Furuta商標侵害に関わる行政訴訟再審案まとめ
時間: 2020-09-29

背景

本件再審請求人のフルタ製菓株式会社は、1961年、日本の大阪市に設立され、主にチョコレート、ビスケット、パイなどの生産販売を業としている。「Furuta」は再審請求人の創始者の古田兄弟の家族氏名の英語表示である。再審請求人は、設立から今まで「Furuta」を会社の主要商標として日本国内、及び国際市場で使用している。また、1999年に食品業界で初めて「食玩(玩具菓子)」をリリースし、当業界の販売に奇跡を起こした。その後、2001年に食品ヒット大賞「優秀ヒット賞」を受賞した。したがって、請求人は世界食品市場で非常に高い知名度を有し、中国の食品業界でも好評を受けている。中国の報道機関は、ニュース報道で請求人の名称を「Furuta」又は「Furuta製菓」と略称している。

 

1986年に、再審請求人は以前に使用していた一般フォントの「Furuta」を「furuta.jpgにデザインした。同年、新デザインの作品を商標出願し、1988年に登録された。1987年フルタ製菓株式会社は、当時の日本の郵政省が発行した広告付き葉書のスポンサーとなり、この葉書の広告部分にfuruta.jpgが使われ、日本全国に広く周知された後、furuta.jpgは食品業界の新聞、刊行物及び葉書に公的に使用されてきた。更に、再審請求人は2003年に台湾で「furuta.jpg」商標を登録したので、「furuta.jpg」に対する先行著作権を持っている。

 

再審請求人は、1993年から、中国(広東、福建、江蘇、浙江、上海など)で宣伝活動、及び「furuta.jpg」付きのチョコレート、ビスケットなどの商品の販売活動を行い続けている。2001年の中国「人民日報」市場版、2020年の「環球時報」、「世界経済」、2003年の「経理日報」、2004年の「中国商人」、「経理日報」などの報道機関は再審請求人の食品業界における著しい実績を報道した。よって、再審請求人及び「furuta.jpg」付きの商品は中国消費者の中で高い知名度を有しており、2001年の「商標法」第31条「既に使用され、一定の影響力がある商標」に関する規定を満たしている。


本件再審第三者の広東旺通食品有限公司は、1996年に設立した中国広東省の食品企業として、再審請求人の知名度を知っているものの、2005年2月6日に、再審請求人の著作権を有し、しかも一定の影響力がある「furuta.jpg」商標、商号と完全に同じである係争商標を出願した。更に、商標登録後、高額の譲渡費用を求め、また行政摘発、権利侵害訴訟を提起することで再審請求人を脅かした。これは、明らかに誠実信用の原則に違反する行為である。再審第三者の行為を制止しないと、再審請求人が長年の誠実経営で育てた商品に対する信用が損害されると共に、消費者の合法的権益も損害され、公平競争の市場環境も破壊される。


2010年から、再審請求人は係争商標に対して不使用取消審判と無効審判を請求し、その後、、一審、二審行政訴訟も提起したが、全て支持されなかった。


2017年に、再審請求人は北京市最高人民法院が下した二審判決を不服とし、再審を請求した。


本件の難点

本件は長年に渡っており、また新旧商標法の適用に関わっているので、法律条項の適用と証拠の改めて収集と整理が本件再審段階の肝要な問題になる。2001年商標法の第31条の規定により、「商標登録出願は、先に存在する他人の権利を侵害してはならない。他人が先に使用している一定の影響力のある商標を不正な手段で抜け駆け登録してはならない。」。ついては、係争商標の出願日前に、再審請求人がFuruta商標に対する先行権利を有し、中国大陸で一定の知名度と影響力を有したという再審請求人の主張を証明し、再審手続きを順調に開始するために、更に多くの有利な証拠を収集する必要がある。しかし、係争商標の出願日が2005年2月6日であり、今より12年も前のことであるので、フルタ製菓株式会社が2005年以前に既に中国で「Furuta」商標と商号を使用しており、しかも一定の知名度を有することを証明しようとすれば、12年前のフルタ製菓株式会社の中国における商品販売領収書、注文書などの販売記録及び報道機関における宣伝報道などを収集する必要がある。よって、如何に原審判決を破棄できる新証拠を収集するかは、本件の難点である。


