最高人民法院による「中華人民共和国不正競争防止法」の適用に係る若干問題の解釈
時間: 2022-03-31 アクセス数:

「最高人民法院による『中華人民共和国不正競争防止法』の適用に係る若干問題の解釈」は、2022年1月29日に最高人民法院審判委員会第1862回会議で承認された。ここで公布し、2022年3月20日より施行する。

  最高人民法院

  2022年3月16日


法釈[2022]9号

最高人民法院による「中華人民共和国不正競争防止法」

の適用に係る若干問題の解釈



 不正競争行為により生じた民事案件を正確に審理するために、「中華人民共和国民法典」「中華人民共和国不正競争防止法」「中華人民共和国民事訴訟法」等の関連法律規定に基づいて、また審判実践を結び付けて、本解釈を制定した。


 第1条 事業者が市場の競争秩序を攪乱し、その他の事業者または消費者の合法的な権益を損ない、かつ不正当競争防止法第2章及び特許法、商標法、著作権法などの規定外の状況である場合、人民法院は、不正当競争防止法第2条を適用して認定することができる。


 第2条 生産・経営活動において、事業者と取引機会の争奪の可能性、競争の優位性を損なう可能性などの関係が存在する市場主体について、人民法院は、不正競争防止法第2条に規定された「その他の事業者」と認定することができる。


 第3条 特定の商業分野で普遍的に遵守され承諾されている行動規範について、人民法院は、不正競争防止法第2条に規定された「商業道徳」と認定することができる。


 人民法院は、案件の具体的な状況を結び付けて、業界規則又は商習慣、事業者の主観状態、取引相手の選択意思、及び消費者の権益、市場の競争秩序、社会の公共利益に対する影響などの要素を総合的に考慮し、事業者が商業道徳に違反しているか否かを法により判断する。


 人民法院は、事業者が商業道徳に違反しているか否かを判断する際に、業界の主管部門、業界の協会又は自律組織により制定された従業規範、技術規範、自律公約などを参考にすることができる。


 第4条 一定の市場知名度を有し、且つ商品の出所を区別する顕著な特徴を有する標識について、人民法院は、不正競争防止法第6条に規定された「一定の影響力のある」標識と認定することができる。


 人民法院は、不正競争防止法第6条に規定された標識が一定の市場知名度を有するか否かを判断する際に、中国域内の関連公衆に知られている程度、商品販売の時間と区域と数額と対象、宣伝の継続時間と程度と地域範囲、標識が保護を受ける状況などの要素を総合的に考慮しなければならない。


 第5条 不正競争防止法第6条に規定された標識に以下のいずれかの状況に該当する場合、人民法院は、それが商品の出所を区別する顕著な特徴を有しないと認定しなければならない。

 (1)商品の一般名称、図形、型番

 (2)商品の品質、主要な原料、機能、用途、重量、数量およびその他の特徴を直接的に示すだけの標識

 (3)商品自身の性質だけによりもたらされる形状、技術的効果を得るためだけに必要な商品の形状、および商品に実質的な価値を持たせるだけの形状

 (4)顕著な特徴に欠けるその他の標識


 前項の(1)、(2)、(4)に規定された標識が使用を経て顕著な特徴を得て、一定の市場知名度を有し、当事者が不正競争防止法第6条の規定に基づき保護を与えることを請求した場合、人民法院は、支持しなければならない。


 第6条 客観的に商品を描写、説明する理由で以下の標識が正当に使用されているが、当事者が不正競争防止法第6条に規定された状況に該当すると主張する場合、人民法院は、支持しない。

 (1)本商品の一般名称、図形、型番を含む

 (2)商品の品質、主要な原料、機能、用途、重量、数量およびその他の特徴を直接的に示す

 (3)地名を含む


 第7条 不正競争防止法第6条に規定された標識またはその顕著な識別部分が商標法第10条第1項に規定された商標として使用してはならない標章に該当し、当事者が不正競争防止法第6条の規定に基づいて保護を与えることを請求した場合、人民法院は、支持しい。


 

