商標権の共有とは、1つの商標権を2名以上の権利者が共同で保有することを指し、個人と個人、法人と法人、個人と法人の共同のいずれも可能です。商標権の共有について、中国商標法第5条では、「二以上の自然人、法人又はその他の組織は、商標局に共同で同一の商標登録を出願し、共同で当該商標権を享有及び行使することができる」と規定されています。
商標権の共有は、「共同で出願する」と「商標権の持分を譲渡して共同名義にする」という二つの方法で実現することができます。商標権が共有に係るときは、以下の点に留意する必要があります。
各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その持分を譲渡することができません。商標局に譲渡手続を行う際には、共有者全員で手続きを行う必要があります。共有者全員で手続きをしていない場合には、譲渡申請が却下されます。
商標局に商標権の更新登録または登録放棄などの手続きを行う際に、共有者全員で手続きを行う必要があります。また、各共有者の名称や住所が変更され、商標局に変更手続きを行う際に、共有者全員で手続きを行う必要もあります。
商標権が共有に係るときの使用許諾について、(2015)民申字3640号商標権侵害紛争案において、最高法院は下記の見解を示しました。
【商標権は私権であり、商標権が共有されている場合、その権利行使の規則は意思自治の原則に従うべきであり、共有権利者が協議して一致して行使しなければならない。合意に達することができず、正当な理由もない場合、いかなる共有権利者も他の共有権利者が商標を通常の使用許諾で他人に使用させることを妨げてはならない。】
上記の判例を踏まえて、共有者が商標権の行使規則について合意をしていない場合、一般的には、各共有者は、他の共有者の同意を得ないで他人に非独占的通常使用権を許諾することができると思われますが、他の共有者の同意を得なければ、他人に独占的使用権または排他的使用権を許諾することができません。
共有商標が侵害された場合、各共有者は、裁判所に単独で侵害訴訟を提起することができるかどうかについては、法律では明確な規定がありません。各共有者は単独で侵害訴訟を提起する場合、裁判所に他の共有者の同意を得ていることを証明する資料の提出を求められる可能性があります。
商標権の共有により、共同事業者が商標の所有権と使用権を共有することができ、共同事業者間での権利侵害のリスクを軽減し、ブランドの普及と認知度の向上に寄与する可能性がある一方で、一方の共有者が商標の使用を不適切に行った場合、他の共有者にも悪影響を及ぼす可能性があります。また、各手続きを行う時や権利行使の際に手続きが複雑になる可能性はあります。商標権を共有したい場合、事前に共有者間での商標の使用について明確な合意を得るのは重要ですので、そのために、事前に商標の使用範囲、管理方法、紛争発生時の解決方法等を定めた契約書を作成することをお勧めいたします。