弊所の対応

下記にて、本件再審段階における弊所が提出した再審代理意見と関連証拠について、まとめて説明する。


一、係争商標の出願日前に、再審請求人は既に中国で「Furuta」商標を使用し、また「Furuta」商標付きのチョコレート、ビスケット、パイなどの商品を宣伝しており、中国消費者の中で高い知名度を持っていた。よって、2001年「商標法」における「既に使用され、しかも一定の影響力がある商標」に関する規定に該当する。


したがって、係争商標の出願日前に再審請求人の「Furuta」商標が国内で既に一定の知名度と影響力を有したことを証明できる十分で有力な証拠を提供することは、本件における重要な一環である。但し、本件が長年に渡ったので、再審請求人の2000年以前の提携先会社が既に解散、分割又は合併されたので、証拠の収集は非常に難しい状況であった。弊所は国家図書館などの機構での検索、再審請求人への数回の現場証拠収集をした結果、ついに再審請求人の知名度に関わる非常に有力な証拠を収集することができた。


また、収集できた新証拠を持ち、当方は、「係争商標の出願日前に、再審請求人が既に「Furuta」を商標及び会社商号として宣伝、販売しており、中国食品業界の同業者及び関連消費者の中で比較的に高い知名度を有したので、食品業界の同業者と関連公衆に良く知られていた。」ことを主張した。


再審請求人の同業界の競合相手として、中国広東省にある再審第三者が、再審請求人及びその商標の知名度を知っているものの、再審請求人の先に使用した一定の影響力がある「furuta.jpg」商標と完全に同じ商標を抜け駆け登録したことは、明確に誠実信用の商業道徳に違反したので、停止させるべきである。また、2001年「商標法」第31条の規定により、係争商標を無効にすべきである。


二、再審請求人の「furuta.jpg」商標は簡単な英語文字の組合わせではなく、設計上で独創性があるので、「著作権法」に規定の作品に該当し、保護されるべきである。また、再審請求人が1986年に出願し、1988年に日本で登録した「furuta.jpg」商標は、その後、韓国、中国及び中国香港、中国台湾(最初の登録年は2003年である)でも商標として登録したので、より広く公開された。一方、係争商標のフォント、線の太さ、書き方などの何れも、再審請求人の著作権作品と完全に同じであることは、必ず偶然ではなく、明らかに再審請求人の作品を知っていた再審第三者の盗作行為である。よって、2001年「商標法」第31条の規定により、本件再審第三者の商標は再審請求人の先行著作権を侵害したので、無効にされるべきである。


三、係争商標が再審請求人の先行商号権を侵害した。再審請求人は、1961年に日本で家族企業を創始し、創始者である古田兄弟の姓を企業の商号にし、日本国の文化特色と強い文化的絆を有する。また、創始者の古田兄弟の姓は「ふるた」であり、その対応する漢字が「古田」で、対応する英語表記は「Furuta」である。更に、再審請求人の英語名称は「Furuta Confectionery Co., Ltd.」である。一方、再審第三者が中国食品企業として、文化上又は歴史上の如何なる関連もない前提で、国外の氏名の英語表記を商標として登録したのは、明らかに主観的な悪意がある。そして、再審請求人は、創立の最初から「Furuta」を企業商号と主要商標としており、国際市場への進出及び英語商号の使用にしたがって、その日本と中国の食品業界における知名度と評判も日々高くなってきた。よって、2001年「商標法」第31条の規定により、再審第三者の係争商標は、再審請求人が先に登録、使用し、しかも高い知名度がある商号権を侵害したので、無効にされるべきである。


四、再審第三者が係争商標を登録したのは、明らかに悪意による抜け駆け登録である。


係争商標の出願日前に、再審請求人は既に中国大陸(中国広東省、福建省、上海市、江蘇省、浙江省等の省市)に進出して宣伝及び販売活動を行い始めた。再審第三者が広東省にあり、食品業界の同業者として、主要商標と商号が「旺通」である前提で、再審請求人の先行権利を抜け駆け登録したのは、明らかに主観的な悪意がある。再審第三者の国家商標局における登録情報によると、再審第三者が抜け駆け登録したのは再審請求人の商標だけではなく、その他の権利者の知名商標もあるので、明らかに主観的な悪意がある。


