創新医療機器特別審査手順を背景にした特許出願戦略
時間: 2020-04-22 李 小爽  殷 爽 アクセス数:

創新医療機器特別審査制度の紹介

過日、医療機器の研究開発およびイノベーションを促進し、医療機器の新技術の普及および応用を推し進め、医療機器製品の高品質化を促進するために、国家医薬品監督管理局が「創新医療機器特別審査手順」を発表し、2018年12月1日より実施することになった。


当該手順において、特許出願人が創新医療機器特別審査手順を申し込む場合、以下の場合に該当すべきであると規定した。


特許出願人が、その主導した技術イノベーション活動により、中国において製品の核心的な技術発明の特許権を法に基づいて保有していたり、法に基づいて譲受により中国特許発明の特許権又はその使用権を獲得しているとともに、創新医療機器特別審査の申込日が特許登録公告日から5年を経過していない場合、もしくは、核心的な技術の特許出願が国務院特許行政部門により公開され、また、国家知識産権局特許調査問い合わせセンターから、製品の核心的な技術発明が新規性及び進歩性を有する旨の調査報告書が発行された。

 

特別審査手順における特許関連規定についての簡単な分析

出願人が創新医療機器特別審査の申し込みを希望する場合、下記2つの場合のいずれかに該当すべきである。


1.出願人が、製品の核心的な技術の特許権又はその使用権を既に保有している、又は譲受により獲得しており、且つ特別審査申込日が特許登録公告日から5年を経過していない場合、


2.核心的な技術の特許出願が公開されており、且つ特許調査問い合わせセンターから製品の核心的な技術発明が新規性・進歩性を有する旨の調査報告書が発行さされた場合。

創新医療機器の審査要件の一つとして、出願人が中国において法に基づいて製品の核心的な技術の特許権を保有したという要件がある。一方で、核心的な技術の特許出願が国務院特許行政部門によって公開されたものの、登録査定が発行されていない場合もあるため、当該手順に、製品の核心的な技術に対する事前評価がもう一つの審査要件として規定された。出願人は、国家知識産権局の特許調査問い合わせセンターへ調査申込みを提出することができる。


したがって、創新医療機器特別審査を申し込む場合、必ずしも登録となった製品の核心的な技術の特許権を保有又は獲得している必要があるとは限らない。製品の核心的な技術の特許出願が公開されており、かつ特許調査問い合わせセンターから核心的な技術の発明が新規性および進歩性を有する旨の調査報告書が発行されていれば、創新医療機器特別審査を申し込むことができる。

 

特許出願関連戦略

以下、筆者自身のプラクティスを踏まえ、創新医療機器特別審査申込みのためのいくつかの特許出願関連戦略を述べる。なお、業務範囲上の制限により、以下の戦略はPCT出願に基づいて中国国内へ移行する特許出願のみを対象とする。


出願人は、その核心的な技術製品について創新医療機器特別審査手順の申込みを希望する場合、その製品の核心的な技術に関する少なくとも1件の特許/特許出願が必要となる。したがって、方法(1)として、特許出願の早期公開を図るとともに、特許出願が新規性および進歩性を有する旨の調査報告書を獲得すること、又は、方法(2)として、特許出願の早期権利化を目指すことは、特別審査手順を申し込むうえで非常に有利である。


特許出願の実体審査手順から登録までの時間が通常出願人がコントロールできるものではないため、特別審査手順の早期申し込みを望む場合には、方法(1)が考えられる。ここで、方法(1)について、特別審査要件をなるべく早く満たすために、以下のような戦略を提案する。


a)中国特許局に中国特許出願を提出するとともに、当該特許出願の早期公開を申し込むこと、

b)当該中国特許出願の出願番号が交付された後、特許調査問い合わせセンターに新規性調査を申し込むこと、

c)CNIPAによる特許出願公開通知書および特許調査問い合わせセンターによる調査報告書(積極的な意見)を受領した後、創新医療機器特別審査手順を申し込むこと。


筆者の経験によれば、CNIPAは特許出願をその出願日から約4~6ヶ月以内に公開し、特許調査問い合わせセンターは調査請求日から10~20日以内に調査報告書の作成を完了するのが一般的である。このように、この戦略は、創新医療機器特別審査手順における特許出願に対する規定を満たすには、通常、約4~6ヶ月が必要である。権利化を目指す場合に比べ、この戦略によると特別審査手順の準備時間を著しく短縮することが可能である。

 

上記戦略は、特許調査問い合わせセンターによる調査報告書に、中国特許出願の新規性や進歩性について積極的な意見が示された場合のものである。一方で、調査報告書に否定的な意見が示される、即ち中国特許出願が新規性や進歩性を有しないと判断した場合もある。このような場合には、上記戦略が実行不可能となり、以下のような補足戦略が考えられる。


d)否定的な意見が示された調査報告書を受領した後、中国特許局へ当該中国特許出願の実体審査を請求するとともに、否定的な意見に対してクレーム補正を試みること、

e)当該中国特許出願の実体審査手順に入った後、優先審査を申し込むこと。

当該中国特許出願が優先審査の関連規定を満たし、優先審査手続きに合格した場合、当該中国特許出願に対して、審査合格日から約45日以内に1回目の拒絶理由通知書が発行され、審査合格日から約1年以内に登録査定又は拒絶査定が決定される。

 

本稿は、筆者の特許代理プラクティスにおける認識を踏まえながら、創新医療機器特別審査手順の背景下で特許出願をどのように行うかについて紹介した。

返回顶部图标