 第8条 事業者の営業場所の装飾、営業用具の様式、営業員の服飾などにより構成された独特のスタイルを有する全体的な営業イメージについて、人民法院は、不正競争防止法第6条第1項に規定された「装飾」と認定することができる。


 第9条 市場主体の登記管理部門が法により登記した企業名称、及び中国域内で商業に使用されている域外の企業名称について、人民法院は、不正競争防止法第6条第2項に規定された「企業名称」と認定することができる。

 

 一定の影響を有する個人事業主、農民専業合作社(連合社)、および法律、行政法規に規定されたその他の市場主体の名称(略称、屋号などを含む)について、人民法院は、不正競争防止法第6条第2項の規定に基づいて、認定することができる。


 第10条 中国域内において、商品の出所の識別のため、一定の影響を有する標識を商品、商品の包装又は容器、商品の取引文書、或いは広告宣伝、展覧、及びその他の商業活動に用いる行為について、人民法院は、不正競争防止法第6条に規定された「使用」と認定することができる。


 第11条 事業者が、他人の一定の影響を有する企業の名称(略称、屋号などを含む)、社会組織の名称(略称などを含む)、姓名(ペンネーム、芸名、訳名などを含む)、ドメインネームの主体部分、ウェブサイトの名称、ウェブページなどと類似する標識を無断で使用し、他人の商品であるまたは他人と特定の関連性があるという誤認を生じさせたので、当事者が不正競争防止法第6条第2項、第3項に規定された状況に該当すると主張する場合、人民法院は、支持しなければならない。


 第12条 人民法院は、不正競争防止法第6条に規定された「一定の影響力のある」標識と同一または類似すると認定する際に、商標同一又は類似の判断原則及び方法を参照することができる。


 不正競争防止法第6条に規定された「他人の商品であるまたは他人と特定の関連性があるという誤認を生じさせ」には、他人と商業連携、ライセンス使用、スポンサー、イメージキャラクターなどの特定の関連性があるという誤認させることを含む。


 同一の商品に、同一または視覚的に基本的に相違がない商品の名称、包装、装飾などの標識を使用することは、一定の影響を有する他人の標識と十分に混同させることができると見做さなければならない。


 

 第13条 事業者が以下の混同行為の何れか一つを実施し、他人の商品である又は他人と特定の関連性があるという誤認を十分に生じさせる場合、人民法院は、不正競争防止法第6条第4項に基づいて認定することができる。

 (1)不正競争防止法第6条第1項、第2項、第3項の規定外の「一定の影響力のある」標識を無断で使用する

 (2)他人の登録商標、未登録の馳名商標を企業名称における屋号として使用し、公衆に誤認させる


 第14条 事業者が不正競争防止法第6条の規定に違反した標識が付された商品を販売し、他人の商品である又は他人と特定の関連性があるという誤認を生じさせたので、当事者が不正競争防止法第6条に規定された状況に該当すると主張する場合、人民法院は、支持しなければならない。


 前項に規定された被疑侵害商品であることを知らずに販売し、当該商品が自らで合法的に取得したものであると証明でき、また提供者を説明でき、事業者が賠償責任を負わないと主張した場合、人民法院は、支持しなければならない。


 

 第15条 他人が混同行為を実施するために故意に貯蔵、運輸、郵送、印刷、隠匿、営業場所などの利便性条件を提供し、当事者が民法典第1169条第1項により認定することを請求した場合、人民法院は、支持しなければならない。


 第16条 事業者が商業宣伝の過程において、商品に関連する真実でない情報を提供し、関連公衆を欺き、誤解させた場合、人民法院は、不正競争防止法第8条第1項に規定された偽りの商業宣伝であると認定しなければならない。


 第17条 事業者に以下の行為のいずれか一つがあり、関連公衆を欺き、誤解させた場合、人民法院は、不正競争防止法第8条第1項に規定された「誤解を生じさせる商業宣伝」であると認定することができる。

 (1)商品に対して一方的な宣伝又は対比を行う

 (2)科学上で定論がない見解、現象などを、定論された事実として商品の宣伝に用いる

 (3)曖昧な用語を使用して商業宣伝を行う

 (4)誤解を十分に生じさせるその他の商業宣伝行為


 人民法院は、日常生活の経験、関連公衆の一般的な注意力、誤解が生じた事実、及び被宣伝対象の実際の状況などの要素に基づいて、誤解を生じさせる商業宣伝行為に対して認定を行わなければならない。


