新規事項追加判断に対するPCT出願書類の役割
時間: 2020-08-07 アクセス数:

本稿は、中国特許法、特許法実施細則及び審査指南におけるPCT出願の国内段階移行時の補正依拠に関する規定に基づいて、国内段階移行時の出願書類及びその分割出願に係わる新規事項追加の問題を判断するために、PCT出願書類の役割を検討する。

 

キーワード:PCT出願、補正依拠、新規事項追加

 

PCT出願は、特許協力条約(PCT)を通じて提出された国際出願であり、PCT国際段階では、権利付与が行われない。換言すると、PCT出願は一種の特許出願ルートであり、その審査や権利付与は、各国へ国内移行してから各国別に行われる。


ほとんどのPCT出願の出願書類は、外国語で公開されたため、中国国内段階に入る時に、PCT出願の中国語訳文を提出する必要がある。そして、中国語訳文は、PCT国際公開書類に対して、完全で原文に忠実しなければならない。


実務上、外国語原文を間違って理解したり不適切に翻訳したりすることが原因で、中国国内段階へ移行する国際出願の中国語訳文に誤りが生じ、PCT国際公開書類の内容と合致しないことがある。これに対して、<特許法実施細則>第113条により、誤訳修正の手続きが規定されている。


<特許法実施細則>第113条:出願人は、提出した明細書、特許請求の範囲または図面中の文字の中国語翻訳文に誤りがあることを発覚した場合、次に規定される期限内で翻訳文の誤訳修正を自ら請求することができる。(1)国家知識産権局が発明特許出願の公開或いは実用新案権の公告に関する準備作業を完了する前(2)国家知識産権局が発行した発明特許出願が実体審査プロセスに入ったという通知書の受領日より3か月以内。また、出願人が翻訳文の誤訳を修正する場合、書面による請求を提出すると同時に、規定の訳文修正料を納付しなければならない。


ただし、実際の審査段階において、審査官は、通常、外国語原文を照合しない。また、国家知識産権局が発行した発明特許出願が実体審査プロセスに入ったという通知書の受領日より3か月以降に、中国語訳文に誤訳があることが発覚される場合、特許法実施細則第113条に規定の誤訳修正の手続きを利用できなくなる。


この場合、出願人は、審査意見通知書を応答するときに、如何に誤訳を修正すればよいのか?その答えは、このような修正は、特許法第33条の規定に適合すると、認められるものである。


<特許法>第33条:出願人は、その特許出願書類について補正することができる。 ただし、発明及び実用新型の特許出願書類の補正は、原明細書及び特許請求の範囲に記載された範囲を越えてはならない。意匠の特許出願書類の補正は、原図面又は写真に示された範囲を越えてはならない。


<特許審査指南>第3部分第2章第3.3節:外国語で公開された国際出願について、その中国語訳文を対象に実体審査を行い、一般的には原文を照合する必要はない。ただし、当初に提出された国際出願書類が法律上の効力を有し、出願書類の補正の依拠とする。


国際出願について、特許法第33条でいう当初に提出された明細書と特許請求の範囲とは、当初に提出された国際出願の明細書、特許請求の範囲及び図面を意味する。


特許法第33条の規定及び審査指南における「当初に提出された明細書と特許請求の範囲」に対する解釈でわかるように、中国国内段階に入った国際出願に対する補正の依拠は、当初に提出された国際出願の明細書、特許請求の範囲及び図面である。


したがって、特許法第33条及び審査指南における関連規定により、特許法実施細則第113条に規定の誤訳修正手続きを利用できなくても、審査意見通知書を応答する時に、PCT国際出願の公開書類に基づいて誤訳を修正することができる。


また、特許出願の審査段階で、発明の単一性を満たさない場合、または、特許請求の範囲には記載していないが当初明細書に記載した範囲内で別途権利化する必要がある場合、出願人は、<特許法実施細則>第54条第1項に規定の期限の満了前、又は第53条に規定の拒絶査定の効力発生前に、分割出願を提出することができる。中国国内段階に入った国際出願も同様である。


分割出願を行う時に、中国国内段階移行時の中国語訳文に誤訳があると発覚され、しかもその国際出願はもうpending状態ではない場合、誤訳修正が認められるのか。


<特許法実施細則>第43条第1項の規定:本細則第42条の規定に基づいてなされた分割出願は、原出願日が留保され、優先権を有する場合は優先権日が維持されるが、原出願に記載された範囲を越えてはならない。


<審査指南>第2部分第6章第3.2節:分割出願の内容は、原出願の記載範囲を越えてはならない。そうでなければ、特許法実施細則第43条第1項又は特許法第33条の規定を満たさない理由で、当該分割出願について、拒絶査定をしなければならない。


<審査指南>第1部分第1章第5.1.1節:分割出願は、原出願(初回の出願)を基に提出しなければならない。


<審査指南>第1部分第1章第5.1.1節の上記規定に基づいて分かるように、特許法実施細則第43条第1項に規定の「原出願」は、初回に提出された出願を意味する。中国国内段階に入った国際出願の分割出願の場合、初回の出願は、中国国内段階に入った国際出願を指す。


従って、特許法実施細則第43条第1項に記載された「分割出願は、原出願に記載された範囲を越えてはならない」という規定は、分割出願は、中国国内段階に入った国際出願に記載された範囲を越えてはならないことを意味する。<特許審査指南>第3部分第2章第3.3節の規定により、中国国内段階に入った国際出願に記載された範囲は、当初に提出された国際出願の明細書、特許請求の範囲及び図面に記載された範囲を指す。よって、分割出願の内容は、原出願に記載された範囲を越えてはならないとは、当初に提出された国際出願の明細書、特許請求の範囲及び図面に記載された範囲を越えてはならないことを意味する。


特許法実施細則第43条第1項、特許法第33条、審査指南の関連規定に基づいて分かるように、中国国内段階に入った国際出願の分割出願に対して誤訳修正を行う場合、当初に提出された国際出願の明細書、特許請求の範囲及び図面に記載された範囲を越えていないと、このような修正は認められるものである。


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