知的財産権行政保護指導判例(第三弾)における指導判例9号の理解と適用
時間: 2024-03-01 アクセス数:

――「先に棄却したが、別途再度提訴可能」の審理モデルについて



判例の基本情報

 上海友慧投資有限公司(以下、請求人)は、発明特許「歯の位置を変えるシステムおよびその製造方法」(特許番号:ZL201180028187.0)(以下、本件特許権)の特許権者である。2022年11月1日、申立人は北京市知識産権局に特許権侵害紛争の行政裁決を請求し、被請求人の北京瑞城病院管理有限公司、愛斉(四川)医療設備有限公司、北京瑞城医院管理有限公司瑞泰歯科病院分院が本件特許権を侵害していることを主張した。審査を経て、北京市知識産権局は当日に立件した。


 2023 年 1 月 11 日、被請求人である愛斉(四川) 医療機器有限公司の本件特許権に対する無効審判請求について、国家知識産権局は特許権を無効とする決定を下した。その時点では、行政裁決案はまだ審理中である。


 本件特許権が全て無効であると宣言されたため、北京知識産権局は2023 年 2 月 1 日に、請求人の行政裁決請求を棄却する裁定を下したと同時に、次のことを明示した。本件特許権の無効決定が発効した行政判決によって取り消されたことを証明できる証拠がある場合、請求人は再度に行政裁定を請求することができ、また、本裁定を不服とする場合、裁定日から15日以内に北京知識産権局に訴訟を提起することができる。


理解と適用

 本件は「先に棄却したが、別途再度提訴可能」の審理モデルに関する規定適用した判例である。特許侵害紛争の行政裁決事件において、通常、被請求人は当該特許に対して国務院特許行政部門に無効審判請求を提起する。そして、無効審判決定が下された後、さらに行政訴訟に入る場合もあるが、審理機関は、特許権確認行政訴訟の結審まで案件の審理を一切中止すると、審理期間が長すぎるようになる。


 「先に棄却したが、別途再度提訴可能」の審理モデルは、特許権確認行政訴訟における特許権の有効性に対する確認を考慮すると同時に、無効審判の決定が取り消された場合の訴権も確保している。この審理モデルは、行政裁決の効率性を反映し、特許侵害紛争の審理期間ルを効果的に短縮する一方で、公平性と効率性のバランスをとり、両当事者の正当な権利を保護し、行政基準および司法基準の一貫性を確保できる。同種類の事件の審理において実証的で重要な参考となる。


 特許侵害紛争の行政裁決事件において、特許権が無効であると宣告された後、審理期間が長く特許権が不安定であることが課題となる。「先に棄却したが、別途再度提訴可能」の審理モデルの導入により、特許権が不安定であることによる当事者と公衆への影響が解決され、各当事者の合法的権利が保護され、正常な市場取引秩序が維持され、良好なビジネス環境が確保できたため、公平性と効率性が実現した。


(1)特許権行政保護の効率性を向上させる。

 行政ルートを通じた紛争解決の重要な手段である特許侵害紛争の行政裁決は、強力な専門性、高効率、低コストという特徴を備えており、特許侵害紛争の迅速な解決に貢献している。「中華人民共和国特許法」第65条により、「専利権者の許諾を受けずにその専利を実施する、即ちその専利権を侵害し、紛争を引き起こした場合、当事者が協議により解決する。協議を望まない場合又は合意することができなかった場合、専利権者又は利害関係者は人民法院に提訴することができ、また専利業務管理部門に処理を求めることもできる。」行政裁決は特許行政保護の重要な形式と内容であり、我が国の国情に合致した特許侵害紛争を解決する方法である。「特許侵害紛争の行政裁決に関する指南」の関連規定により、特許権の無効審判を請求する者は、特許侵害紛争の審理の中止を請求することができる。しかし、特許侵害紛争訴訟の中止が長期化すると、被請求人に悪影響を及ぼす可能性がある。先に裁決することによって案件を終結することで、長期の中止による審理期間が長くなる問題を効果的に回避し、行政ルートを通じて特許侵害紛争の効率的な処理を実現した。


(2)行政基準および司法基準の一貫性を確保する。

 国務院特許行政部門は特許権の授権と確認を行い、当事者が関連する授権と確認の決定に不服がある場合、司法ルートを通じて救済を求めることができる。「先に棄却したが、別途再度提訴可能」という取扱方法は、現行の裁判実務と整合的であり、侵害紛争と権利確認手続きとの繋がりを実現し、行政裁決と司法裁判の積極的な相互作用を促進し、行政裁決と司法裁判の基準を統一することにつながる。「最高人民法院による特許権侵害紛争事件の審理における法律適用の若干問題に関する解釈(二)」の第2条には、「先に棄却したが、別途再度提訴可能」という制度が規定されており、即ち、「権利者が特許権侵害訴訟において主張する請求項につき、国務院特許行政部門により無効の決定が下された場合には、特許権侵害紛争案件を審理する人民法院は、権利者の当該無効となった請求項に基づく訴えを棄却する裁定を下すことができる。前述の請求項を無効とする決定が、発効した行政判決によって撤回された旨を証明する証拠がある場合には、権利者は別途提訴することができる……」司法保護制度により、国務院特許行政部門が特許権の無効決定を下した後、特許侵害紛争事件を審理する裁判所は行政訴訟の最終結果を待たずに訴追を棄却する決定を下すことができる。また、権利者に「別途提訴可能」の司法救済手段を与える。


 本件について、中華人民共和国特許法の無効に関する規定により、最高人民法院の関連司法解釈を参照し、当該特許が無効と宣告された後、特許侵害紛争に関する行政裁決においても直接棄却することができることが明らかである。


(3)特許侵害紛争訴訟の審理における公平性と効率性を実現する。

 特許制度の目的は、特許権者の正当な権利と利益を保護し、イノベーション能力を向上させ、科学技術の進歩と経済社会の発展を促進することである。本件において、関連特許権が無効とされたが、特許無効決定が発効した行政訴訟判決によって取り消されたという証拠があれば、特許権者は別途行政裁決を請求することができ、依然として、その正当な権利と利益を効果的に保護することができる。一方、特許権が不安定な状態の下、当該特許権の保護の範囲内であると判断された市場競争主体は、権益が損害される可能性がある。


 本件の実務上、行政裁決の決定により、請求人の請求が棄却されたが、本件特許権が法律に従って回復された場合には、権利者は依然として行政裁決を再度請求できることを明確に示している。請求人にとっては、本件特許にか川ある侵害紛争が中止された場合、特許の有効性をめぐる行政訴訟事件の対応に専念することができるようなる。一方、無効決定が取り消された場合は、再度権利保護請求を提出することができる。被請求人にとっては、被疑侵害事件が先に解決されたことで、多大な時間と費用を費やし続ける必要がなくなり、正常な市場競争行為を行うことができるようになる。総じて言えば、この審理モデルは、特許確認手続きに起因する訴訟期間が長い問題を基本的に解決するだけでなく、権利者のその後の訴訟権利を確保し、紛争解決の公平性と効率性を実現することもできる。


出所:国家知識産権局公式サイト

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