侵害者に明らかな悪意があり、その侵害行為がビジネスチャンスを直接決定した場合の侵害による利益の算定
時間: 2023-03-30 アクセス数:

——(2021)最高法知民終1363号


 上訴人が盎億泰地質微生物技術(北京)有限公司(以下、盎億泰公司)、英索油能源科技(北京)有限責任公司(以下、英索油公司)、羅氏、李氏であり、非上訴人が胡氏、張氏である技術秘密侵害事件において、最高人民法院知的財産権法廷は、英索油公司、羅氏、李氏、胡氏が権利侵害になっているため、直ちに侵害行為を停止し、経済的損失200万元及び合理的支出50.7万元を連帯して賠償するという最終判決を下した。


 本件において、盎億泰公司は「技術独占実施権付与契約」により本件技術秘密を取得し、微生物による石油とガスの探査に用いている。羅氏、李氏、胡氏、及び張氏は全て盎億泰公司の元社員であり、そのうち、羅氏が英索油公司の法定代表者である。原審法院は、英索油公司へ証拠保全を行った際に、以下の事実を発見した。李氏、胡氏が在席し、李氏のパソコンに保存している「微生物による石油・ガスの探査と採掘に関する技術規則」(起草者:羅氏、胡氏)が盎億泰公司の主張した秘密ポイント1、2、3、45、7、8、9、12の媒体内容と完全に一致しており、「微生物による石油・ガスの探査における海底堆積物の測定基準」が盎億泰公司の主張した秘密ポイント13~16の媒体内容と完全に一致しており、「施工プロセス」「1607と0333ブロック微生物による石油・ガスの探査プロジェクトの中間成果81」 と盎億泰公司の主張した秘密ポイント9の媒体内容と基本的に同じである。


 2017年5月に、英索油公司の洛克石油(中国)公司の洛克プロジェクトを落札した。この業務において、英索油公司が「微生物による石油・ガスの探査における海底堆積物の測定基準」を使用し、735万元を取得した。

 

 盎億泰公司は、一審で、英索油公司などが即座に侵害行為を停止し、自社の経済的損失588万元及び合理的な支出50.7万元を連帯して賠償し、張氏が10%以内の連帯責任を負うことを判決するようと請求した。


 一審法院は、盎億泰公司の主張した秘密ポイント1、2、9の内容、及び秘密ポイント13、14、16が技術秘密となり、英索油公司、羅氏、李氏が権利侵害となるので、英索油公司、李氏が盎億泰公司の経済的損失50万元と合理的支出25万元を連帯して賠償するという判決を下した。

 

 盎億泰公司は、上記判決を不服として、最高人民法院に上訴し、、英索油公司などが即座に侵害行為を停止し、自社の経済的損失200万元及び合理的な支出50.7万元を連帯して賠償し、張氏が10%以内の連帯責任を負うことを判決するようと請求した。一方、英索油公司なども不服として、盎億泰公司の訴訟請求を却下するようと請求した。


 最高人民法院は、二審において、下記のように認定し判決を下した。盎億泰公司の主張した秘密ポイント1、2、9の内容、及び秘密ポイント13、14、16が技術秘密となる。李氏のパソコンに保存している複数のファイルが技術秘密を含んでおり、また羅氏、胡氏がその中の一つのファイルの起草者であり、三人が守秘義務に違反し、英索油公司に本件技術秘密を披露した。英索油公司が洛克プロジェクトで本件技術秘密を使用し、また本件技術秘密の一部を企業標準として使用している。したがって、英索油公司、羅氏、李氏、胡氏が全て権利侵害となる。賠償額について、本件は元社員が新会社を起業して元会社の技術秘密を侵害した事件であり、英索油公司が実際の営業で盎億泰公司の技術秘密を使用し、明らかに主観的な悪意があり、また、本件技術情報の応用分野が微生物による石油・ガスの探査分野であり、競合他社が多い一般業務分野ではないので、英索油公司が不正により盎億泰公司のビジネスチャンスを奪ったことを推定できる。上記のような状況を考慮し、英索油公司が悪意による低価格入札を行ったかどうか、洛克プロジェクトで自社開発したその他の技術を使用したかどうか、および使用された技術秘密の技術貢献率は、いずれも補償額の算定に影響がない。既存証拠を結びつけて、洛克プロジェクトの入札における盎億泰公司の最終提案金額775万元×盎億泰公司の二つの海関連プロジェクトの平均利潤率43.85%で計算すると、盎億泰公司の損失がその請求額の200万元も超えた。また、英索油公司の洛克プロジェクトにおける実際の取得735万元×洛克プロジェクトの利潤率27.91%で計算するとしても、英索油公司の実際に獲得した利益が200万元を超えた。よって、最高人民法院は、英索油公司、羅氏、李氏、胡氏が盎億泰公司の経済的損失200万元を連帯して賠償するという判決を下し、また、合理的支出の主張を全額で支持した。


 本件において、羅氏、李氏、胡氏が全て盎億泰公司の元社員であり、そのうち、羅氏が英索油公司を新たに設立し、李氏が盎億泰公司に在籍中、羅氏を幇助して英索油公司を設立し、また、胡氏もその後、英索油公司の営業に参与した。さらに、李氏のパソコンで発見した被疑侵害ファイルが盎億泰公司の主張した秘密ポイントの媒体ファイル内容と完全に一致又は基本的に同じであるため、被疑侵害者が明らかな悪意があると認定できる。これに基づいて、二審では、「被疑侵害者に明らかに悪意があり、その技術秘密を侵害した行為により侵害者のビジネスチャンスの取得、または権利者のビジネスチャンスの喪失を直接決定した場合、侵害者の侵害による利益を計算する際に、原則上、技術秘密の侵害による利益への貢献率を考慮せず、全ての取得を侵害による利益とすることができる。」ことを明確にされた。


出所:最高人民法院知的財産権法廷公式サイト


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