中国国家知的財産権局は、第4回の商標法改正の準備に向けて民間に商標法改正に対する意見を収集している。学者・弁護士・代理人から、同意書制度を制定上明文化にするという意見が多く挙げられた。
中国では、同意書制度について定めた法律や規定、又は審査基準はないが、実務上は審査官または裁判官は同意書を考慮し、同意書の提出による登録を認めることがある。
この文章には同意書の利用条件、利用する際の注意すべき点を紹介する。
同意書に対する審査は審判官又は裁判官の自由裁量によるもので、一般的には、次の要素に基づき、総合的に勘案する。
一、商標の類似程度
商標自体は一定の相違があり、ある程度区別できれば、同意書は認められやすい。
ニ、指定商品または役務の関連程度及び実際の使用における混同可能性
指定商品の機能、用途、販売レート、消費者などが違う場合、または指定役務の目的、内容と方式、場所、消費者などが違う場合には、実際の使用において、混同・誤認を生じさせるおそれが低い。
三、出願商標と引例商標の所有人の知名度
出願商標と引例商標の所有人はそれぞれ各自の業界または分野では一定の知名度を有する場合、消費者は双方商標を区別しやすい。
四、出願人の主観的悪意
出願人は主観的な悪意がなければ、実際の使用において引例商標との混同をできるだけ避けるはずである。
五、社会公共利益または市場秩序に対する影響
同意書の提出による出願商標の登録により、社会公共利益に対し損害をもたらす、または市場秩序に不利益をもたらすという証拠が存在しないという状況下では、同意書を尊重すべきである。
出願商標と引例商標がまったく同じである場合、または商標自体が非常に類似で、且つ指定商品が同一・類似する場合には、正常な市場秩序の保護や混同防止の観点で、同意書を提出し、引例商標の権利者は登録に同意したとしても、登録は認められない。
同意書を提出するにあたり次の点は注意されるすべきである。
1.新規出願の際に同意書を提出することが不可能であるため、拒絶査定不服審判の段階で提出することが一般的である。
2.同意書の記載内容は決まっていないが、普通は、以下の内容を記入する。
① 引例商標と出願商標の情報(出願番号、商標態様、区分、出願人の名称及び住所)
② 同意する出願商標の商品または役務範囲
③ 出願商標の登録及び使用を同意する旨(使用のみ同意すれば、不可)
3.引例商標の権利者が中国の個人・企業である場合、同意書の公証手続きが必要となり、引例商標の権利者が外国の個人・企業である場合、同意書の公証及び認証手続きが必要となる。
4.引例商標が共有商標であれば、すべての共有者から同意をもらわなければならない。
また、引例商標の権利者に同意書を求めたとしても、簡単には合意を得ることができない場合も多くて、特に中国企業または個人との同意書発行交渉は難しいです。交渉に当たっては合意が得られる可能性、金銭的条件等を総合的に判断した上で望むことが必要である。