特許権侵害紛争における製造行為の認定について
時間: 2022-09-01 呉孟秋 アクセス数:

前書

製造行為は侵害製品の源であると思われる。製造行為が侵害行為に認定されれば、源から侵害行為を抑制することができるとともに、製造行為を実施した被疑侵害者から損害賠償をもらうこともできる。したがって、特許権侵害紛争において、被疑侵害製品を製造する行為に対する責任追及は、権利者にとって、権利行使のポイントになる。


但し、販売行為の認定は、通常、被疑侵害製品を公証購買すれば良く、比較的に容易であると思われるが、製造行為の証明と認定は複雑である。その原因として、製造行為が工場で行われており、しかも製造者が通常小売をしないため、権利者が証拠を収集することは難しい。また、侵害紛争において、更なる侵害責任を負うことを避けるために、通常、製造者は販売行為のみを認めるが、合法的な出所の抗弁などによりその製造行為を否定する。


現行の特許法には、製造行為の認定基準について明確に規定されていない。本稿では、最高人民法院(以下、「最高院」)の判例を以って、司法実践から特許権侵害紛争での製造行為の認定に考慮すべき事実と要素を紹介する。


判例分析

判例1

沈陽中鉄安全設備有限責任公司と、哈尔濱鉄路局減速頂調速系統研究中心(以下、哈鉄減速頂中心)、寧波中鉄安全設備製造有限公司(以下、寧波中鉄公司)との実用新案権侵害紛争の再審案【(2017)最高法民再122号】において、哈鉄減速頂中心と寧波中鉄公司が、寧波中鉄公司より型番が「tdj-205」の減速機を製造して哈鉄減速頂中心よりその製造した減速機を販売するという減速機供給契約を締結した。最高院は、「哈鉄減速頂中心が物理上で製造行為を実施しなかったが、寧波中鉄公司の製造行為をコントロールしている事実、及び、最終製品に哈鉄減速頂中心の専属製品の型番と会社名が付いている事実により、哈鉄減速頂中心が本件被疑侵害製品の販売者のみならず、製造者でもあると認定すべきである」という意見を述べた。


判例2

東莞市普尔信通信器材有限公司(以下、普尔信公司)、広東侨華科技有限公司と、北京四達時代軟件技術股份有限公司(以下、四達公司)との実用新案権侵害紛争の上訴案【(2019)最高法知民終796号】において、四達公司と普尔信公司が調達契約を締結しており、双方当事者は、被疑侵害製品が実際に普尔信公司より製造されたことに異議がない。最高院は、「四達公司が共同製造者であるか否かの認定は、四達公司と普尔信公司との調達契約が委託加工契約か売買契約かのみにより判断することではなく、四達公司の製品の型番、製品の標識、及び四達公司と製品供給者との協力の形などにより、総合的に判断すべきである。四達公司が製造者の身分で外部に製品を販売し、しかも四達公司が普尔信公司に技術案を提供した可能性があることを証明した証拠があれば、四達公司と普尔信公司との間の内部契約関係が四達公司の外部に対して負うべき製品製造者の責任に対抗できない。四達公司が技術案を提供したことを確認できる場合、被疑侵害製品に普尔信公司の商標が付いているか否かは、四達公司と普尔信公司が被疑侵害製品の共同製造者であると認定することに影響がない。」という意見を述べた。


判例2

東莞市普尔信通信器材有限公司(以下、普尔信公司)、広東侨華科技有限公司と、北京四達時代軟件技術股份有限公司(以下、四達公司)との実用新案権侵害紛争の上訴案【(2019)最高法知民終796号】において、四達公司と普尔信公司が調達契約を締結しており、双方当事者は、被疑侵害製品が実際に普尔信公司より製造されたことに異議がない。最高院は、「四達公司が共同製造者であるか否かの認定は、四達公司と普尔信公司との調達契約が委託加工契約か売買契約かのみにより判断することではなく、四達公司の製品の型番、製品の標識、及び四達公司と製品供給者との協力の形などにより、総合的に判断すべきである。四達公司が製造者の身分で外部に製品を販売し、しかも四達公司が普尔信公司に技術案を提供した可能性があることを証明した証拠があれば、四達公司と普尔信公司との間の内部契約関係が四達公司の外部に対して負うべき製品製造者の責任に対抗できない。四達公司が技術案を提供したことを確認できる場合、被疑侵害製品に普尔信公司の商標が付いているか否かは、四達公司と普尔信公司が被疑侵害製品の共同製造者であると認定することに影響がない。」という意見を述べた。


上記の判例から見ると、現行の司法実践において、被告の製造行為を証明する証拠がない場合、被告が製造行為を実施したか否かの認定は、主に下記の要素を考慮する。

 

1.被疑侵害製品又はその包装、製品仕様書などに記載の被告より製造したことを示す情報、被疑侵害製品に付けられている商標、製品型番は、被告が製造行為を実施した直接的な証拠とすることができる。また、被告の業務範囲に製造が含まれる場合、その証明力が更に強くなる。但し、十分な反証がある場合は除く。


2.販売行為を実施した被告の合法的出所の抗弁が成り立てない場合、製品を供給した製造者と共同製造行為を実施したか否かの認定は、被疑侵害製品に販売行為を実施した被告の情報が記載されていること、及び、特許により技術案を保護するよう技術案又は技術の要求を提供したことを証明できることの二つの要件により判断する。


まとめ

上記の分析を踏まえ、特許権者が権利行使する際に、被疑侵害者の製造行為を証明する直接な証拠を取得できない場合、その販売行為調査する際に、上記の2点を参考して証拠を収集することが望ましい。例えば、被疑侵害製品に記載の情報や被告の業務範囲など、なるべく完全な証拠チェーンを形成する。よって、高い証明力により、被疑侵害者の製造行為を証明することができる。


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