特許侵害防止調査を行う際の注意事項について
時間: 2020-08-21 柳涛 賈旭 アクセス数:

特許法改正において特許権侵害懲罰的損害賠償制度[1]が追加されることに従って、侵害防止調査の重要性が更に重視されるようになった。ここで、侵害防止調査を行う際の注意事項を紹介する。

 

一、精度と再現率

侵害防止調査の最終の目的は、侵害になるか否かを判断することである。したがって、侵害防止調査を行う際に、特に再現率を重視する必要がある。そうでなければ、初めから関連特許を漏れる可能性がある。また、それと共に、再現率にも注目しなければならない。なぜなら、再現率が低いと、ノイズが多いため、作業のボリュームが多くなる。よって、侵害防止調査において、精度と再現率の両方とも高くする必要がある。

 

どのように精度と再現率の両方とも高くすることができるか?検索式の全面性と正確性による。

 

検索式の全面性と正確性を保証するために、多数の特許データベースを選択し、また語義検索等の方法で補助検索を行うこと以外に、下記3点について、注意する必要もある。

 

1)分類番号とキーワードの選択

中国語には、数多くの同義語と類義語があり、更に反義語を使用することもあるため、検索式を作成する際に可能なキーワードを全て含めることが難しい。よって、検索する際に、関連特許を漏れることがよくある。なお、分類番号は前記の特許漏れる欠陥を補足することができる。但し、分類者が発明のポイントではなく、技術課題により分類番号を選択するため、通常、分類番号を入れるとノイズが更に多くなる。したがって、必ず適切な分類番号を選択することが重要である。その選択方法としては、分類表、ファミリー特許の分類情報を閲覧することなどがある。また、統計分析を補助方法として使用することもできる。更に、下位の分類番号を使用することもできる。

 

但し、精確な分類番号がない案件もあるので、その場合、キーワードで検索するしかない。したがって、キーワードを合理的に拡大することは漏れを回避する重要な手段になる。なお、キーワードを合理的に拡大する方法として、同義語、類義語で替えることに限らなく、技術効果や機能、解決しようとする課題、要素作用又は用途などの視点から更なるキーワードを抽出することもできる。

 

2)キーワードと分類番号との組合せ

反復検索を使用する戦略として、先ず、短くて精確な検索式を作成することである。例えば、最小の範囲のキーワードを名称又は要約に入れて限定するなど。そして、検索範囲を少しずつ拡大する。例えば、最小の範囲のキーワードを明細書に入れて、分類番号と合わせて限定するなど。ここで、注意すべきことは、検索式が以下の規則に遵う。同一の技術的特徴の分類番号とキーワードとの間には倫理和(OR)を使用するが、異なる技術的特徴の分類番号とキーワードとの間にはクロス積の倫理演算を使用する[2]

 

3)競合他社を出願人として補足調査を行う

ある場合には、主な競合他社を出願人として補足調査を行うことにより、検索式の不足による重要特許の漏れを回避することができる。

 

二、精査と粗査

検索式をデータベースに代入することにより、特許リストを得られる。そして、失効した特許(対象国又は地域の特許保護期限を考慮する必要がある)を除外してスクリーニングをする。なお、スクリーニングは、粗査と精査の二つの段階がある。

 

1)粗査に要するステップ

ステップ1:特許リストにおける発明の名称に対して、単語の頻度統計を行う。なお、中国特許の場合、先ず、発明の名称を単語に分解する必要がある。

 

ステップ2:技術課題/キーワードと明らかに関連がない高頻度語を抽出する。

 

ステップ3:抽出した技術課題/キーワードと明らかに関連がある又は関連がない高頻度語を、特許リストに代入して一部の特許を抽出する。

 

ステップ4:この場合、ステップ3で抽出した特許が「関連なし」の可能性が高いため、合理的な権利侵害紛争が発生する可能性がないと判断すれば、排除することができる。例えば、ある特許の各独立請求項には、それぞれ、少なくとも一つの明確な限定が含まれているが、対象特許に関わる製品は如何なる合理的な解釈でもその明確な限定を含む可能性がない場合、当該特許を排除することができる。

 

2)精査に考慮すべき要素

技術の関連性及び請求項の保護範囲により関連度の高い特許を抽出する。技術関連性とは、独立請求項に保護された技術案と技術事実とを比較して全体的に判断した技術の関連性である。具体的な考え方は、例えば、ある特許の請求項に調査対象技術が含まれているか否かを判断できない場合、この特許を保留する。なお、明らかに請求項の保護範囲外である特許(技術が同じとしても)について、直接に省略する。また、通常、請求項の保護範囲が実施例の具体的な製品の特徴より広いことも考慮すべく、必要な場合は、明細書を読み込んで判断する。

 

三、スクリーニング結果のチェック・検証

スクリーニング結果は、二つの極端状況になる可能性がある。一つは、関連特許が非常に多い。もう一つは、関連特許が非常に少ない。

 

関連特許が非常に多い状況になった場合、侵害リスクの判断結果の正確性を保証するために、対象製品を更に確認し、技術の細かいところを明確にした後、抽出した特許を改めて判断する必要がある。

 

関連特許が非常に少ない状況になった場合、関連技術の細部まで明確にして、対象製品の技術案に最も近い特許であることを検証する必要がある。また、FTO調査レポートを更に有力にするために、精度と再現率の両方とも高いことを検証する必要もあり、スクリーニングの基準と過程に問題がないかとチェックする必要もある。

 

スクリーニングの結果(抽出した特許件数、特許技術に関わる状況、精度と再現率の検証結果、依頼先がスクリーニング結果を認可するか否か等)を総合的に考慮して、調査終了の時点を判断することができる。なお、問題がある場合、補足として、実際の状況に応じて追加調査、スクリーニングなどを行う必要がある。

 

注:

[1] https://baijiahao.baidu.com/s?id=1627769396551845569&wfr=spider&for=pc

[2] 王吉霞. 特許権侵害防止調査の調査方法検討

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