製品の使用者は、製造者の先使用権に基づいて非侵害の抗弁を行うことができる
時間: 2023-09-28 アクセス数:

ーー(2022)最高法知行終839号


 最近、最高人民法院の知識産権法院は、特許侵害で訴えられた製品の使用者が先使用権を主張した上訴案を結審し、「特許侵害で訴えられた製品の使用者がその使用行為について、メーカーの先使用権に基づいて非侵害の抗弁を提起できると認定した。


 本件において、淄博中鵬環保科技有限公司(以下、中鵬公司)は、特許番号201920646395.0の「自己絶縁ブロック専用垂直切断装置」という名称の実用新案特許(以下、本件特許)の特許権者である。2021年12月10日、中鵬公司は臨淄広臨工貿有限公司(以下、広臨公司)が営利製品の自己絶縁ブロック生産用2台の装置を使用した行為が、本件特許を侵害したとして淄博市市場監督管理局(以下、淄博市監督局)に摘発して、特許侵害紛争解決申立を行った。2021年12月31日に、淄博市監督局は鲁淄市監知処字〔2021〕16号行政裁决(以下、被訴裁决)を下し、「被疑侵害製品の技術案は全体として本件特許権の保護範囲内になるが、広臨公司による被疑侵害製品の使用は先使用であり、しかも元範囲内での継続使用であるため、先使用権を行使する行為に該当し、特許権侵害にならない。」という意見を述べた。中鵬公司はこれを不服として、一審法院に行政訴訟を提起し、2台目の被疑侵害製品が合法的な出所がないため、先使用に該当しないと主張した。一審法院は、「広臨公司が2台目の被疑侵害製品の購入時期と供給元を証明する証拠を提出しなかったため、『元範囲内での継続使用』を証明できない。よって、広臨公司の先使用権による抗弁が成り立てない。」という判決を下した。その後、広臨公司はこれを不服として最高人民法院に上訴した。最終に、最高人民法院は、一審判決を取り消し、中鵬公司の訴訟請求を却下するという判決を下した。


 二審において、最高人民法院は、次のように意見を述べた。特許法第 75 条第 2 項には、「特許出願日以前に同様の製品を製造した場合、又は同様の方法を使用するか、あるいは既に製造と使用の必要準備を終えており、かつ当初の範囲内だけで引き続き製造、使用する場合は特許権侵害とは見なさない。」と規定されている。したがって、先使用者が元の範囲内で引き続き製造した製品や、特許方法により直接取得した製品は特許侵害製品にならず、特許出願日以前に先使用者が製造した製品も特許侵害製品に該当しない。さらに、先使用者が特許出願日前に既に製造した製品、当初の範囲内で製造した製品、または特許出願日以降に特許方法により直接取得した製品を第三者が使用、販売の申し出、または販売した場合も、特許権侵害行為に該当しない。本件において、関連証拠を総合的に考慮して、下記のように認定する。特許出願日以前に、2台の被疑侵害製品の製造者、すなわち山東東岳建材機械有限公司と常州市明傑建材設備製造有限公司は既に、被疑侵害製品を製造した。本件の被疑侵害製品は本件特許に関わる製品と同一の製品であるが、被疑先使用者が本件特許の出願日より前に製造したものである。よって、本件の被疑侵害製品も、先使用者が元の範囲内で引き続き製造した製品或いは特許方法により直接取得した製品と同様に、特許侵害製品に該当しない。


 先使用権は、特許法に明示的に規定された抗弁に用いられた権利であり、その主な目的として、正常な生産と運営を保護し、公平性を反映し、先願主義の欠点を補うことにある。上記の先使用権の目的を実現するためには、先使用権の保有者が元の範囲内で製造した製品、または特許方法により直接取得した製品の市場における正常な流通と取引の安全を保護する必要がある。製造者が先使用権者として先使用権を有している場合、その製造者が元の範囲内で製造した製品は侵害製品に該当しなく、またその後に当該製品を購入・使用した第三者も同様に特許権侵害にならない。先使用権者が元の範囲内で製造した製品や特許方法により直接取得した製品をその後購入したり使用したりすることが特許権侵害に該当すると判断される場合には、先使用権制度制定の趣旨に反することになる。よって、使用者は、その被疑侵害品の使用行為について、製造者の先使用権を主張することができる。

 

 最高人民法院が下した本件判決は、製造者が先使用権者である前提で、製品の使用者が先使用権で抗弁できることを明確にしたとともに、先使用権者の実施権を保護し、先使用権者の製造した製品が市場に正常に流通できないという不公平な結果を解消し、市場の取引秩序の安定化にも役立つ。


出所:最高人民法院知識産権法廷公式サイト

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