最高人民法院知的財産権法廷裁判要旨(2023)
時間: 2024-03-28 アクセス数:

——特許権帰属、侵害をめぐる事件(一)


1.限縮されるクレームを引用した他のクレームの保護範囲に対する限縮的な陳述の影響

 

【事件番号】(2022)最高法知民終681号

裁判要旨】特許権者が無効審判中にクレームの限縮的な解釈を行った場合、そのクレームが最終的に無効と宣告されたとしても、当該限縮的な解釈はそのクレームを引用した他のクレームにも適用される。


2.誘導による証拠収集の認定と影響

 

【事件番号】(2022)最高法知民終2586号

【裁判要旨】特許権者が自社特許権に係るものであると明言せずに、当該特許の完全な技術案を含む図面を他人に直接提供し、その図面により生産することを求める行為は、他人に特許権の侵害を誘導することによる証拠収集に該当する。人民法院は、当該証拠のみに基づいて侵害事実を判断してはならない。


3.組み合わせて使用される製品が特許の保護範囲内になる場合の侵害責任者の認定

 

【事件番号】(2021)最高法知民終2270号

【裁判要旨】同一主体が製造した異なる製品が組み合わせて使用することができ、

しかも、組み合わせて使用する場合のみ特許の保護範囲内になる場合、侵害責任者の判断は、使用中に実際に形成された技術案に基づき、主に当該技術案の形成が消費者によって決定されたのか、製造者によって決定されたのかを検討すべきである。当該製品は本来個別で使用できるものを、消費者が自らのニーズに応じて組み合わせて使用する場合、通常、組み合わせた製品の技術案は消費者が決定するものであり、製造者は侵害に対して責任を負うべきではないと判断することができる。


4.被疑侵害製品の製造者の認定

 

【事件番号】(2021)最高法知民終2301号

【裁判要旨】特許法における製品製造者とは、特定の製造活動の実施者だけを指すわけではない。生産リソースを組織し、上流と下流の生産工程を調整し、製品の技術案を決定する者も、侵害容疑の製品の製造者となる可能性がある。


5.ECサイトに展示されている内容と製造行為の認定

 

【事件番号】(2022)最高法知民終2021号

【裁判要旨】人民法院は、ECサイトで被疑侵害者が開示した製品販売リンクにおける製品の型番、産地、数量、及び「メーカー直販」などの記述を総合的に考慮し、被疑侵害製品が当該被疑侵害者に製造されたことを合理的に推認することができる。


6.数値により限定された技術的特徴の均等評価

 

【事件番号】(2021)最高法知民終985号

【裁判要旨】数値や連続的に変化する数値範囲によって限定された発明特許や実用新案における技術的特徴については、均等論の適用を絶対的に排除することは適切ではないが、せめて厳密に制限されるべきである。差異のある数値または数値範囲が、実質的に同一の機能および実質的に同一の効果を達成するために基本的に同一の技術的手段を使用するものであり、しかも、当業者が創造的労働をせずにそれを想到できる、また、技術分野、発明の種類、クレーム補正の内容等の関連要素を総合的に考慮した上、当該技術的特徴が均等と評価しても、特許請求の範囲に対する公衆の合理的な期待に反しなく、特許権を公平に保護することもできる場合には、均等の技術的特徴であると判断することができる。


7.意匠の類似判断における区別的設計特徴の検討

 

【事件番号】(2021)最高法知行終728号

【裁判要旨】関連意匠設計と被疑侵害設計との類似判断を行う場合、関連意匠設計が既存設計と区別される設計特徴を確認し、当該区別的設計特徴を、外観設計の全体的な視覚効果にさらに影響する部分として検討すべきである。当事者は、上記の区別的設計特徴について証拠を提出するか説明することができるが、当事者の提供した証拠や説明が不十分な場合には、人民法院が一般消費者の知識レベルと認知能力に基づいて区別的設計特徴を判断することができる。


