最高人民法院:実用新案権における機能性特徴内容の認定
時間: 2022-05-27 アクセス数:

——(2021)最高法知民終411号


最高人民法院知的財産権法廷が1件の実用新案権侵害訴訟を結審した。対象実用新案権に、機能性特徴の「現像層」に係わっており、明細書には「現像層」の組成、調合等の非形状、構造、或いはそれらの組合せの技術的特徴が開示された。

  

最高人民法院は、「実用新案において、機能性特徴を実現するために限定された、明細書及び図面に記載された機能、効果に不可欠な形状構造の特徴と非形状構造の特徴が、いずれも機能性特徴に対して実質的な限定作用を有し、いずれも機能性特徴の内容になり、侵害判定の際に考慮すべきである。」という意見を述べた。


イ号製品の淡い三色メッシュ表面で構成されている現像層は、接着剤と石粉からなるが、当該接着剤と石粉は、上記明細書に記載の「現像層」の具体的な実施形態及びそれと同等する実施形態と同様な技術的特徴があるか否かについて、特許権者が証明しなかった。よって、上訴を却下し、原審判決を維持した。


胡氏が2010年8月10日に国家知識産権局に、「多機能プラスチック筆記用ボール紙と筆記用具」という名称の実用新案(以下、対象実用新案という)を出願した。そして、2011年5月4日に授権公告された。特許番号はZL201020293455.4である。


対象実用新案の請求項1:プラスチック紙またはプラスチックボール紙をベースとする多機能プラスチック筆記用ボール紙であって、プラスチック紙またはプラスチックボール紙の片面または両面がマット処理されてマット層を形成し、現像層が片面のマット層と接着して接合されていることを特徴とする多機能プラスチック筆記用ボール紙。請求項2:現像層が、1層または2層の石粉混合層と接着した後、片面のマット層と接着して接合されていることを特徴とする請求項1に記載の多機能プラスチック筆記用ボール紙。


胡氏が2019年9月16日に浙江省杭州市中級人民法院に訴訟を提起し、「イ号製品が対象実用新案の請求項2の保護範囲内になることを主張し、また、対象実用新案の請求項2の現像層が機能性特徴であることを明確にした。杭州市中級人民法院は、「イ号製品の現像層が1層または2層の石粉混合層と接着した後、ベースと接着して接合されていることであるか否か、及びイ号製品の現像層が対象実用新案の現像層の構成公式を使用したか否かは、イ号製品の現状のみに基づいて確認できない。」という意見を述べ、胡氏の全ての訴訟請求を却下した。


胡氏は、一審判決を不服として、最高人民法院に上訴したが、最高人民法院は上訴を却下して、原審判決を維持した。


最高人民法院は、下記のように意見を述べた。「現像層」の構成方式について、争点が、実質的に、実用新案が製品の形状、構造又はそれらの組合せのみを保護すること、明細書第【0054】、【0057】~【0061】段落に記載の現像層の組成、等の非形状、構造、或いはそれらの組合せの技術的特徴が、「現像層」技術的特徴に確定された内容に解釈すべきかということである。実用新案において、機能性特徴に係る実施形態における非形状、構造、或いはそれらの組合せの技術的特徴は、機能、効果の実現に不可欠である場合、依然として、当該機能性特徴の保護範囲に対して限定作用がある。実用新案権製品の形状、構造又はそれらの組合せを保護する権利であるという定義が、機能、効果の実現に不可欠な実施形態における形状、構造或いはそれらの組合せの技術的特徴の限定作用を十分に否定することができない。


対象実用新案の請求項2に記載の「現像層」は機能性特徴であり、その明細書第【0054】、【0057】~【0061】段落には、現像層の原料、調合などが詳しく記載されいる。イ号製品の淡い三色メッシュ表面で構成されている現像層は、接着剤と石粉からなる。したがって、胡氏は、上記明細書に記載の「現像層」の具体的な実施形態における「現像」の実現に不可欠な技術的特徴と比べて、当該接着剤と石粉に係る技術的特徴が基本的に同様な手段で同様な機能を実現し、同様な効果に達成すること、及び当業者が被疑侵害行為が発生する際に創造的な労働をせずに想到できることを証明しなければならない。


本件において、機能性特徴を実現するために限定された、実用新案の明細書及び図面に記載された機能、効果に不可欠な形状構造の特徴と非形状構造の特徴が、機能性特徴に対して実質的な限定作用があることを明確にした。今後の実用新案における機能性特徴の内容の認定に対して、重要な参考になる。


出所:最高人民法院知的財産権法廷公式サイト

返回顶部图标