発明専利出願優先審査に関する「Q&A」
時間: 2019-07-30 李海霞 殷爽 アクセス数:

背景

国家知識産権局は、2017年6月に、<専利優先審査管理弁法>(以下、「弁法」と称す)を公布し、本弁法は 2017年8月1日より施行される。本弁法により、優先審査される案件の場合、発明専利出願ではファーストOAが45日以内に短縮され、1年以内に最終結論を得ることができる。


本弁法が施行された前に、出願人は早く審査され権利化できることを望んでいる場合、通常、専利審査ハイウェイ(PPH)を利用する。但し、PPHを利用すると、ファーストOA発行するまでの期間を短縮できるだけで、審査周期全体を短縮できるとはいえない。そこで、本弁法の施行により、出願人はさらに便利な早期審査のルートを利用することができるようになり、審査周期全体が大幅に短縮できる。


本文において、実際処理した案件に基づき、Q&Aの方式で実体審査段階(優先審査手続は、復審案件にも適用できる)における発明専利出願の優先審査手続について解読してみる。


(1)

Q:出願人は、いつ、優先審査を請求できるか?

A:発明専利出願が実体審査段階に入る旨の通知書を受領した後に、優先審査を請求できる。

解釈:電子手続で出願した発明専利出願であり、且つ、実体審査を請求(請求費用納付済み)し、関連費用納付済みの出願である場合、優先審査を請求できる。

実際には、優先審査を請求する際に、「発明専利出願が実体審査段階に入る旨の通知書」及び実体審査費用納付領収書のコピー件を提出する必要があるため、「発明専利出願が実体審査段階に入る旨の通知書」を受領した後に、優先審査を請求すべきである。

また、出願人は、優先審査を請求した後に、専利法実施細則第51条第1項の規定に基づき、出願書類を補正すると、優先審査手続が中止される可能性があるため、自発補正をしようとする場合、自発補正をしてから、優先審査を請求することをお勧めする。


(2)

Q:優先審査は、どのような適用条件があるのか?

A:六つの適用条件のいずれか一つを満足した場合、優先審査を請求できる。

解釈:本弁法の第3条の規定により、以下のような場合において、優先審査を請求することができる。

(一)省エネルギー・環境保護、次世代情報技術、バイオ、ハイエンド設備製造、新型 エネルギー、新材料、新型エネルギー自動車、スマート製造などの国の重点発展産業に 係る場合。

(二)各省級及び設区市級人民政府が重点的に奨励している産業に係る場合。

(三)インターネット、ビッグデータ、クラウドコンピューティングなどの分野に関わり、かつ技術又は製品の更新速度が速い場合。

(四)専利出願人又は復審の請求人が、実施の準備を完了している又はすでに実施している、もしくは他人がその発明創造を実施中であることを証明する証拠を有している場合。

(五)同じ主題について、初めて中国で専利を出願し、その他の国又は地区に対しても出願を提出する場合における、中国での最初の申請である場合。

(六)国の利益又は公共の利益にとって重要な意義があり、優先審査の必要があるその他の場合。

一つ以上の条件を満足する場合、各条件に係る書類準備の煩雑度を考慮しながら、請求理由を選択して優先審査を請求することを提案する。

実際処理した案件の経験により、上記条件のうち、第(一)、第(四)、第(五)の条件は、比較的に満足しやすいである。満足しやすい順序として、(五)---(一)---(四)となる。

第(五)の条件の場合、必要とする証明書類は、比較的に少ない。例えば、PCTルートでその他の国又は地区に対しても出願を提出する場合に、如何なる証明書類を提出する必要がなく、優先審査請求書にPCT国際出願番号を記入すればよい。また、第(五)の条件の場合のみ、国務院の関係部門又は省級知識産権局の推薦意見を必要としない。したがって、優先審査を請求しようとする案件は、第(五)を含む複数の条件を満足する場合、第(五)の条件を請求理由として優先審査を請求することを提案する。


(3)

Q:優先審査を請求する際に、提出する書類は?

A:出願人の身分証明書類、請求書、従来技術の資料、実体審査通知書及び実体審査費用納付領収書、関連する証明書類及びその説明、委任状(代理機構が優先審査手続をする場合、必要とする)。

解釈:優先審査を請求する際に、通常、以下の書類を提出すべきである。

1.      出願人の身分証明書類:個人の場合、身分証明証原本及びコピー件、企業の場合、押印ずみの営業証コピー件、事業単位の場合、押印ずみの事業単位法人証書のコピー件をそれぞれ提出しなければならない。

2.      優先審査請求書:専利出願情報、請求理由、添付書類リスト、添付書類情報(従来技術リスト)など。

3.      従来技術資料:発明専利出願の最も近い従来技術など。

4.      発明専利出願の実体審査段階に入る旨の通知書、実体審査費用納付領収書のコピー件。

5.      関連する証明書類:第(一)、(二)、(三)、(四)、(六)の理由に基づき優先審査を請求する場合、関連する証明書類を提出する必要がある。例えば、第(一) の理由に基づき優先審査を請求すると、<戦略性新興産業重点製品及びサービス指導目次>(《战略性新兴产业重点产品和服务指导目录》)をダウンロードして、その中の関連内容を証明書類として提出する。第(五)の理由に基づき優先審査を請求すると、PCTルートでその他の国又は地区に対しても出願を提出する場合に、如何なる証明書類を提出する必要がなく、優先審査請求書にPCT国際出願番号を記入すればよいが、パリールートの場合には、その他の国又は地区の専利審査機構の受理通知書を提出する必要がある。

6.      証明書類の説明:どの理由に基づき、どのような証明書類を提出したことについて、簡単に説明を行い、出願人のサイン又は押印を必要とする。

7.      代理機構に依頼して優先審査を請求する場合、授権委任状を提出する必要がある。


(4)

Q:提出した書類が規定に適合しない場合、どうすればよいのか?

A:再度提出するチャンスがある。

解釈:大部分(上記第(五)の状況を除く)の優先審査請求は、国務院の関係部門又は省級知識産権局の推薦意見を必要とし、中関村知識産権促進局(以下、「促進局」と称す)は、北京市の専利出願優先審査の推薦を担当する。筆者の経験によると、提出した書類が規定に適合しない場合、促進局は、通常、電子メールで審査意見を通知する。審査意見においては、具体的な問題が指摘され、且つ、補正又は補充の提案も記入している。したがって、出願人は、その審査意見に基づいて、適当に補正又は補充書類を追加して、再度、優先審査を請求することができる。問題がなければ、促進局は、電子メールでその旨を通知する。その後、知識産権局により、正式な「専利出願優先審査通知書」が発行される。その通知書のサンプルは、以下のとおりである。


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また、「専利出願優先審査推薦業務電子プラットフォーム」を利用して、オンラインで「現在状況」を確認することができ、関連規定に適合しない場合、審査意見に基づき、補正資料を提出できる。


(5)

Q:優先審査のデメリットは?

A:早く権利化する可能性があるが、早く拒絶される可能性もある。

解釈:優先審査の案件に対して、1年以内に最終結論を出さなければならないため、1年に以内に拒絶される可能性もある。従って、優先審査を請求する前に、検索を行い、権利化の可能性について分析する必要がある。

また、OA応答する際に、応答期間及び応答戦略を慎重に注意しながら、対応しなければならない。例えば、期限が迫っている場合、審査状況により、権利化できる請求項を残して、拒絶される可能性のある請求項について分割出願で提出することが考えられる。


以上、筆者の実務経験に基づき、優先審査に関する幾つかの問題に対する簡単なまとめであるが、皆様のご参考になれば幸いなことと思っている。

 


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