商標無効審判事件における出所混同のおそれの考慮要素
時間: 2022-09-20 劉璐璐 アクセス数:

事案の概要:

 請求人油研工業株式会社は、被請求人の第40952615号「YUKEN KOGYO」商標(以下「本件商標」という)に対して、商標法第30条違反に該当するなどを理由として、異議申立てを提出した。国家知識産権局は、本件商標と引用商標は一部の指定商品は類似しないとして請求人の異議理由を不成立とし、一部商品での本件商標の登録を決定した。請求人は不服があり、無効審判を請求した。


 請求人は日本の業界最大手の油圧機器専業メーカーである。請求人の引用商標は請求人の核心となる商標であり、請求人の商号の一部でもある。引用商標の指定商品は第7類「油圧ポンプ、油圧弁、油圧要素」等である。


 被請求人「広州霞成貿易有限公司」は、油圧パイプ継手、油圧パイプの販売などを業とする者であり、2021年に社名を「油研科技(広州)有限公司」に変更した。本件商標の指定商品は第7類「発電機用ベルト; 機械用ベルト; 土木機械用ゴムクローラ」などである。

1663646080826.jpg

 無効審判において、国家知識産権局は、以下の理由により、本件商標は引用商標と出所混同のおそれがあるとして商標法第30条に該当すると判断し、請求成立の審決をした。

 

 請求人の引用商標1-3の「YUKEN」は独創性がある。本件商標は引用商標1-2の「YUKEN KOGYO」の字母構成と完全に同じで、引用商標3「YUKEN」と字母構成、称呼、意味合いなどの面において高度に類似し、シリーズ商標であると認識されやすいため、本件商標と引用商標1-3は類似商標になっている。本件商標の査定使用商品は引用商標1-3の査定使用商品と機能、用途、販売ルート、販売対象などにおいて類似する又は一定の関連性があるので、密切に関連している商品に属する。同時に、請求人が提出した宣伝・使用証拠は、本件商標の出願日の前に、請求人がその「图片4.jpg」商標に対して中国での宣伝と使用を行っていたことを証明することができ、請求人が提出した被請求人の商品紹介により、被請求人は主に油圧パイプ継手、油圧パイプなどの商品を販売しており、被請求人が同業界の経営者であるはずである。且つ、被請求人は第6類、第7類で請求人の「YUKEN」商標と類似する商標も多数出願しており、被請求人は請求人の商標及び製品を知っているはずである。このような場合、被請求人が請求人の各引用商標と類似する本件商標を出願した行為は偶然ではない。上記要素を総合的に考慮し、本件商標と引用商標1-3は同時に類似する又は関連性がある商品について使用することは、消費者に商品の出所について混同、誤認を生じさせやすくて、商標法第30条にいう「類似商品における類似商標」に該当する。


康信コメント

 本事件では、本件商標と引用商標の指定商品の関連性はそれほど高くないが、国家知識産権局は、請求人の「YUKEN」が造語であって独創性があること、請求人商標としての一定の知名度、関連公衆の注意力、被請求人の悪意等を総合的に考慮し、出所混同を生じさせやすいと判断した。


 1)     引用商標の顕著性

 商標の顕著性の強さは、関連公衆に対して混同を生じさせるかどうかということと密接な関連性を有する。商標の顕著性が強いほど、商標としての識別機能が高い。顕著性が強い引用商標は、標章に対する変更がなされても、関連公衆に混同を生じさせるおそれがある。


 2)     引用商標の知名度

 知名度を有する商標については、使用により、既に商品又は役務の出所と比較的に密接な関連性を生じている。後願の商標が、他人の比較的に高い知名度を有する先行商標を完全に含むものである場合、関連公衆に出所が同一又は関連性があると認識させるおそれがある。


 3)     関連公衆の注意力

 商品又は役務の価格、商品購入ルート又はサービスの提供方式などは、関連公衆の注意力に影響を及ぼす。価値が低い製品に対しては、関連公衆の注意力が低く、異なる商標の差異を識別する度合いは弱い。


 4)     被請求人の主観的意図

 被請求人は明らかに悪意がある場合、その他の要素が同一であるときに、関連公衆に対して混同をより生じさせるおそれがある。


 5)     その他の関連要素

 上述の要素のほか、被請求人の所在地域、商標の使用方式、被請求人と請求人が同業者であるか否かなども、出所について混同を生じさせやすいかの考慮要素である。


 商標標章と商品同士の類否は、出所混同の可能性に影響を及ぼす、最も根本的な要素であるが、無効審判において、混同を生じる恐れの有無は、上記要素に照らし、当該商標の指定商品の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断することになる。


返回顶部图标