北京知的財産権法院の判決、「レッドソール」の侵害者が権利者に500万元の賠償金を支払う
スリムなハイヒール、赤い靴底……自社のブランドであると思っていた「レッドソール」が他の靴会社に無断で使用されたため、クリスチャンルブタン(Christian Louboutin)は、北京知的財産権法院に提訴した。
最近、北京知的財産権法院は「レッドソール」に関わる不正競争紛争案について、一審判決を下した。判決で、クリスチャンルブタン社の「レッドソール」の商標名称と使用は、女性用ハイヒールの表底の赤い装飾デザインが、「一定の影響力を有する商品名」と「一定の影響力を有する装飾デザイン」を構成すると認定し、侵害者が侵害行為を停止し経済的損害を500万元及び合理的な支出44.5万元を支払う、販売者が合理的な支出5,000元を支払うという判決を下した。
本件経緯
クリスチャンルブタン社は1991年2月5日に設立され、主な業務として、あらゆる履物製品、モロッコの革製品、手袋、旅行製品、ギフトなどがある。クリスチャンは 1992 年から、赤い靴底の女性用ハイヒールをデザイン、製造、販売し始めた。
広東万里馬実業股份有限公司(以下、「万里馬公司」)は2002 年 4 月 19 日に設立され、主な業務として、生産、加工、製造、研究開発、デザイン、販売、およびオンライン販売、革製品、履物、バッグなどがある。
クリスチャンルブタン社は、「自社の赤い靴底を特徴とした女性ハイヒール商品が中国ないし全世界範囲で高い知名度を持っており、公衆に良く知られている。」と主張し、北京知的財産権法院に提訴した。クリスチャンルブタン社は、「レッドソール」などの複数のクリスチャンルブタン社の商品の販売を蘭歩婷上海貿易有限公司(以下、「蘭歩婷公司」)に授権した。クリスチャンルブタン社のハイヒールの表底の赤い装飾デザインが高い識別力があり、その女性用ハイヒール商品の独創的なデザインであり、クリスチャンルブタン社と唯一で安定した対応関係が形成されているため、一定の影響力を有する装飾デザインを構成している。それに、原告のクリスチャンルブタン社と蘭歩婷公司は、中国におけるビジネス活動で「レッドソール」をその商品名称として継続的に使用しており、また非常に高い知名度を持っているため、「レッドソール」は一定の影響力を有する商品名を構成している。
クリスチャンは、具体的に下記のように主張した。被告の万里馬公司が無断で製造し、被告の北京易喜新世界百貨有限公司(下記、「新世界公司」)の新世界百貨万里馬コーナー、天猫(Tmall)万里馬靴公式旗艦店及びsaint jack旗艦店でクリスチャンルブタン社のレッドソールのデザインと同じデザインの女性用製品を複数販売しており、また「レッドソール」をその商品名としている。この両被告の行為は原告の商業名声に便乗する悪意があり、不正競争防止法第6条第(一)項の規定に違反するため、両被告は対応する法的責任を負うべきである。
本件判決
北京知的財産権法院は、審理後、下記のように認定した。
第一、原告のクリスチャンルブタン社と蘭歩婷公司が不正競争防止法第6条により、保護を求める一定の影響力を有する商品名は「レッドソール」であり、一定の影響力のある装飾デザインは女性用ハイヒールの表底に使用されている赤い装飾である。当事者が本件と直接な利害関係があるかと判断するポイントは、当事者にとって本件の「レッドソール」商品名と赤い靴底に含まれる利益が、実体法保護の根拠があるかと判断することである。本件において、両原告が提出した証拠は、消費者にとって本件装飾デザイン及び商品名がクリスチャンルブタン社と安定した対応関係が形成されていることを証明できるため、本件装飾デザインと商品名の権利はクリスチャンルブタン社に属することを認定できる。但し、本件証拠は、蘭歩婷公司がクリスチャンルブタン社の代理商であることのみ証明できるが、本件装飾デザインと商品名が蘭歩婷公司と安定した対応関係が形成されていることを証明できない。よって、蘭歩婷公司が本件と直接な利害関係があることを認定できない。
第二、クリスチャンルブタン社が提出した証拠により、2011年から、クリスチャンルブタン社が中国大陸で靴類商品を販売し始め、その売上が9億元を超えていること、2003年から、中国大陸で「レッドソールの靴」商品を宣伝・報道し始め、報道機関に複数者の国内有名なメディアが含まれ、宣伝範囲が全国の多くの地域をカバーしていることを証明できる。したがって、上記証拠により、「レッドソール靴」商品と赤い靴底のデザインが高い市場知名度を有し、関連公衆の認識では安定した対応関係が形成されており、商品の出所を識別できる顕著な特徴があることを十分に証明できる。よって、クリスチャンルブタン社の「レッドソール靴」商品名及び赤い靴底のデザインが不正競争防止法第6条第(一)項に規定の「一定の影響力を有する」商品名と装飾標識に該当する。万里馬公司がクリスチャンルブタン社の「レッドソール靴」商品名及び赤い靴底のデザインと同一又は類似する標識を無断で使用する行為は、その商品がクリスチャンルブタン社と特定な関連があると消費者に十分に誤認させることができるため、不正競争防止法第6条第(一)項の規定に違反し、不正競争に該当する。
なお、蘭歩婷公司が本件と利害関係があるかの判断と、本件「レッドソール靴」商品名と赤い靴底のデザインの権利帰属の認定とは切り離せないため、訴訟の経済原則と便宜原則を考慮し、北京知的財産権法院は、本件判決書で提訴の却下に関わる事項を併せて処理してみた。即ち、蘭歩婷公司の提訴を却下する判決と、また万里馬公司が権利侵害を停止し、クリスチャンルブタン社に経済損失500万元、及び合理的な支出44.5万元を支払うという判決とを一括で下した。
出所:北京知的財産権法院