PCT出願が国家段階に移行する際の援引について
時間: 2019-06-04 李佳佳 アクセス数:

 特許協力条約に基づく細則の規定によると、出願人がPCT出願を提出した際に付け落とした項目や内容がある場合、先行出願の対応する部分を援引することにより付け落とした項目や内容を追加し、元の国際出願日を保留することができる。しかし、中国には上記のPCT出願に関する規定がないので、PCT出願を中国に移行する際に援引により付け落とした項目や内容を追加し、元の国際出願日を保留する場合、特許局に認められない。

 

 即ち、PCT出願書類には援引により追加した内容がある場合、中国国家段階に移行する際に、下記の二つの選択がある。

 

 一、PCT出願の出願人が援引により追加した内容を保留しようとする場合、国家段階に移行する手続きを行う際に、移行声明において明確に記載しなければならなく、また中国における出願日を修正することを請求しなければならない。審査官は、国際局より転送した「援引項目又はその部分決定の通知書」(PCT/RO/114表)における記載を根拠として、114表に記載の転送日付を当該PCT出願の中国における出願日として確定する。また、改めて出願日を確定する通知書を発行する。なお、改めて出願日を確定したが、当該出願日が優先権日を12ヶ月も超える場合、審査官は当該優先権請求に対して優先権を要求していないと見なす通知書を発行する。

 

 二、PCT出願の国家段階に移行する手続きを行う際に出願書類に援引した内容を削除して、元の国際出願日を保留する。


 次に、二つのPCT出願実例で簡単に説明する。


 実例一

 あるPCT出願に援引により追加した内容がある。当該PCT出願の出願日は2017年6月20日であり、114表における転送日付は2017年7月17日であり、また優先権日は2016年8月5日である。


 上記一を選択する場合、当該PCT出願が国家段階に移行する手続きを行う際に、移行声明において援引による内容を保留することを明確に記載する必要がある。この場合、中国における出願日が2017年7月17日(優先権日からの12ヶ月以内である)になるが、出願人が先に請求した優先権を要求することができる。


 上記二を選択し、国家段階に移行する手続きを行う際に出願書類に援引した内容を削除した場合、元の国際出願日(2017年6月20日)を保留することができるとともに、PCT出願の出願人が先に請求した優先権を要求することができる。


 よって、本件については、上記一を選択すれば、援引による内容を保留することができるとともに、先に請求した優先権を要求することもできるので、有利である。


 実例二

 あるPCT出願に援引により追加した内容がある。当該PCT出願の出願日は2017年6月20日であり、114表における転送日付は2017年7月17日であり、また優先権日は2016年6月25日である。


 上記一を選択する場合、当該PCT出願が国家段階に移行する手続きを行う際に、移行声明において援引による内容を保留することを明確に記載する必要がある。この場合、中国における出願日が2017年7月17日になり、優先権日(2016年6月25日)からの12ヶ月を超えたので、出願人が先に請求した優先権を要求することができなくなる。


 上記二を選択し、国家段階に移行する手続きを行う際に出願書類に援引した内容を削除した場合、元の国際出願日(2017年6月20日)を保留することができるとともに、PCT出願の出願人が先に請求した優先権を要求することができる。


 よって、本件については、上記一を選択する場合、援引による内容を保留することができるが、PCT出願の出願人が先に請求した優先権を要求することができない。一方、上記二を選択する場合、出願人が先に請求した優先権を要求することができるが、援引による内容を保留することができない。したがって、PCT出願の出願人が十分に検討してから選択した方が良いと思われる。


 最後に、援引による内容を保留するか否かをPCT出願が中国国家段階に移行するに先立って決定し、移行声明(501表)に明確に記載しなければならない。その後、補正又は変更する機会がないため、PCT出願の移行指示を受領した後、即時に出願人に確認する必要がある。この点は極めて重要であるので、十分に注意した方が良い。

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