悪意の商標出願に対する中国知的財産管理部門の対応策
時間: 2018-06-26

悪意の商標出願に対する中国知的財産管理部門の対応策


劉璐璐 李麗芳


 最近、北京知識産権法院は、「image002.jpg」商標の拒絶査定不服審判一審案件において、初めて引用商標の商標権者を第三者として取り入れて訴訟に参加させるように通知した。法院は、引用商標第14330119号「POPSTAR」は悪意による抜け駆け登録に該当するかどうかとの事実認定、及び本件の裁判結果は引用商標の商標権者とは利害関係があると考え、『行政訴訟法』第29条第1号の規定により、第三者として訴訟に参加することを引用商標の商標権者に通知した。


 判決書には、法院は「商標制度中の先願主義が適用される前提は、登録行為は合法であって、引用商標は係争商標の冒認出願で誠実信用原則に違反した情状は存在してはならない。引用商標の登録は合法でない場合、係争商標登録の障害になるわけにはいかない」と認定した。


 本件に拒絶査定不服審判行政訴訟手続きを突破したことは、司法機関は先行権利者を保護する、及び悪意による抜け駆け出願を絶対許せない決心を体現している。


 今回、本件をきっかけにして、中国の知的財産管理部門が悪意の商標出願への対応方法を紹介する。

 

一、冒認出願を抑制するための法的根拠

 2013年に改訂された『商標法』は冒認出願への抑制を更に強化した。

  • 第7条誠実信用の原則を増加。

  • 第15条に第2号「同一又は類似の商品について登録出願された商標が、他人により先使用されている未登録商標と同一又は類似し、出願人は、当該他人と前項の規定以外の契約、業務関係又はその他の関係を持っていることにより、当該他人の商標の存在を明らかに知っていて、当該他人が異議を申し立てたときは、その登録をしない。」を増加。悪意による抜け掛け出願に更に全面的な打撃を与える。

  • 第19条「商標代理機構は、誠実信用の原則に従い、法律・行政法規を遵守し、被代理人の委託に基づいて商標登録出願又はその他の商標関連事項を取り扱わなければならない。代理の過程において知り得た被代理人の営業秘密については、守秘義務を負う」を増加。商標代理機構の代理行為を規範化にして、冒認出願を阻止する。

  • 第32条「商標登録出願は、先に存在する他人の権利を侵害してはならない。他人が先に使用している一定の影響力のある商標を不正な手段で抜け駆け登録してはならない。」

  • 第44条「登録された商標が、この法律の第十条、第十一条、第十二条の規定に違反している場合、又は欺瞞的な手段若しくはその他の不正な手段で登録を得た場合は、商標局は当該登録商標の無効宣告を行う。その他の単位又は個人は、商標評審委員会に当該登録商標の無効宣告を請求することができる。」

  • 第45条「既に登録された商標が、この法律の第十三条第二項及び第三項、第十五条、第十六条第一項、第三十条、第三十一条、第三十二条の規定に違反した場合、商標の登録日から5年以内に、先行権利者又は利害関係者は、商標評審委員会に当該登録商標の無効宣告を請求することができる。悪意のある登録であるときは、馳名商標所有者は、5年間の期間制限を受けない。」

 

二、行政審査(商標局・商標評審委員会)による冒認出願への打撃

 (一)商標出願の審査際に、著しい悪意があると認定された商標出願に対する審査を厳しくにして、自発的に拒絶する。

 主に以下4つの情状がある。

  • 周知商標にフリーライドした出願を拒絶する。

  • 普通名称、専門用語などを大量に出願して、公共資源を占有する不正意図がある出願を拒絶する。

  • 有名人の氏名など他人の先行権利を出願した悪意の出願に対して、厳しく審査して、自発的に拒絶する。

  • 同一企業に対して繰り返しの、連続的な冒認出願に対する審査を厳しくにして、先行の異議申立、無効審判請求の判例を参考して自発的に拒絶する。

 

 (二)商標異議申立を厳しく審査する

  • 周知商標にフリーライドした出願を集中的に厳しく審査する。

  • ブラックリスト制度を設ける。

  • 商標冒認出願など不誠実な行為に打撃を与えるために、悪意の出願、悪意の異議申立などの行為に対して「ブラックリスト」制度を設け、信用管理システムを導入した。

 

 (三)商標評審審理の際に冒認出願への打撃を強化する

  • 法律の適用を整える。

  • 知名度を持っている先行商標・標識への保護を強める。

 

三、司法審査による冒認出願への制止

 (一)司法解釈と指導判例を併せ用いる

 最高人民法院は商標の悪意出願を非常に重視していて、関連司法解釈を制定した。2017年3月1日から施行した『最高人民法院の商標権の付与、確認をする行政事件の審理における若干の問題に関する規定』の重要内容の1つは、誠実信用原則を提唱、先行権利への保護を強調、悪意の出願を防止、商標出願及び権利付与の良好的な秩序を維持することである。また、最高人民法院は、具体的な案件への裁判や典型的な判例の公布などにより悪意の出願を制止するための規則を明確する。

 

 (二)手続きの革新

 拒絶査定不服審判一審案件において、引用商標の商標権者を第三者として取り入れて訴訟に参加させることは、従来の原告と被告のみに参加させる訴訟、及び請求商標と引用商標は類似商品における類似商標に該当するかどうかのみを審査することに比べて、手続き上の重大な革新を実現した。この手続きの革新は司法実務における誠実信用原則の適用を体現し、先行権利者の利益を保護することができる。

 

 中国の商標制度は、先願主義を採用しているため、近年、誠実信用原則に違反する冒認出願、他人先行権利に対する侵害、公共資源を占有する問題は日に日にひどくなっている。中国の知的財産部門は商標に関する立法、行政審査及び司法裁決の環節から、冒認出願への抑制及び打撃を強化している。


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