8.製造者の先使用権に基づく使用者および販売者による非侵害抗弁の取扱い

 

【事件番号】(2022)最高法知行終839号

【裁判要旨】先使用権者が法律に従って先使用権によって製造した製品の使用、販売の申し出、または販売を特許出願日以降に行った使用者または販売者は、製造者の先使用権を理由として特許権侵害に当たらないと主張する場合、人民法院が支持するものとする。


9.賃貸借関係における合法的出所の抗弁の認定

 

【事件番号】(2022)最高法知民終2869号

【裁判要旨】被疑侵害者が、その被疑侵害製品がリースされたものであり、リース期間がまだ満了していないこと、妥当な賃料を支払っており、その製品が侵害製品であることを知らなかった、また知り得なかったことを証明する証拠を提出できる場合、人民法院は、その合法的出所の抗弁を認めることができる。


10.特許侵害訴訟において特許権が譲渡された場合の侵害停止責任の判断

 

【事件番号】(2022)最高法知民終1923号

【裁判要旨】特許侵害訴訟の審理中に、元の特許権者が当該訴訟に係る特許権を譲渡した場合でも、その訴訟主体の資格には影響はない。人民法院が被疑侵害行為が権利侵害に該当すると判断した場合、被疑侵害者が現特許権者から許可を得ていることを証明できない限り、法に基づいて元の特許権者の侵害差し止めの請求を支持するものとする。


11.一般に販売されていない製品による特許権侵害に対する損害賠償額の計算

 

【事件番号】(2022)最高法知民終1584号

【裁判要旨】権利侵害の損害賠償の目的は、イノベーションへのモチベーションを維持するために、特許権者をなるべく侵害が発生していなかった場合の状態に回復させることである。公開で販売されていない商品については、市場における売上高により侵害損害額を直接計算することができないため、具体的な事件の状況に応じて特許技術案の実施に関連し、最も直接的に市場利益を得られる製品を、侵害損害賠償額を計算する参考根拠として使用できる。


12.権利を保護するための合理的な支出の確認に対する不誠実な訴訟行為の影響

 

【事件番号】(2021)最高法知民終2480号

【裁判要旨】被疑侵害者が訴訟で虚偽の陳述やその他の不誠実な行為をした場合、人民法院が権利者の権利保護のための合理的な支出の金額を確認する際の考慮要素とすることができる。


13.知的財産権濫用の認定と処分

 

【事件番号】(2023)最高法知民終235号

【裁判要旨】知的財産権の行使は信義誠実原則に準拠すべく、他者の正当な権利や利益を害してはならない。知的財産権が侵害された場合、権利者は法律に従って訴権を行使することができる。但し、訴権の行使も信義誠実の原則に従い、誠実かつ慎重に行動する必要がある。権利者が「侵害の誘発」、「罠掛け証拠収集」、「誤導による和解」、「故意に二回提訴」などにより知的財産権を故意に濫用した場合、人民法院は法に基づき有効な措置を取って制止すべきである。また、「知的財産権侵害訴訟における原告による権利濫用を理由とする被告の合理的支出の賠償請求に対する最高人民法院の回答」に基づき、権利者に相手方当事者の合理的な訴訟費用を負担するよう命じることもできる。


14.警告状に具体的な製品が明示されていない場合の警告対象製品の特定

 

【事件番号】(2022)最高法知民終1744号

【裁判要旨】特許権者による侵害警告には警告対象製品が明示されていない場合、人民法院は、警告によって悪影響を受ける製品の範囲内で、被警告者の訴訟請求と結び付けて、特許権非侵害確認訴訟で審理すべき具体的な製品の範囲を合理的に判断することができる。

 

(特記事項: 自社営業秘密に係っているという当事者の主張によりさらなる検討と処理が必要な個別の事件の判決文書を除き、これら事件の判決文書は中国判決文書サイトhttps://wenshu.court.gov.cn/で公開されています。)

 

出所:最高人民法院知的財産権法廷


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