」「搜了網」「材料網」の販売リンクの横に写真が掲載されている。当該山東省の公司はその写真の製品が本件特許製品であることを確認した。また、上記5つの被疑侵害製品の販売ウェブページにも、当該山東省の公司によって確認された本件特許製品の写真が多数使用されていた。さらに、販売ウェブページに掲載されているブランド、産地、価格、モデル、数量、その他の情報を結びつけば、当該山東省公司がウェブページの写真に掲載されている製品を販売する意図があり、その行為が当該製品に対する販売の申出行為に該当することを十分に認定できる。よって、当該山東省の公司が愛采購」「搜了網」「材料網」で販売の申し出をしている5つの被疑侵害製品の技術案は本件特許権の保護範囲内であると判断することができる。


また、ブランド「金耀」、原産地「山東省済寧」、型番など、上記5件の侵害容疑製品の販売ページに記載されている製品情報は、山東省の会社が自作したものであり、「数百台」などはすべて、当該山東省の公司が「100%イタリアから輸入」「MB」ブランドの破砕バケットを2台だけ購入したという状況とは矛盾している。


同様に、当該山東省の公司が上記 5 つの被疑侵害製品を複数のECサイトで販売していたこと、および販売Web ページ上の原産地と数量に関する記載、Web ページ上の写真は、ウェブページに記載されている「メーカー直販」や「電子連合カスタマイズ」などの内容、および当該山東省の公司がその販売の申し出をしている被疑侵害製品の出所を説明する証拠を提出しなかったという事実を総合的に考慮すれば、当該山東省の公司が上記の5 つの被疑侵害製品を製造した行為があると合理的に推測できる。販売行為に関しては、イタリア会社が山東省の会社が被疑侵害製品を実際に販売したことを証明する証拠を提出しなかったため、イタリアの会社の対応する主張は支持されなかった。

 

さらに、山東省の公司の、「愛采購」「搜了網」「材料網」で被疑侵害製品について記載した情報は虚偽であり、製品を宣伝する目的でのみ捏造したものであるという主張は、「中華人民共和国電子商取引法」第 17 条の「電子商取引経営者は、商品又はサービス情報を全面的、切実、確実、適時に開示し、消費者の知る権利と選択権を保障しなければならない。電子商取引経営者は取引の虚構、ユーザー評価の捏造等の方式によって虚偽又は誤解を招く商業宣伝をして、消費者を欺瞞し、誤解させてはならない。」という規定に明らかに違反しており、電子商取引の信用システムの構築を阻害し、イタリア会社による特許侵害の主張に直面した場合の法的責任を回避する言い訳にはなり得ないため、支持されるべきではない。山東省の公司の、「愛采購」「搜了網」「材料網」で販売の申し出をしている5つの被疑侵害製品の技術案は本件特許の請求項1の保護範囲内であり、同社の上記被疑侵害製品に対する販売の申出行為は本件特許権の侵害に当たる。


【関連法律】「中華人民共和国専利法」第11条(本件に適用したのは2009年10月1日から施行された「中華人民共和国専利法」第11条である)、「中華人民共和国電子商取引法」第 17 条


出所:最高人民法院知的産権法廷

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