<専利審査指南>改正における実験データに関する改正
時間: 2021-03-04 曲在丹 徐麗華 アクセス数:

1.背景

改正された<専利審査指南>(以下、<指南>と称す)は、2021年1月15日より施行されている。<指南>第2部第10章には、実験データの補充に関する審査基準につきまして,より明確的に改善された。

従来、実験データの補充、特に、進歩性を証明するために補充する実験データに関する審査について、明確的な法律規定がないため、審査官は、実際に審査を行う際に、審査基準が一致しなかったり、厳しかったりする場合がある。この問題は、ずっと注目されているので、今回の改正は、非常に有意義である。


2.主な内容

当該部分の改正は、主に、以下の2つの薬品に関する特許出願の実験データ補充の事例が追加された。


[例1]

請求項は、化合物Aの保護を求めようとし、明細書には、化合物Aの製造実施例、降圧作用、降圧活性の測定に係わる実験方法が記載されているが、実験結果データが記載されていない。明細書に、十分に開示されたことを証明するために、出願人は、化合物Aの降圧効果データを補充した。当業者にとって、出願当初の出願書類の記載により、化合物Aの降圧作用は、すでに開示され、補充された実験データに基づく技術効果は、開示された出願書類から導き出せるものである。当該補充された実験データは、進歩性を審査する際に、審査すべきである。


このように、明細書に十分に開示されたことを証明するために、上記のような実験データを提出する場合、審査官は、進歩性を審査する際に、審査すべきである、と明確的に規定された。


なお、補充した実験データは、明細書に追加することはできない。但し、上記事例に示されたように、補充した実験データは、関連規定に合致する場合、出願当初の明細書に記載された実験データと同様な効力を有し、審査官は、従来技術の効果との相違を比較する際に、上記データを考慮すべきである。


[例2]

請求項は、一般式Iで表される化合物の保護を求めようとし、明細書には、一般式I及びその製造方法、一般式Iに属する複数の化合物A、Bなどの製造実施例、一般式Iの抗腫瘍作用、抗腫瘍活性の測定に係る実験方法、及び、腫瘍細胞に対する実施例化合物のIC50値が10-100nMの範囲であることを示す実験結果データが記載された。請求項が進歩性を具備することを証明するために、出願人は、化合物AのIC50値が15nMであり、引用文献1の化合物が87nMであることを示す比較実験データを補充した。当業者にとって、出願当初の出願書類の記載により、化合物A及びその抗腫瘍作用は、すでに開示され、補充された実験データに基づく技術効果は、開示された出願書類から導き出せるものである。この場合、審査官は、補充した実験データも考慮して当該請求項が進歩性を具備しているか否かを審査すべきである。


例2は、出願人が出願の進歩性を証明するために実験データを補充する事例であるが、当該事例には、具体的な化合物構成が挙げられず、引用文献1の化合物と一般式Iとの相違、化合物Aと化合物Bとの相違なども提示されていない。具体的な状況が提示されると、公衆に誤読される可能性があるからだと思っている。当該事例に示されているように、補充した実験データは、化合物AのIC50値が引用文献1の化合物より優れたことを証明できる場合、当該データは、審査すべきである。但し、当該請求項は、引用文献1に対して進歩性を具備しているか否かについて、審査官は、補充した化合物Aに関する実験データに基づき、一般式Iに属するその他の化合物(例えば、化合物B)も同様に比較的に低いIC50値を有すること、引用文献1に基づき、さらにIC50値を低下させるその他の従来技術があるか否か、なども考慮して、全面的に審査しなければならない。


3.注意点

上記事例に基づいて、以下のように、注意点をまとめる。


1)   補充した実験データに基づく技術効果は、当業者にとって、出願当初の出願書類の記載により、把握できるものである。

上記事例において、当初の出願書類には、具体的なデータが記載されていないが、補充した実験データに基づく技術効果は、出願当初の出願書類により把握できるものである。よって、補充した実験データに基づく技術効果は、出願当初の出願書類により把握できるものではない場合、審査官は、この補充した実験データを考慮しない。

2)   補充した実験データの実験方法は、できるだけ、一致する。

審査官に、両者を比較できず、進歩性を証明できない、と指摘されることを避けるために、本出願又は引用文献の実験方法を用いることが好ましい。

3)   適当な比較例を選択する。

例えば、特別な事例を用いて比較することを避ける。また、請求項には、比較的に広い範囲または異なっている並列な技術案が含まれている場合、代表的な複数のデータを提出する。


4.まとめ

上記のように、出願人の利益を保護して、明細書の十分な開示と、進歩性などの問題を克服するために、実験データを補充することができる。

 


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