再審請求人は、再審第三者の広東旺通公司が無効審判、一審及び二審段階で提出した証拠資料をチェックしたところ、再審第三者の登録商号が「旺通」であり、また、その年度報告、調達契約及び関連領収書などの証拠に記載したのは、全て「旺通」ブランド(WANTTONE)の商品であり、係争商標「Furuta」と如何なる関係もない。また、これらの証拠は、何れも再審請求人が係争商標に対する不使用取消審判及び無効審判を提起した日より遅いため、再審請求人が係争商標に対する不使用取消審判及び無効審判を請求する前に再審第三者が係争商標に対する実際の宣伝と使用をしたことがあると証明することができなく、再審第三者の広東旺通公司が登録した係争商標の出所が合法的であると証明することもできない。


五、まとめ

「Furuta」は、再審請求人の創始者である古田家族の姓であり、1961年に企業商号として登録されてから継続的に使用されており、世界食品業界で高い知名度がある。再審請求人は「Furuta」に対する先行商号権を有する。1986年に、再審請求人は、「Furuta」を更に作品の「furuta.jpg」にデザインして公的に発表したので、先行著作権を有する。再審請求人の「Furuta」商標付きの商品は日本だけではなく、世界食品市場でも人気である。再審請求人は、1993年から中国の食品展覧会に参加することにより「Furuta」付きの商品を既に宣伝し始めた。また、その優れたマーケティング戦略と高品質の商品により、再審請求人の「Furuta」商標と商号は中国と日本を含む東南アジアの隣国での知名度が非常に高くなってきた。


再審第三者は、中国広東省の食品業界の業者として、常習的に他人の知名商標を抜け駆け登録する客観的歴史と主観的故意を有する。再審請求人の当業界における高い知名度を知っているものの、再審請求人の先に使用し、一定の影響力がある商標のフォント、線の太さ及び設計と完全に同じである商標を抜け駆け登録した。これは、明らかな盗作と抜け駆け登録行為であり、誠実信用の原則に違反した。この行為は、関連消費者に商品の出所を誤認させるので、再審請求人が長年の誠実経営で育てた商標ブランドと商品に対する信用を損害したと共に、結局、市場秩序を混乱させ、我国の商標法が守っている誠実信用の商業道徳、及び抜け駆け登録行為を禁止する立法趣旨と目的に反した。したがって、この行為を制止すべきである。



最高人民法院の判決


最高人民法院は、最初の立件、尋問、審理通知、正式開廷審理から、二年かけて大量の証拠を十分に確認した後、次のように本件に対する最終判決を下した。


(一)      上記フルタ製菓株式会社が提出した証拠は、係争商標の出願日前に、フルタ製菓株式会社が既に中国で「Furuta」商標を使用し、しかも一定の影響力を有したことを証明することができる。また、係争商標の商品区分であるキャンディ、クッキーなどがフルタ製菓株式会社の「Furuta」商標付きのチョコレート等の商品と類似している。なお、旺通公司は、同業界の会社として、フルタ製菓株式会社及びその先に使用し一定の影響力がある「Furuta」商標を知り得るものの、係争商標を登録した。これは、不正な手段で他人の先に使用し一定の影響力がある商標を抜け駆け登録する行為に該当し、2001年商標法第31条の規定に違反した。即ち、フルタ製菓株式会社の再審請求理由が成立する。


(二)      フルタ製菓株式会社が提出した証拠は、係争商標の出願日前に、フルタ製菓株式会社が既に「Furuta」を商号として使用し、しかも一定の知名度があることを証明することができる。また、係争商標はフルタ製菓株式会社の先に使用した商号と同じであり、係争商標の商品区分であるキャンディ、クッキーなどはフルタ製菓株式会社のチョコレート等の商品と類似している。したがって、係争商標を登録した行為は、フルタ製菓株式会社の先行商号権を侵害した。即ち、フルタ製菓株式会社の再審請求理由が成立する。


総じて言えば、フルタ製菓株式会社が提出した新証拠は、係争商標の登録が2001年商標法第31条の規定に違反したことを十分に証明することができる。被告の審決、及び一審、二審の判決における結論は誤っているので、是正すべきであり、また係争商標を無効にすべきである。


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