 第18条 当事者は、事業者が不正競争防止法第8条第1項の規定に違反すると主張して損害賠償を請求する場合、その事業者の偽り又は人を誤解させる商業宣伝行為により損失を受けた証拠を提出しなければならない。


 第19条 当事者は、事業者が不正競争防止法第11条に規定された商業誹謗行為を実施したと主張する場合、自分が当該商業誹謗行為の特定の被害対象である証拠を提出しなければならない。


 第20条 事業者が他人により捏造された虚偽情報または誤導的情報を流布し、競争相手の商業名誉、商品信用を損害した場合、人民法院は、不正競争防止法第11条に基づいて、認定を行わなければならない。


 第21条 他の事業者又はユーザの同意を得ずに特定のページへの遷移を直接的に生じさせた場合、人民法院は、不正競争防止法第12条第2項の1に規定された「強制的に特定のページに遷移」と認定しなければならない。


 リンクを挿入しただけで、特定のページへの遷移がユーザにより触発される場合、人民法院は、リンクの挿入の具体的な方式、合理的な理由があるか否か、及びユーザの利益と他の事業者の利益に対する影響などの要素を総合的に考慮して、当該行為が不正競争防止法第12条第2項の1の規定に違反するか否かを認定しなければならない。


 第22条 事業者が、事前に明確な提示をせず、しかもユーザの同意を得ずに、誤導、欺き、脅迫してユーザに修正、閉鎖、アンインストールをさせるなどの方式により、他の事業者が合法的に提供するインターネット製品又はサービスを悪意で妨害、破壊した場合、人民法院は、不正競争防止法第12条第2項の2に基づいて認定を行わなければならない。


 第23条 不正競争防止法第2条、第8条、第11条、第12条に規定された不正競争行為について、権利者が権利侵害により受けた実際の損失、侵害者が権利侵害により得た利益を確定することが困難であり、当事者が不正競争防止法第17条第4項により賠償額を確定することを主張する場合、人民法院は、支持しなければならない。


 第24条 同一の権利侵害者が同一の主体に対して同一の時間及び同一の地域範囲で実施した権利侵害行為について、人民法院が既に著作権、特許権又は登録商標専用権などの侵害を認定し、民事責任を負うことを命じたが、当事者が当該行為が不正競争になる理由で同一の権利侵害者に民事責任を負うことを請求した場合、人民法院は、支持しない。


 第25条 不正競争防止法第6条の規定に基づいて、被告がその企業名称の使用を停止する、又は変更するという当事者の訴訟請求を法により支持すべきである場合、人民法院は、該企業名称の使用停止を命じなければならない。


 第26条 不正競争行為で提起された民事訴訟は、侵害行為発生地又は被告の住所地の人民法院により管轄する。


 当事者が、オンライン購入者が任意に選択できる商品受取地のみを侵害行為発生地とすることを主張する場合、人民法院は、支持しない。


 第27条 訴えられた不正競争行為が中華人民共和国外で発生したが、権利侵害の結果が中華人民共和国内で発生し、当事者が当該権利侵害結果発生地の人民法院により管轄することを主張した場合、人民法院は、支持しなければならない。


 第28条 人民法院が不正競争防止法の改正決が施行後に受理した不正競争民事案件は、当該決定施行前に発生した行為に係る場合、改正前の不正競争防止法を適用するが、当該決定施行前に発生し当該決定施行後まで持続している行為に係る場合、改正後の不正競争防止法を適用する。


 第29条 本解釈は、2022 年 3 月 20 日から施行する。「最高人民法院による不正競争民事案件の審理における法律適用に関する若干問題の解釈》(法釈〔2007〕2 号)は、同時に廃止する。


 本解釈が施行開始後、まだ最終審理をしていない案件については、本解釈を適用するが、施行前に既に最終審理をした案件については、本解釈をもって再度に審理することはしない。


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